第三話 人形と闇と西への旅立ち
「見つかったって本当ですか!!」
ギルドに入った途端リーナに詰め寄られた。近い顔が近い!
「あ、ああ、ほら」
背中の女の子を見せてやる。
「はあ。よかった」
「今度はきちんと見ておかないとな」
「う、ううん」
「お、起きたか」
女の子をイスにおろす。
「……ここは?」
なにやら気の抜けるような声で女の子が聞いてきた。
「黒き翼のギルドハウスだ」
「……ぎるど?」
「そうだ俺の名前はカイト、君の名前は?」
「……名前ない」
「ないって……」
「最初からない」
「……そうか。ならお母さんは?」
「母にあたるのはハザマユウ。私の母」
「ハザマユウって」
ハザマユウ、AIの基礎を作ったというかAIの初期型を作ったとされる人物で今から100年ほど前の人物。その技術を使って南雲財閥が100年の時をかけてこのグローリアを完成させた。しかもハザマユウは今から100年前に実は仮想世界へのダイブシステムとこのグローリアのプロトタイプを完成させていたという話だから物凄いことだ。しかし問題は既にハザマユウは死んでおり過去の人間であること。その子供がここにいるといのはおかしい。いたとしてもかなりの歳だろう。こんな少女がいるのはやはりおかしい。
「それは本当?」
コクリ。
少女が頷いた。
さて、これはどういうことなんだろう。
「ねえ、カイトどういうこと?」
話を聞いていたユイが聞いてきた。
「俺にもわからん。だが、嘘を言っているとは思えない。仕方ないまたアイツに」
「よんだ~?」
床から人形師が出現した。
「どこから入ってきてんだ!」
「ヒヒ、この街のいたるところに抜け道を用意してるんだよ」
ドカッ!!
一発人形師の頭を殴った。
「うぐ、暴力反対。ヒヒッ」
「貴様悪用してないだろうな」
「ヒヒッ、ワタシだよ信用していいよ」
信用できない。こんなニヤケ顔の奴を信用しろということ自体が無理だ。
「ねえ、カイトこの人だれ?」
「ああユイたちには言ってなかったな。コイツは人形師。情報屋」
「ヒヒヒヒヒッ、よろしく~」
「よ、よろしく」
「ど、どうも」
ユイとリーナが若干引き気味に言った。まあ、当たり前の反応だな。
「見つかったって本当!」
「よかったです!」
その時ティアとコペイが入って来た。
「シルフの姫とサラマンダーの騎士か」
「誰こいつ」
「怪しいです」
ティアはあまり驚かずコペイは通報しそうな勢いの反応だ。
「ティア、コペイこいつは人形師だ一応信用は出来る」
「ふ~ん」
「カイトさんがそういうなら」
さて話を戻そう。
「ちょうどいい人形師。情報が欲しい」
「対価がいるよ」
「何が欲しい」
「そうだね~。じゃあ~」
リーナたちを品定めするように見ている。何かよからぬことを考えているな。
「そこの女の子たちがワタシにごほ……」
バゴンッ!!
壁が砕けた。
「……って言うのは冗談で水と食料を」
「ああ、渡してやれ」
「はい」
リーナが水と食料を渡した。
「で、その子のことだろう。ワタシにも詳しいことはわからないがその子は裏世界の深奥で噂になっていてね~。ワタシがその子を見つけられてのはそのせい」
なるほどね。
「それで?」
「それでね、とある闇ギルドがこの子を狙っているってね」
「!!」
闇ギルドその言葉で緊張が走る。
「ああ、なんていったかな確か闇ギルド蛇喰らう馬だったかな」
「蛇喰らう馬だと!!」
「うん、そう、君とは少なからず因縁があったね」
「なんであいつらがこいつを狙う!」
こんな女の子を狙っても意味はないはずだ。いや、ハザマユウに関してか?
