第十五話 相棒
「さてと、みんなもそろそろ竜を従えた頃だろ戻るか」
「そうだな」
ラスヴェートに乗る。これ鞍とかいるな。あとでシュリに何とかしてもらおう。
「さて、私は先に行ってるからゆっくり来い。落ちるなよ」
「わかってるよ」
シュリがフェアに乗り空へと舞い上がった。
「さて、俺たちも行くか」
ラスヴェートの首のあたりに乗る。
「よし、行くぞ」
短い咆哮のあとラスヴェートと供に俺は空へと舞い上がった。
「いい気分だ」
さっきのように無理矢理むちゃくちゃに飛んだのではなくゆっくりと飛ぶというのは気持ちのいいことだった。
「カイトー!!」
「ユイー!!」
飛んでいるとユイが光り輝く竜に乗ってやってきた。さっきユイが戦っていた氷竜だ。光が反射して光を放っているように見えるのだろう。
「うわ! 何か大きい。あんたまた無茶やったでしょ」
ユイがラスヴェートを見て驚く。ユイはわからないにしても俺が無茶をやったことはわかるらしい。
「よくわかるな」
「当たり前よ。これでもアンタとは四年も付き合ってんのよ」
「そうだな」
「アンタたぶんこれから会う連中に同じこと言われるわよ」
それは、嫌だな。
「自業自得よ。どうせ、シュリに禁止された場所にでも入ってそこの竜でも捕まえてきたんでしょ。その背中の魔剣も無理した――」
「…………」
「んだったりし、て……」
「…………」
「…………」
沈黙が場を支配する。
「えっと、カイト私はあくまで冗談のつもりで言ったんだけどね」
「…………」
ユイの顔がまともに見れない。
「はあ~。やっぱり本当か。アンタいつか死ぬんじゃない?」
「言わないでくれ」
「まあ、いいけど、でなんて名前?」
「ラスヴェート」
「ふ~ん」
「そっちは?」
「リュートよ」
「いい名前だ」
「そっちもね」
しばらく飛んでいると。
「あ、リーナだ! お~い!」
前方を飛ぶ水竜を見つけた。その背にはリーナが乗っていた。
「あ、ユイちゃん。うわ~、綺麗な竜ですね」
「ええ、リュートって言うのよ。そっちはかわいいわね」
「はい、フォーンスって言うんですよ。カイト君のは大きくて強そうですね」
「ああ、ラスヴェートって言うんだ」
「でも、あまり無茶するのはいいとは言えませんよ」
ユイの言うとおり言われた。さすがに心にグサッってくるな。
「さて、みんなどんな竜を相棒にしてるんでしょうね」
「まあ、見てからのお楽しみだ」
実は知っているけど実際見るまではわからない。
その時、翠玉色の風が俺たちの横を通り抜けた。凄まじい風が巻き起こる。
「な、何!?」
「すごい風ですね」
「上だ!!」
上にはラスヴェートに及ばないまでもかなり大きな竜が飛んでいた。その背には――。
「やっほ~!」
「「「ティア!!」」」
――ティアが乗っていた。高度を下げてティアが俺たちの横に並ぶ。翠玉色に輝く風を纏った竜だった。
「どう? 私の相棒ラファルのスピードは?」
「すごい速いな。見えなかったぞ」
「そうでしょそうでしょ」
ティアは俺の言葉に満足そうに頷く。シュリに聞いた話では風竜は竜種の中で最高のスピードを持つ竜だ。
「でも、カイトのには及ばないわね。まったく無茶したわね」
俺の心に70のダメージ。もう、そろそろ俺のライフはゼロだ。
「悪かったな」
「まあ、そのほうがカイトらしいのだけどそれで、そのこなんて名前?」
「ラスヴェート」
「そう、ユイは?」
「リュートよ」
「へ~」
ティアがリュートをまじまじと見る。
「綺麗ね。リーナは?」
「水竜のフォーンスです。可愛いでしょう?」
「ええ、そうね」
ティアも加えて飛んでいると赤い竜が飛んできた。コペイだ。
「あ~カイトさん、また無茶しましたね」
グサッ!!
俺のライフに77のダメージ。クソ、コペイめ、何気にきつい攻撃を放ってきやがる。
「皆さんすごい竜ですね。僕のは火竜で名前はエタンセルです」
見ると赤い鱗のワイバーン種の竜だった。昔はやったモンスター狩るゲームの中にいた感じの奴だ。
「魔竜のラスヴェートだ」
「氷竜のリュートよ」
「水竜のフォーンスです」
「風竜のラファルよ」
竜紹介も程ほどにさらに飛ぶ。
「トミーは先に戻ってるみたいだな」
アイツ釣りしてたし。
「魚飛竜のフィンだそうです」
トミーに会ったらしいコペイが言った。
「そうか。それにしてもサクヤどこ行った?」
さっきからというか結構前からサクヤの姿が見えない。
「こっちだ~!!」
サクヤの声がした。そっちの方を見ると地面に竜と共に立っていた。こちらも降りてみる。
「何やってるんだ?」
「いや、それがこの子を相棒にしたはいいのですが眠ってしまって」
サクヤの竜、いや竜と言うよりは龍か。黒い鱗の龍だ。属性は土。マイペースな龍のようだ。
「とりあえず起こすか」
その後サクヤの龍を起こしてから飛竜の谷の入り口へと戻った。