第十話 バルムヘイム帝国
牢に入れられて三日。蛇喰らう馬に襲われる心配がないため小休止も兼ねて牢の中にいた。まあ、くつろげる環境ではないが休めれば関係はない。それにこの国は面白そうだ。俺の勘がそう告げている。
「それで本来の目的を忘れないでくださいね」
リーナに釘を刺されるが。男なら一度は竜に乗ることにあこがれるだろう。
「な、コペイ」
「はい。竜に乗って空を飛び回るのは夢ですよ」
「ヒッヒ~、ワタシも若い頃の夢だったな~」
「お前は違うだろう人形師」
コイツがそんな普通の夢を持っていたとは思えない。
「ばれたかそうだよ。ワタシの夢はね、人間を解剖することさ」
「聞くんじゃなかったよ」
そんな夢は聞きたくなかった。
コツッ
「足音だ、誰か来たな」
来たのはあの時のあの竜騎士の女、いまだ兜をかぶっていて顔がわからない。
「出ろ」
「出ていいのか」
「出ろ」
素っ気無くそれだけ言って女は牢を出て行った。
「さてと行くとしますか」
とりあえず牢の外に出るとあの偉そうな男が立っていた。
「すまないな待たせて」
「いや、別に」
「俺は竜騎士シーラ部隊隊長ガンツだ」
「黒き翼ギルド長カイト」
「へえ、アンタが噂は聞いてるぜ」
「どうも」
「さて、まあ、お前たちの目的は知らんがわけありなのはわかる。そんな野暮なこたあ聞かねえよ」
「それは助かる」
「さて、ここで話すのもなんだな。上に行こう」
地下牢をでてつれてこられたのはどこかの会議室であろう部屋、さっきの女も居る。
「山脈を越えてこっちに来たそうだが飛空挺を使うとはね」
ここに来た方法を話したら驚かれた。
「あんたらはどうやってきたんだ」
「俺達は、飛竜に乗って行った」
「無茶をするな」
「ふん、そこに何かがあるかも知れねえんだ。行くしかねえだろう」
「そうだな」
だが、飛竜でも越えられたのかなるほど。だが、危険だな、振り落とされる可能性もあったはずだから。しかし、この山脈は本当になんなんだろうな。飛空挺でも越えられるし飛竜でも越えられる。一体何がしたかったのか。まあ、いい、おかげで世界の広さを知れた。
「それでお前さんたちは何をしにここに来た」
「世界の知識の全てを収めていると言われている街ユーニヴァスコノシェンツァにこの子の親を探しにな」
ユウの肩に手を置きながら言う。
「そうか、なるほどね。なら、案内してやるのもやぶさかではない」
だが、なにかあるな。
「そこには飛竜でしかいけない」
「マジかよ」
「いけないことはないんだが山脈の向こう側と違ってこっちは飛竜が山ほど飛んでんだ。飛空挺は良い的だ」
なら、飛空挺はこれ以上は駄目か。
「悪いなギンさんここまで来てもらったのに」
「なに、いいさ。お前たちの役に立てたんだからな」
「すまないな」
「いいってことよ」
さて、だが、ギンさんはどうやって帰ってもらおうか。
「安心しな、俺の仲間が送っていく」
「そうか」
「困ったときはお互い様だ」
「そうだな」
「さて、ならお前たちに飛竜を用意させないとな。まあ、それまではこのシュリに案内させよう」
それまで黙っていた女がガンツに噛み付く。
「隊長!! こいつは!」
「あれはお前も悪い」
「ですが」
「これは命令だ」
「……はい」
物凄い不服そうだ。まあ、出会いが出会いだしな。仕方ない。俺も悪いしな。
「じゃあ、あとは自由にしてくれて構わない。すまないが宿は自分で見つけてくれ」
「ああ」
ガンツは部屋を出て行った。
「それでは、行きましょうか」
シュリが言う。
「ヒヒッ、その前にその顔を見せてくれないか?」
人形師が言う。確かに顔を隠したままでは話しにくいな。
「…………いいだろう」
シュリが兜を脱ぐ。燃えるような赤い髪が兜から落ち。竜の角を持つ端正な顔が出てきた。これはドラゴニクス族か。
ドラゴニクス族。旧大陸では見たことがない種族だ。新大陸にはいたのだが少人数だ。亜人で竜の力をもつと言われている。
「ヒヒッ、良いね~」
何がいいんだよ。
「改めて自己紹介させてもらう。バルムヘイム帝国竜騎士イーラ部隊第十三位シュリだ」
「黒き翼ギルド長カイト」
「リーナです」
「ユイよ」
「ティア」
「コペイです」
「トミーだ。釣りをや・ら・な・い・か」
「某はサクヤだ」
「人形師だよヒヒッ」
「ユウ~」
互いに自己紹介も終わり外にでる。城下町は赤レンガで造られた赤い街だった。
「すごいな」
空には大型小型の飛竜が飛んでいた。この国では飛竜が移動手段のようだな。なるほどね。世界は広い。そしてほとんどの人間がドラゴニクス族だった。これはどういうことだ。