「そうだね。狙っている理由も不明。ワタシもお手あげなのさ~ヒッヒッヒ~」」
人形師でもわからないとなるとそれ以上は調べようがない。何を考えているレギル!
キィ。
その時ギルドの扉があいた。そこには黒い衣を纏った三人の男が立っていた。
「蛇喰らう馬か!」
何も言わず三人の男は剣を抜き飛び掛ってきた。
「チィ!」
咄嗟にテーブルを倒し奴らに向けて蹴る。三人の男はギルドの外に出て行った。
「リーナにティア、コペイはその女の子を守れ。ユイこいつらの相手は俺たちがやるぞ」
「うん」
扉を蹴破り外に飛び出す。三人の男は広場に立っている。
「ったく街中でやってくれるな。それにしても何でこの場所が」
通りと広場には人は居ない。
「……」
三人の男が俺とユイに疾駆する。
ガキィン!
一人と剣を交えそのまま弾き飛ばし切りかかって来たもう一人を魔法で吹き飛ばす。三人目はユイに任せる。
しかし、街中で戦っても意味はない。街中での戦闘では死なないからだ。これは無防備な街の人間が俺たちのようなプレイヤーに虐殺されないようにとの配慮だ。だから、こんな戦闘は意味がないがしかし犯罪者プレイヤーにおいてはそれが適用されない。犯罪者プレイヤーは街中で戦ったら殺される危険性が出てくる。それに街にも入ることができないはずだ。
「誰か手引きした奴がいるな」
それが誰だかわからないがとりあえずこいつらを倒してからだ。
俺の目の前の二人が剣を構え疾駆する。
「はああああああぁぁぁぁぁ!」
魔剣が闇を帯びる。
「一撃で決めてやる」
剣を振る。闇の刃が二人の男を切った。ユイを見るとユイの方も終わったみたいだ。
「さて、顔を見るか」
男のフードをはぐ。そこには。
「人形だと」
よく出来た精巧な人形の顔があった。
「こっちもだよカイト」
三人の襲撃者はどれも人形だった。一応確認すると蛇喰らう馬の紋章がついていた。
「これは……」
人形を動かす魔法はある。魔法師が偶然作り出した魔法だ。それに人形、もともと趣味で作られていた人形だが操る魔法が出来たことにより戦闘用に使うものが出始めた。だがここまで人に近い人形を作れる人形技師はそうはいない。俺が知る中ではただ一人。
「アイツに聞くしかないな。ユイ戻るぞ」
「うん」
人形を持ってギルドに戻る。
「カイト君。大丈夫だった?」
「ああ、リーナ大丈夫だ」
ギルドの奥を見ると人形師が逃げようとしていた。
「どこに行く」
「いや~ね、ワタシ用事を思い出しまして~」
「まあ、待て」
人形師をイスに引っ張っていく。
「この人形はお前のだろう」
「コンナニンギョウミタコトナイヨ~」
「思いっきり棒読みだな人形師」
「ヒヒ、最近街の外の方のお客に頼まれてね~」
「誰だ」
「それはわからないね~。フードで顔を隠していたし」
「なぜそんな怪しい奴に人形を売った」
「ヒヒッ、金さえ払えばワタシには関係ない。ワタシの人形で何をしようとね。まさか、こんなことになるとは思わなかったけど」
コイツは金さえもらえればなんでもする奴だったな。
「まあ、いいとりあえずは追い払った。人形師人形は何体作った」
「三体だよ。もらった金で作れるのがそれだけだったからね~」
「そうか」
それならしばらくは心配はないな。
「さて、とりあえずは扉を直そう」
ひとまず扉を直す。
「ふう、さて、なあ、君狙われる理由わかるかい?」
女の子に聞く。
フルフル。
女の子は首を振った。
「何かわかると思ったんだが」
「……わからない。自分が何なのかも」
「記憶がないのか?」
「……」
コクリと頷いた。
「さてどうする?」
リーナたちに聞く。
「私はこのまま放ってはおけません」
「リーナの言うとおり私もそう思う」
ユイとリーナはそう言った。
「私はカイトに従うわよ」
「僕もです」
「今帰ったぞ!!」
「トミー!!」
今までどこかに行っていたというより失踪していたトミーが帰ってきた。しかも巨大な宝石魚を背負っている。
「今までどこで何をしていた!!」
「フッ、僕のやっていることなどただひとつ! つりだぁ!!」
相変わらずだな。
「ふ、それじゃあお待ちかね。さあ、みんな殴れ! これくらいの人数でないと駄目らしいからな」
「ちょっとまてこれサブイベントじゃないのか!!」
「もちろんだ!」
コイツ勝手にサブイベント進めてやがった。まあ、いいとりあえず殴るか。
ドゴッ!!
