第五話 よけいなことはやめよう
洞窟は奥に進むごとに広くなり天井も高くなっていく。それに周りの壁が光明るくなっている。
「どういう仕組みなんですかね」
「この辺りの地層は来光石と呼ばれる鉱石が多く含まれているからな」
つまりその鉱石が光を発しているってわけか。
「半分正解だ。確かに来光石が光を放っているのは確かだが来光石にそんな効果はない」
「それじゃ、なんで光ってるんですか?」
「見た方が早いな」
ルイさんが採掘アイテムピッケルを装備して壁を掘る。そして光を放っている透明な石を持ってきた。
「これが来光石だ」
「綺麗ですね」
既存の鉱石に例えるなら水晶かな。光を放っていることを除けば。
「覗いてみろ驚くぞ」
「覗くって意味ないでしょ」
「いいから覗いてみろ」
「は、はあ」
疑問を感じながらも言われた通り覗いてみた。
「え!?」
石の中には空が広がっていた。
「な、なんですかこれは!?」
「どうだ、すごいだろう」
確かにすごい。どういった仕掛けなのだろうか。明らかに外が見える。
「この来光石はな地上にもあるのだよ。そして来光石同士は繋がっているんだ。だから、外の様子が見れるん。これは盗撮にも使えるぞ」
そんな犯罪情報は要らなかったがかなり面白いものだ。外と繋がっていて光を浴びているからこちらにも光が来ている。なんかテレビのような感じがする鉱石だ。
「盗撮云々はどうでもいいですけどこれは確かにすごいですね」
「そうだろうそうだろう。これだけでもここに来た価値はある。だが、目的はこの先だ」
さらに先へと進む。開けた場所に出る。
「さてと、ここだここ」
来光石ではなくこの場所には自然の光が入ってきていた。ゲーム内の光が自然ってのはおかしいような気がするけど。
「さてと、掘るか。さあ、アルト君、君の手伝いたまえ」
ルイさんがピッケルを渡してきた。
「えっと、僕採掘初めてなんですけど」
「簡単だピッケルでそこら辺の亀裂を叩くだけだ。そしてらウィンドウが出てくるからそこにある鉱物をアイテム欄にいれるだけだ。とりあえずやってみろ説明するよりやれだ」
「まあ、やってみます」
とりあえず手近なところにあった亀裂を叩く。ウィンドウが表示される。そこには鉱物の名前が書いてあった。それを共通アイテム欄に入れる。なるほど確かに簡単だなこれ。
「よしよし取れてるみたいだな。ついでにもっと掘っておくか」
ガン
ピッケルを振り下ろした音。そしてなにやらまずったというルイさんの声が聞こえた。
「あ」
「どうかしましたか?」
何かあったのは確かだがとりあえず聞いてみる。
「い、いや、何もないよ。うん、ルイ何も見てないししてない」
「いやいや!! あんた明らかに何かやらかしただろうが!!!」
口調がロリになってやがるし。
「あ~、いや、ほら」
ルイさんの目は明後日の方向を向いている。明らかに何かやらかしている。
「正直に言ったら怒りませんから」
「本当か? 本当に怒らないか?」
頷く。
「えっと、うん、凶悪なモンスターの巣に突っ込んだテヘ☆」
「テヘじゃねええ!!! アンタなにしてくれとんじゃ!!!」
「ひゃう!? 怒らないっていったではないか!!!」
「それとこれとは話が別です!!!」
そんな大変な状況を引き起こしたのんだから怒らない方がおかしい。
「だって、だって、グス」
泣き真似をしながら言うルイさん。本性を知らなければ効果抜群だっただろうけど生憎と僕はいやというほどこの短期間でこの人の本性を見たのだから効果ない。
「泣き真似しても意味ないですよ」
「……チッ」
舌打ちするなよ。
「ああ、そうだよ。やりすぎたよまったくほら、これでいいんだろ」
いや、逆ギレされても。
「はあ、わかりましたよ。少し言いすぎました」
とか言っているうちになにやら巨大なヒルのような生物が出てきた。こいつがルイさんが呼び込んだ凶悪なモンスターですか。確かに強そうというか剣で攻撃が通るとは思えない皮膚してるんですけど。カイトさんたちならこれたぶん気にせずに倒すんだろうな。
「とりあえずルイさんコイツだけなら倒しましょう」
「コイツだけならな……」
一体目の後ろから二匹追加された。
「…………鉱石はとりましたよね」
「ああ、必要な分はとった」
「じゃあ、逃げますか」
「だな」
僕達は後ろを振り返り全速力で駆け出した。後ろからさっきのモンスターが追ってくる音が聞こえる。
「てか、来た道で帰れるんですか!」
「無理だ。だから、こっちだ!」
急にルイさんが道を変える。慌てて僕もついて行く。
「だいぶ引き離したな」
「そうみたいですけど、すぐに来ると思いますよ」
「よし、さっさとダンジョンから逃げてしまおう」
ルイさんが巻物を取り出す。
「なんですそれ?」
「エディットアイテム」
エディットアイテムとは自作アイテムのことである。効果も品質もプレイヤー次第というものだ。
「効果は?」
「ダンジョン脱出、名前はリレ○トの巻物」
「それはダメな気がします」
「いいではないか旧時代のゲームのアイテムだ。もう、誰も覚えておらんだろう」
読者が覚えていますからだめです。
「だが効果は抜群だ」
でしょうねそりゃ。
「では、行くぞ。てい!!」
「って思いっきり投げるんかい!!」
その瞬間光に包まれどこかへダンジョンの外へと転移した。
「ふう、どうやらうまくいったようだな。適当に作ってたからどうなるかと思った」
「そんな危ないもの使ってたんかい!!」
成功したからよかったものの失敗したらどうするつもりだったんだよ。
「そんな時の為の君だろう」
「ですよね~」
どうせそんなことだろうと思いましたよ。でも、あれを倒すのは骨が折れると思います。
「まあ、いいです。とにかく戻りましょう」
「そうだな。君の武器を作る必要もあるからな」
「そうですね」
というかそれが本題ですよね。
「では、戻るとしよう」
そんなわけで色々あったが、なんとか無事に僕達はシュレイディークの街に帰ってこれたのであった。