第四話 初戦闘
アリアとパーティーを組んだ後、俺達はラノックスを探していた。というより追っていた。ラノックスが通った後は戦車が通ったみたいになるので探すのは簡単だ。
そんなこんなしているうちにラノックスに追い付いた。
「いい、とにかく死なないようにね」
アリアが言った。
「わかってるよ」
それからゆっくりとラノックスに近づいて行った。
アリアが腰の鞘からエストックを抜く。俺も剣を抜く。
「行くわよ」
アリアの言葉に俺は唾を飲み込んだ。初戦闘だ。かなり緊張する。アリアはそれを察したのか優しい微笑でこう言った。
「落ち着いて深呼吸して」
アリアに言われた通り深呼吸してみた。深呼吸するたびに段々落ち着いてきた。
「ありがとう」
「うん、どういたしまして。じゃあ、行くわよ」
アリアの合図で一斉に飛びかかった。
「弱点は頭よ、頭を狙って」
アリアの言葉に頷いて頭に剣を振り下ろす。
しかし、ラノックスにダメージを与えた感じはなく剣は弾かれた。
「クソ」
ラノックスが突進してきたので避ける。
アリアの方を見ると鋭い突きを物凄い速さで繰り出している。それも全く同じ位置にだ。
すると全く攻撃が効いていなかったラノックスが苦しんでいた。突きを集中させてダメージを与えているらしい。凄いな。
「ぼーっとしない!」
アリアの声で我にかえる。
「はっ!」
我にかえると目の前にはラノックスの顔がって!
「うわああああ!」
無様に叫びながら避ける。やっぱり俺かなり無茶してるような。
ラノックスが俺に突進してきた。普通に斬りつけても弾かれる。
「なら!」
剣を横に地面と水平に構え突進して来るラノックスに向かって走る。
剣とラノックスが触れる。かなりの圧力が剣と腕にかかり後ろに吹っ飛ばされそうになる。けどここで吹っ飛ばされるわけにはいかない。
「うおおおお!」
圧力を無理矢理押し殺し剣を振り抜く。手にはラノックスを斬った感触。そのままラノックスの脇を通り過ぎ一回前転して衝撃を殺してアリアの横まで移動した。
「ぷはー!、成功して良かった~!」
「なんて無茶やってんのよ!」
「いや、普通に斬りつけても弾かれるから相手の攻撃を利用したらいいかなって思ってさ」
「まったく、とりあえず気を抜かないで。まだ、倒したわけじゃないから」
振り返って見ると顔に俺がつけたであろう一文字の傷があるラノックスがいた。なんとなくラノックスの顔が赤い気がする。
「うわ~、なんか怒ってるぽい」
「怒ってるわよ、まあ、これで見切り安くなるかな」
アリアは平然としているが普通、敵が怒ったら慌てるんじゃないか?
ラノックスが雄叫びをあげ突進して来る。さっきよりも速い。
「もう一度あれを――って無理だ!」
あまりの迫力にちゃっちゃと避けちゃいました。こらそこ、ヘタレとか言うな。
アリアはというとダンスでも踊ってんじゃないかって位華麗に避けてた。ついでに攻撃しながら。
「俺も今度こそ!」
ラノックスがまた俺に突進して来る。剣を水平に構え足下の岩で片足が動かないように固定する。
「はあああ!」
ガキィン
俺の剣はラノックスの角に当たった。無理矢理衝撃を押し殺して角を切断しようとする。
「うおおおお!、負けるかー!」
一気に踏み込む。
ボキン
そんな音と共にラノックスの角が折れた。
「よし!」
「危ない!」
「へ?、ぐああぁぁぁー!」
角を折って少し油断していた俺はラノックスに突き飛ばされてしまった。さらに後ろの断崖に叩きつけられてしまった。
「ぐっ!」
これでHPがあったら即死なダメージだがグローリアオンラインはそうじゃない。グローリアオンラインでの人間の死は現実と全く変わらない。心臓を刺されたら問答無用で死ぬし高い所から転落したらぺしゃんこだ。
だから、これくらいではまだ死なない。全身痛くてたまらないが、動けない程じゃない。
「カイト君!」
アリアが駆け寄って来ようとするがラノックスに阻まれている。
「退きなさい!」
アリアが渾身の突きをラノックスの脳天に放つ。
やった。そう思った瞬間アリアが吹っ飛ばされた。
「アリアー!」
遠くからだがなんとか大丈夫そうだがエストックが折れてしまっていた。ラノックスの脳天にも浅くない傷がついている。
「まずい」
ラノックスがアリアに突進していこうといていた。アリアは動けない。
「やめろー!!」
俺は全力疾走でアリアとラノックスの間に割り込んだ。
「うおおおおー!」
剣を渾身力で突き出す。狙いはアリアがつけた傷。
俺の剣はラノックスの脳天に突き刺さった。
「まだだ。まだ終わりじゃない!」
刺したまま剣を脳天から背中に向けて力ずくで動かす。
「うおおおぉぉぉー!」
脳天から背中まで一気にに切り裂いた。ラノックスは光のかけらになって消えた。
「やった」
そう言った俺は倒れてしまった。気絶する瞬間優しい光に包まれた。
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「は!」
「気がついた?」
目覚めるとアリアのキャンプだった。しかも体の痛みが消えている。
「あ、ああ。アリアが運んでくれたのか?」
「そう、君無茶しすぎ」
「ありがとう、悪かったな」
「いいわよ、面白いものも見れたし」
「そうなのか?」
「そうよ。そうだ。ねえ、提案なんだけどよかったらカイト君、これからもコンビ組まない?」
「え、でも、いいんですか?」
「ええ、カイト君筋よさそうだし。ちょうどコンビを探してたんだ」
「なら、お願いします」
「あ、でも、ビシバシ鍛えるからね」
「うへ~」
「じゃあ。帰りましょう」
俺たちはアルベールに戻った。
戦闘シーンは難しいです。
それでも頑張ります。