第七話 燃える街
翌日、俺たちが泊まっていた宿屋にギンさんからの手紙が来ていた。
「なんて書いてあるの?」
ユイが手紙を持つ俺に聞いてきた。
「待て、今見てみる。
手紙の封をきり手紙を読む。
「話があるからまた家まで来てくれって書いてある」
「話って何かな? もしかして気が変わったとか」
「そうだといいんだがな」
「きっとそうだって」
「ユイあまり期待しすぎるなよ」
「わかってるって」
その割にはうれしそうに羽がパタパタと揺れている。
「そうですね。あまり期待しないで行ったほうがいいですね」
「リーナお前もか」
リーナも口ではそう言っているが尻尾はうれしそうにパタパタ揺れている。お前ら二人とも同じかよ。
「ん~、行こう~」
ユウも乗り気だな。
「じゃあ、朝食のあと行くとするか」
「うん」
その後軽めの朝食を取り街外れに向かった。相変わらず街中での視線はすごい。
「さて、なんの話かな」
ギンさんの家をノックする。
「おお、待ってたぜ。こっちだ」
家の中から出てきたギンさん。そして開けた場所に案内された。そこには。
「これは!」
「すごい」
「まさか」
「すごい~すごい~!」
「コイツが世界初の飛行機関ウォラーレだ」
巨大な飛空挺があった。
「いいんですか?」
「ああ、そこの小さい嬢ちゃんの言葉で目が覚めたぜ」
ギンさんはユウを指差す。
「ありがとうございます」
「いいってことよ。久しぶりに職人魂が騒いだぜ。それで今から行くんだろう」
「はい」
「なら、行こうぜ」
乗り込もうとしたとき。
「待ってもらいましょうか」
「フィオ? 何をしに……!!」
街では火の手が上がっている。そしてフィオの持っている剣には。
「その剣の蛇喰らう馬の紋章。お前まさか」
「ええ、そうですよ。私は彼らの協力者です。どうやってもそれが欲しいんでね」
ウォラーレを指差すフィオ。
「……犯罪者プレイヤーは街には入れないはずだ」
そういいながらリーナたちに乗り込むように合図する。気がついたリーナたちがゆっくりとウォラーレに近づいていく。
「ああ、何事にも裏技というものがあるんですよ」
「何?」
「城壁といえばわかりますか?」
「……」
「あの壁にそのようなシステムがあります。これ、実は壁を破壊すると効果がなくなるんですよ」
「だが、外からじゃ破壊することはまず不可能なはずだ。その前に捕まるからな」
「ええ、そうです。ですら今回は内側から破壊しました」
「貴様」
「おっと、勘違いしないでください。僕は何もやってませんよ」
「ふざけるな。お前が関わっていることには変わりない」
「そうですね。ですからあなたたちを殺してしまいましょう」
いくつかの気配が現れた。囲まれている。数にして20ってところか。しかもかなりの使い手だ。
「さすがの君でもこの数を相手にして大丈夫とは思えません。それに彼女たちを守りながら戦えますか?」
「…………」
さすがにまずいな。
「(ギンさん。俺が合図したら構わず出発してください)」
「(!! 待てそんなことをすれば)」
「(俺だけなら何とかなります。だから行ってください。西の山脈の前街ゴルディアで合流しましょう)」
「(わかった。かならず生きろよ)」
ギンさんが乗り込む。リーナたちも乗り込んだみたいだな。さて。
「逃がすな!!」
「おっと、お前たちの相手はこの俺だ」
魔剣を抜く。出し惜しみは無しだ。最初から全開でいく。魔剣から闇が噴き出す。
「さて、行くぞ」
魔剣から噴き出す闇の刃で包囲をなぎ払う。さすがの闇ギルドこれくらいじゃやられないようで全員が避けていた。
「いまだ!!」
「おっしゃ!!」
「リーナ、ユイ、ユウを頼んだぞ!!」
「うん」
「ちゃんとと生きていてくださいね」
「ああ」
「行かせるか!!」
フィオが離陸させないように走るが。
「させるか」
斬りつける。
「チィ!」
俺の斬撃を受け止めて後退。その間にウォラーレは飛び去った。
「よくもよくもよくもよくも!!」
「せっかくのいい顔が台無しだぞ」
「うるさい!! お前たちやってしまえ」
20人の黒マントの奴らが俺を取り囲む。
