第十三話 飛竜
城下の宿で過ごすこと一週間。ようやく飛竜を持つことの許可が出たようだ。
「行くか」
城へと向かうため宿を出る。宿の前にシュリがいた。
「こんなに待たせて済まなかったな」
そう言うシュリ。
「いや、いい。許可が出たんだからな」
「そう言ってくれると助かる。では行こうか」
シュリを先頭に城へ。
「やあ、わざわざ来てもらってすまないな」
城の一室でガンツが言った。
「君たちには一人一人飛竜が与えられる」
「本当にいいのか?」
本当に一人一人にあたえられるのか。
「ああ、うちの王様はお人好しだからな。で、だ、君たちにはこれから竜の谷に言ってもらう」
「竜の谷」
「ああ、そこは飛竜たちの住処だそこで君たちに飛竜を相棒を見つけてきてもらう」
「わかった」
「じゃあ、シュリ案内してやってくれ」
「はい」
再び城の外へ。城下を離れ西へ向かう。
「竜の谷にはどこくらいかかるんだ?」
「歩きで六時間だ。まあ、今は馬だから3時間って所だろう」
「そうか。ユウは大丈夫か?」
「大丈夫~」
ユウを見ると人形師と一緒に棺に乗っていた。棺は浮いている、
「…………」
しかもユウは人形師の膝の上、とても心配だ。
「ヒヒッ、そんなに心配しなくてもいいよ~」
「それをみて心配するなと?」
「確かに、これくらいの子は好みだけど、生きてる人間には萌えなくてね~。死体なら萌えられるのにヒッヒッヒ~」
変態だ。完璧な変態だ。
「それにしても竜ね~。ねえ、シュリアンタのはどんなのよ」
ユイがシュリに聞く。
「ああ、それなら最初にあったときにカイトが剣を突き刺したせいでいま治療中だ」
「うぐ」
あからさまに言われたらもうなんと言っていいやら。
「冗談だカイト。私たちの真上を飛んでいるか先に竜の谷についているはずだ」
「ふ~ん」
おそらく先についているだろうな。
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竜の谷
「ここが竜の谷か」
まさしく竜の谷というにふさわしい場所だった。見渡せば嫌でも飛竜が視界に入る。それに竜の生態にあわせた地形が各所に作られていた。山、洞窟、川、湖、森と様々だ。
「そうだ。お前たちの相棒になる竜たちだ」
「さて、みんなこっからは別行動だ。シュリはユウを見ていてくれないか」
「わかった。おいでユウちゃん」
「ん」
ユウがトコトコとシュリの方に行った。そして全員が思い思いの場所へと向かった。
「さてと俺も行くかな」
「待ってくれカイト」
行こうとしたらシュリが声をかけてきた。
「なんだ?」
「竜の谷の置くには洞窟があるがそこには入らないでくれ。噂では魔竜が住み着いているというからな。他の奴らは大丈夫だと思うがお前なら入りそうだからな」
「わかった。じゃあ、行ってくるよ」
俺は走り出した。
「さて、その洞窟とやらに行くかな」
悪いなシュリ。行くなといわれたら行きたくなってしまう。それに仲間にするなら強い竜の方がいいからな。
洞窟へと急ぐ。その途中、湖の横を通っているとトミーがいた。
「行くぞ飛魚竜。飛行力の貯蔵は十分か!」
トミーが叫び竿を振るう。
「ここまで来て釣りかよ」
大丈夫なのだろうか。しばらく見ているとトミーが動いた。
「フィッシーング!!!」
ザバァー!!
竿が引かれると供に超巨大な魚、いや、竜が釣り上げられた。体は魚、いや、ナマズやうなぎのような感じだが足がありヒレの部分には折りたためる翼がついていた。色は光の加減で青や緑に輝いていた。ともかくトミーは飛竜を手に入れた。
「俺も急がないとな」
飛魚竜になにやらいろいろしているトミーから視線をはずし走りだす。
「うわああああああああ!!!」
「ん?」
走っていると悲鳴が聞こえた。
「コペイの悲鳴だな」
聞こえたほうに行ってみるとワイバーンに追われるコペイの姿が見えた。
「まあ、大丈夫だろう」
群れだが何とかなると俺は信じている。
「がんばれよ」
そう言ってコペイの元から離れるように竜の谷の奥の洞窟に向かって走り出す。
ふと風が吹いた。
「ん? この風は」
うえを 見ると緑色の小さな竜と飛ぶティア。勘違いがないように言っておくと魔法で竜の横を飛んでいた。
「遊んでるなティアの奴」
すると一際大きな風竜がティアの方へ向かってきた。ティアの周りにいた小さな風竜は離れていった。
「主だな」
ティアの狙いはあの主のようだ。
「まあ、大丈夫そうだな」
気にせず走り続け森の中に入る。洞窟はまだまだ遠い。森を走っていると泉に行き着いた。そこのほとりには水竜と一緒に座っているリーナがいた。
「リーナ!!」
「ああ、カイトさん。見てください。水竜ですよ」
そう言って水竜をさす。青い鱗に覆われていて手はなく大きな翼がある。どことなく優しそうな竜だ。
「いいと思うよ」
「はい。結構可愛いんですよ~」
「そ、そうか」
かわいいか?
「じゃあ、俺は先に行くよ」
「はい、がんばってください」
「ああ」
再び洞窟を目指す。
森を抜けると雪が降っていた。
「本当になんでもありだな竜の谷」
「カイトー!! どいてええええ!!!」
「は!?――うぐあ!!」
ユイが落ちてきた。それを受け止めきれず俺は地面に倒れる。きちんとユイは助けましたよ。
「な、何があったんだよ」
「いや、ちょっとってきたー!!」
ドンッ!!
着地音が響く。どうやら竜と戦闘でもしていたらしい。そっちを見ると竜がいなかった…………いや、いた氷の竜が。どうやら体が氷のように透き通っているのか透明のようだ。空中に浮いているような金色の双眼がそこにいることを示している。
「…………まあ、がんばれ」
「えー!! 少しは手伝ってよ」
「一人で何とかしろ」
というか氷って大丈夫なのかこの飛竜は?
「むう、わかったわよ!!」
ユイが氷竜に向かっていったのを見て俺も走り出す。
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そしてようやく洞窟に着いた。
そこはまるで巨大な竜がその口をあけて侵入者を待ち構えているかのようだった。