「ここがこのバルムヘイム帝国の首都エルベルトよ。付いて来なさい」
シュリについていくと宿屋に着いた。
「とりあえずここに泊まって」
「ああ、助かる」
「じゃ」
どうやら俺はそうとう嫌われてるらしいな。まあ、無理もないか。
「さてととりあえず部屋を取ろう」
俺たちは宿屋に入った。
「さてと、これからどうする?」
みんなに聞く。
「そうですね。ちょっと買い物とかしてみたいと思います」
リーナが言う。
「私も行きたい」
ユイも言った。女の子は買い物とか好きだからな。
「そうだな。各人自由でいいかな」
全員が賛成した。
「じゃあ、私たちは買い物をしてきますね」
「ああ」
リーナたち女の子組は街に買い物に行った。何かあってもあいつらなら何とかできるだろう。それにしてもあのサクヤすら買い物とはやはり女の子というわけか。本人に行ったら斬られそうだが。いや、真っ赤になるかもな。コペイはユウの護衛と荷物持ちを兼ねて着いていった。
「ヒッヒ~、さ~て、とワタシはここの人形技術を見に行くとしようかね~」
「頼むから捕まらないでくれよ」
「そんなへまはしないよ」
人形師も出ていった。あの格好で出て行ったら捕まると思うんだがな。人形師の格好は灰ずくめで大きな棺を背負っているのだ。怪しいことこの上ない。あの棺の中には人形が入っているらしいのだが、もう少しまともな入れ物はなかったのかと思う。まあ、アレがまともだったら逆に違和感があるか。
「さて、行くか」
俺はというと宿を出て通りの裏通りに行った。
「…………それで何の用だ」
裏通りに居た人間――シュリに言う。宿に入る前にメモを手渡された。そこにはここで待つということが書いてあった。それで俺は荷物持ちを断りここに来た。別に荷物持ちが大変そうだったからここに来たわけじゃない。
「…………」
「黙ってたら何もわからないだろ」
「お前が本当にカイトなのか」
「そうだが?」
俺以外にカイトという名前の奴は見たことがない。というよりこの時代、同じ名前の奴は絶対にいない。コンピュータで完璧に人間が管理されているのだそれは当たり前。
「…………」
「だからなんなんだよ?」
「…………お前は本当にカイトなのだな」
「だから、それ以外になにがあるんだ」
「…………」
シュリは俺を見たまま固まってしまっている。なんなんだ?
「……私のことを覚えていないか?」
「は?」
何を言ってるんだこいつは? 俺はこんな奴に一度もあったことなんて……ないはず…………。記憶を探る。何かあったかどうか。アキラやミリア以外の幼馴染はいない…………まさか。
「もしかしてあのシュリなのか?」
「……そうだ」
「本当に?」
「そうだ」
まさか本当にあのシュリだとはな。そうか嫌われてたわけじゃないのか。なるほどね。
「生きていたんだな」
「当たり前だ。私を誰だと思っている」
「そうか、それにしても懐かしいな」
「そうだな。まさか、こんなところでお前に会えるとはな。ミリアやアキラは元気か?」
「ああ、元気だと思う。お前こそ元気になったんだな」
「この通りな」
シュリは昔はとても体が弱かった。俺は昔、シュリに会ったことがあった。真っ白な病室でだ。まあ、アキラやミリアと遊んでいてボールが飛び込んだその時にあったのだ。俺たちはよく遊んだ。だが、シュリが治療のためにどこかへ行ったときから会っていない。相当昔だったこともあって忘れていた。
「それにしてもやはりカイトはすごいな」
今までのことを話した。
「そうか?」
「そうだろう。私では出来ないことだ」
「なあ、お前の話も聞かせてくれよ」
「そうだな。このドラゴニクスという種族はこの大陸でゲームをスタートするのだ」
「そうなのか?」
「ああ、それもこの街だ。そして最初は飛竜などには乗れなかった。飛竜を飼いならしどこでも自由に移動できるようになったのはお前があの大陸を開放したあとだ」
「そうなのか」
まだまだおくが深いんだな、このグローリアオンラインは。確かに全世界の人口をあの大陸に押し込めるとは思っていなかったがそんなトリックもあったんだな。
「まだまだ、人は世界中に散らばっている。どうやらこのゲームマスターがランダムに無作為に移動させている節もあるな」
「そうか」
ってことはまだまだ世界中には知らない街がありそうだな。いつか行ってみたいな。
「しかしまたカイトに会えて嬉しい」
「ああ、俺もだ」
「そうだな、あとで勝負してみないか?」
「ああ、そうだな、いいかもな」
「なら、行こうか」
「今からか?」
「ああ」
「そうだな」
俺は再開した友人シュリについて城の訓練施設に行った。
次回更新は二週間後です。