第二十話 回想
はい、連続投稿です。
「大丈夫かみんな」
みんなを助け起こしながら俺は聞いた。痛みは残ってるみたいだが無事みたいだな。
「カイトさん!!」
「ああ、リーナ、遅くなったな」
「遅いですよ」
頬を膨らませながらも微笑んでいるリーナ。
「でも、無事でないよりです」
「ああ、ティアもずいぶんがんばったみたいだな」
座り込んでいるティアに言う。魔力もだいぶ使ったみたいだし。
「そうよ~、出来ればもう今なのは勘弁してほしいわ~」
「あとで酒おごってやるよ」
「高いのよろしく~」
「わかった」
あとで金を確認しておこう。下手したら限界まで飲むからな。
「無事で何よりですカイトさん」
「ああ、コペイもな。さっき吹っ飛ばされてたみたいだけど大丈夫か?」
「大丈夫です。これでも僕丈夫ですから」
「そうか」
確かにウチのギルドで一番丈夫だな。
「約束は守ったぞ」
「ああ、サンキュートミー」
「ああ、釣りだー!!」
こんな雪の中でどうやるかは知らないがまあ、好きにさせよう。
「カイト殿また会えて嬉しく思います」
「俺もだサクヤ」
相変わらずサクヤだ。
「ヒヒ、お帰りカイト君ワタシも嬉しいよ~」
「人形師、お前俺たちがついて来てたの知ってただろ」
「ヒヒ、何のことだい? ワタシが気づいていたわけないだろう」
ニターと笑う顔が全部物語っているんだよ。
「カイト。お帰り!!」
「ただいまユウ」
ユウの頭をなでる。ユウは気持ちよさそうにする。
「それでなんでアリアがここにいるのよ。それに何をしてたのよ」
「今話す」
俺はことの顛末を語った。
****
「はあ、はあ、はあ、お前で最後だぞレギル」
「はっは~、満身創痍だね~」
一人一人が弱いとはいえ数が圧倒的に違った。もう体に力が入らなくなってきた。体が重い。
「カイト君、知っているかい?」
「何をだ!!」
「《黒絶獄》がどんな場所かさ」
「さあな、犯罪者じゃないからな」
「無だよ」
「なに?」
レギルは何を言った?
「だから、無さ。何もないんだよ。《黒絶獄》にはね」
「なん……だと」
ただの牢とかじゃないのか? それに無って何だ。そもそも、レギルが嘘をついているという可能性もある。
「それに俺っちはそこには行った事はない」
「なんだと!!」
こいつは何回も《黒絶獄》に行っているはずだ。なのに行ってないってのはどういうことだ。
「っと、これ以上は言えないな。下手をすればこのグローリアオンラインが終わりかねない」
「なんだと!!」
「まあ、ご褒美に教えるけど。プログラムってのは意志もっているんだよ。そして、そのプログラムは人間とは見分けがつかない。そしてその目的は人間をある一定の場所まで押し上げること。そしてもうひとつは神を成長させること…………」
ザシュッ!!
「ガッ!!」
大鎌が俺の腹を貫いていた。
『You are death』
目の前に文字が現れ死んだことを伝える。
死んだ、そう、死んだ。紛れもなく。ああ、クソ、覚悟してたってのに、やっぱ死にたくないわ。そして意識がブラックアウトする寸前声が響いた。
「精霊王の雫!!」
ブラックアウトしかけていた視界が急速に元に戻る。精霊王の雫、死んでから一定時間以内のプレイヤーを復活させるアイテム。そのおかげか体の痛みが消えた。そして目の前にいたのは――。
「アリア!?」
――十二騎士の一人旋風のアリアだった。
「ふう、間に合ったみたいね。大丈夫カイト君?」
「あ、ああ、大丈夫だ、それよりなんでこんなところに?」
「説明はあと、まずはこの男を何とかしないと」
「あ、ああ」
レギルはニタリと笑っていた。アリアの登場も予想通りと言うように。
「やあ、君も久しぶりだね~。旋風ちゃん。紅蓮は元気~」
「ええ、あなたを殺そうと必死よ」
「そっか~いや~面白いね~」
「でも、あなたはここで終わりよ」
アリアの体がまるで掻き消えたかのように凄まじいスピードで移動した。相変わらずのスピードいや、磨きがかかっている。そしてレギルの後ろに。レギルが咄嗟に振り返る。その瞬間を狙って俺もレギルに突っ込む。
「「これで終わりだ(よ)!!」」
レギルを二本の剣が貫いた。そんな状況でもレギルは笑っていた。
「ふふ、俺っちはいつもこの世界にいる。ああ、そうさ。いつかはグローリアも終わる。神の成長が終わればな。ああ、その前に終わる可能性もあるか…………」
レギルが光の粒子となって消えさった。
「ふう~」
俺はへたり込む。気を抜いたらどっと疲れが押し寄せてきた。
「大丈夫カイト君?」
心配そうにアリアが俺の顔を覗き込んでくる。
「大丈夫だ」
「そっか、よかった。それにしても5万人を一人で倒すなんて本当に無茶をするわね」
「言い返す言葉がない」
本当に返す言葉がない。アリアがいなかったら死んでいたし。
「まあ、いいわ。どうせ言っても仕方ないし。でも、無茶は控えることわかった?」
「わかったよ」
「うん、よろしい」
「それでなんでアリアはこんなところにいるんだ?」
アリアがここにいるのはありえないはずなんだが。
「ん~、考えればわかるはずだけど?」
考えればって……あ!