「さて、いっちょはでにやるか!!!」
20人が一斉に飛び掛ってきた。
「あああああああ!!」
尾を引く闇の刃を薙ぐ。これで20人全員が止まる。その隙に一人に疾駆しきりつける。続けざまに二人目を斬り付ける。
「はあああああ!!」
「奇襲するなら声は出さないことだ」
背後からきりつけられる。がそれを紙一重でかわし剣で突き刺す。三人目。そのまま突き刺さった男を盾にして四人目に接近しナイフを投擲した。眉間にナイフが突き刺さる。
「ぎゃっ!」
刺した男を抜き。
「グラビトン!!」
超重力で二人を叩き潰す。五、六人目。あと14人。
「もっとだもっと攻めろ!!」
フィオの命令で14人が一斉に攻める。俺もそれに疾駆する。
ガキィン
一人と剣を交える。その間に他の奴らも来るが力を抜き相手のバランスを崩し斬りつける。そのまま回転し接近してきた奴らを斬って行
く。あと11人。
無数の斬撃をかわしいなし受け止める。
「はあああああああ!!!」
腰だめに構えた魔剣を薙ぐ。尾を引く刃が敵を切り裂いていく。魔剣の攻撃範囲は広い。避けれる死角などない! 残り6人。
「は、早くそいつを殺せよ!!」
フィオはそういうが明らかにおびえている。それは黒マントの男たちも同じだ。
「ふむ、六人で一人をやるとはいけない。ここは某が助太刀しよう」
「ん?」
声と供に閃光がほとばしる。
「あ?」
黒マントの一人が一刀両断された。
「サクヤここに推参した」
「サクヤなんでここに」
「カイト殿か、騒ぎを聞きつけてきたら闇ギルドが街を襲っていたのでな」
「なるほど。助かる、俺一人でこれを片付けるのは骨が折れるからな」
「何を言う。一人でも余裕ではないか」
「そうか?」
「まあ、よい、それではこやつらを早く片付け街の救援に行かねば」
「ああ、そうだな」
俺とサクヤはあわせたように疾駆した。
「俺は三人をやるからお前あとの二人を頼む」
「承知した」
固まっている三人の前に疾駆し一瞬で切り伏せた。
「はああああ!!」
サクヤが刀を鞘から抜く。居合い。目にも留まらぬ速さで繰りだされる居合いは二人を切断した。風を纏っての高速移動か。
「これでお前最後だ。フィオ」
「来るなクルナ!!」
ブシャ!!
「あ!?」
その時黒い鎌がフィオの喉に突き刺さった。そのまま鎌が抜けフィオは倒れた。
「お前かレギル」
「ヒャッハ~久しぶりだね~カイトクン出世したみたいだね~。あと君には感謝してるよ~。いい仕事場がふえたからね」
黒い巨大な鎌を持った残忍そうな男――レギルが現れた。
「…………貴様に感謝されるいわれはない」
「まあ、まあ、そう怖い顔しないでそっちのお嬢さんもね~。そんな怖い顔してると損するよ」
「うるさい」
「おお、怖い怖い」
「それで何をしにきた」
「ん~。やりすぎたこのバカを殺しに来たのさ」
「フィオのことか」
「そうだよ~。まったくこの街って結構好きだから壊したくなかったんだよね~、本当に悲しいよね~」
そういうレギルはまったく悲しそうではなかった。
「そういうならもっとそういう顔をしたらどうだ」
「まあ、いいとしてあの子はどうしたんだい?」
「あの子?」
「とぼけなくていい」
雰囲気が変わった。
「俺っちは知ってるよ。あの子は君が思っているよりずっと重要なんだよ。この世界にとってはね」
「どういうことだ」
「それは君が考えることだし。それに俺っちは教える気がない。さて、ここにはいないようだね~。一体どこにやったのかな?」
「さあな」
「まあ、また地道に探すよ。じゃあね」
「逃がすと思っているのか?」
「ん~。思ってないけど。君は俺っちと戦うほどおろかじゃないでしょ?」
「クッ」
「じゃあね~」
そのまま転移魔法でレギルはどこかへと消えた。
「クソ」
「カイト殿、今は街を」
「ああ」
蛇喰らう馬の残党を狩る。とりあえずそれからだ。
「行くぞ!」
「おう」
まさに飛ぶように街へと疾駆した。
街の人たちの悲鳴が聞こえる。
街を焼く音が聞こえる。
それら全てが気持ち悪かった。
炎を上げる街へと俺とサクヤは疾駆した。
それを止めるために。
次回は一週間後の予定です。