第八話 どうしてこうなった
目的地であるグレイ山脈は、街から海沿いに、北に真っ直ぐ一週間くらい進むとある。活火山であり、年中気温が高い。それだけでなく、竜の住処であり、実力がなければ確実に死ぬだろう。竜の涙が一番取れやすい場所だ。
「さて、じゅあ行こうか」
カノンは頷いた。
「よし、行くか」
そこには、すっかり旅支度を整えたケインが居た。
「なぜいる!」
「愚問だな」
何が愚問なんだか。
「二人っきりの旅などさせるわけないだろう」
完全な嫉妬だったよ。やっぱり。はあ、まあ、いいか。戦力が増えるのはいいことだし。
「わかったよ。ついてくればいい」
「おう、で、どこに何をし行くんだ?」
ケインにルイさんのメモを見せる。
「な、なんやてー!!!」
面白いようにのけぞっているケイン。驚きすぎだろ。
「で、どこから行くんだ」
「お前のその、適応能力の高さがうらやましいよ。とりあえず、竜の涙をとりに行くよ」
「グレイ山脈だな。じゃあ行こうぜ!!」
お前が仕切るのかよ!! 僕のツッコミを華麗に無視して、ケインは進んでいく。はあ、やっぱりこいつを入れたの間違いか? まあ、いいか。とりあえず行こう。僕達は、グレイ山脈へと出発した。
「それにしても、俺たちがこうやって冒険にでるの久しぶりだよな」
「そういえばそうだな」
今は、王都の建設の防衛とかそういったクエストとかしかやってなかったし、遠くに移動するときはほとんど門とか、アイテム使って移動してたからな。こうやって歩いてどこかに行くのは久しぶりかもしれない。
「…………」
っと、カノンをほっぽって話し勝手に進めちゃったてた、とりあえずケインを自己紹介させよう。
「とりあえず、ケイン自己紹介したらどうだ?」
「今更な気がするな。まあいいか、俺はケインってんだ。アルトの相棒だ」
「…………カノン」
カノンはただ一言だけ、言ってあとは、フードをかぶり黙々と歩き始めた。
「…………俺の好みじゃねえな」
おい、ケインそれは失礼だろ。さっきまで散々騒いでたじゃないか。
「だって――」
ケインの言葉が途切れる。理由はただひとつ。杖を突きつけられているから。なんか、既に魔法を放つ準備できてるみたいだし。
「…………さて、行こうか」
何か物凄いダンディにケインが言って、さっさと先へ進みだした。
「…………」
カノンが杖をおろした。その顔には、呆れが浮かんでいる。
「まったく、ケインの奴は……」
さて、こんな無駄なしゃべりをしている暇はない。目的地は遠いからな急がないと。
しばらく、歩いていると、森に入った。この辺りには来たことがないので、マッピングしながら、慎重に進んでいく。下手をして、モンスターの巣なんかに突っ込んだ日にはどうなることやら。
「ん?」
その時、向こうの茂みで何かが動いた。
「アルト!」
ケインも気がついたようだ。
「わかってる。カノン!」
「…………(コクリ)」
身構える。そして、飛び出して来たのは!
「…………狼?」
狼の子供であった。
「…………可愛い」
「え?」
カノンの発言に耳を疑う。カノンを見るとなんか全力で顔を背けられた。
「どうするアルト?」
「とりあえず倒す?」
「お前が疑問系でどうするんだよ」
といわれてもな。どうも、敵意はなさそうだし。このまま放っておいても大丈夫みたいだし。
「…………飼う」
そうそう、飼うのもいいよな。って!?
「ええ!?」
「…………飼う。ダメ?」
ちょ! そこで、悲しそうな顔で聞かないで! 許可しかだせないから! って、別に僕がこんなに慌てなくてもいいなじゃいか。そうだ、カノンが自分で全部責任持つんだ。だったらいいんじゃん。何を僕は慌ててたんだ?
「……わかったいいよ」
カノンが嬉しそうに狼の子供を抱き寄せた。狼は暴れもしないで、カノンの腕の中に収まった。おとなしいものである。こうしてみると確かに可愛いのかもしれない。
というか超展開すぎるな。どうしてだろうか? まあ、考えても仕方ないな。今は先を急ごう。
「よし、問題がないなら先を急ごう」
「…………(コク)」
「おう」
こうして、小さな同行者が加わった。