「そうか」
「わかった? 私はレギルたちが掘った穴を通ってここに来たの」
レギルたちが来れたんだから他の人間が通れない道理はない。
「蛇喰らう馬に動きがあったから行ってみたら山脈に穴は開いてるわ、調査士に中に入って奥に進んでみると街は燃えてるし、挙句の果てにはカイト君が死に掛けてたからもう、驚いたわよ」
なるほどということは。
「他にもまだ誰か来てるのか?」
「そうね、ユランが来てる筈よ。今はそれだけ」
「そうか」
たぶんしばらくしたらあの紅蓮とか来るんだろうな。
「そうだカイト君こんなときになんだけどはい、これ」
アリアからのアイテムが送られてきた。それは黒の紋章。
「何だ?」
「わかってるでしょ」
そう、俺にはわかっていたこれがなんなのかはっきりと。だが、認めたくはなかった。
「十二騎士の紋章」
ほらやっぱり。
「返す」
「無理」
「なんで」
「欠番の闇の騎士は必要だから。噂では十二人揃うことに意味があるみたいだし。それに――」
「それに?」
「――カイト君がなってくれると……私も嬉しいから」
頬を染めて上目遣いで言った。破壊力が凄まじい。思わず頷きかけた。
「…………い、嫌だ」
「む~」
怒った顔もいいな――ってそういう問題じゃない。
「何を言っても俺はならないよ」
「はあ、仕方ないか。じゃあ、でも、とりあえずそれは預けておくよ。気が変わったらいつでもいってね」
そうは言っても気が変わるのはいつになるのやらだけどな。
「で、みんなは?」
「そうだった、行かないとな」
アリアに事情を説明する。
「なるほどね。わかったわ行きましょう」
「お~い、アリア~!」
「ユラン遅いわよ!」
「すまないな、トンネルの補強班の指揮をしていた。カイトも無事のようだな」
「ああ、久しぶりだなユラン」
「ああ、久しぶりだ」
ユランも変わりないようだ。相変わらずのサムライの格好。ユランにも事情を話す。
「なるほどな。では、急ごうか」
「ユランには頼みたいことがあるのよ」
「なんだ?」
「闇のギルドの動向とプログラムについて」
「何かあるのか?」
レギルの言葉を伝える。
「なるほど、また何か意味深だな」
「でしょう、だから、調べてみてほしいの」
「ふむ、難しいだろうがやってみよう」
「頼んだ」
「任された」
ユランが走っていく。
「じゃあ、私達も行きましょう」
「ああ」
そして俺たちはラスヴェートに乗りユイたちを追った。
****
「――というわけだ」
「そんなことが」
「それで、少し俺たちも情報を集めてみてから来たから遅くなったんだ」
まあ、収穫はなかったがな。あとはユランに期待するしかない。
「しかし、本当に無茶よね」
「無茶です」
「無茶ね~」
「無茶ですよ」
「釣りだ」
「無茶でございます」
「無茶だね~ヒッヒッヒ」
「無茶~♪」
「グフッ」
上からユイ、リーナ、ティア、コペイ、トミー、サクヤ、人形師、ユウが無茶と俺に言った。精神的ダメージがもう限界だ。死ななかったが死にそうだ。無茶はやめよと思った。まあ、思っただけでは無理だろうし治らないと思う。
はい、グローリアオンラインですがそろそろクライマックスです。
ですが、先に言います。バトルないです。
先に謝ります。バトル期待していた方すみません。