超巨大ドス宝石魚からたくさんの宝石が吐き出された。
「あはっはっはっは~。これだからやめられない!」
さて、これでまた財政は問題ないな。
「っとこんなことしてる場合じゃない」
女の子の方に向き直る。
「とりあえず君が良かったらここにいてもいい」
「……いいの?」
「ああ」
「それならここにいる」
「そうか、なら名前をきめてやらないとな」
「?」
「名前がないと不便だろ。そうだな……親がハザマユウならそうだなユウでどうだ」
「カイトそれって安直って言うかそのままって言うか」
「ユイ、それは言うな俺にネームングセンスを期待するな」
「……いい、それでいい」
女の子改めユウがうれしそうに笑った。喜んでくれてなによりだ。ユイとかリーナの視線が何かを言っているが無視だ無視。
「さて、これからどうしようか」
このままここにいてもこの子の親は見つけることは出来ないだろうし。闇ギルドに狙われている以上またここに闇ギルドの刺客が来る可能性もある。
「それならあそこに行ってみませんか?」
リーナが言った。
「あそこ?」
「はい、この王都の西にある山脈を越えたところにある世界の知識の全てを収めていると言われている街ユーニヴァスコノシェンツァに」
「あれは噂だろう。それに西の山脈は人の足では越えられないと言われているぞ」
「でも、とりあえずそれを目指してみてもいいと思います」
確かにリーナの言うことも一理あるな。
「そうだな賭けてみようか」
とりあえずはこれでいい。あとは。
「さて、人形師」
「なんだい~」
「この女の子そっくりの人形を作れ」
「代金は……」
「おっと、これのこと忘れたか?」
三体の人形を見せる。
「ヒヒ、仕方ないね~。わかったよ作ろう。それに自動で動くようにしといてあげるよ。ここにはそんなに魔法に長けたのは一人しかいないし。それにあまり器用じゃなさそうだからね」
ティアの方を見ながら人形師が言った。バレバレだろそれだと。
「ねえ、あれ誰のこと言ってるのかしら」
言われている本人であるティアが言った。
「さあ、まあこれで準備は整ったな。リーナとユイは俺について来い」
「うん」
「はい」
「ティア、コペイ、トミーはギルドに残って人形の守護だ。留守を頼む」
「ええ」
「はい」
「わかったぜ」
さて、出るなら早いほうがいいだろう。遅くなればまた刺客が現れる可能性があるからな。
「今すぐいく。後は頼んだぞ。さあ、行こうか」
「うん」
俺とリーナとユイとユウは一目を避けて王都を出発した。
うらぐろ~りあ
カイト「なあ、これはどういうことだ?」
アリア「ここで裏話や苦労したことを話すみたいよ」
カ「へ~、面白そうだな」
ア「昔のラジオみたいなものと考えればいいらしいわ」
作「そういうことじゃんじゃん裏話をしてくれて構わないよ」
カ「作者か、なあ、なんでいまさら連載再開したんだ?」
作「ぶっちゃけるとネタが出来たからかな。ちょうどよくユニークも10000を越えたし」
ア「本当にぶっちゃけたわね」
作「まあ、いいじゃん。あとアリアあまり出番ないから」
ア「え?」
作「いろいろやってたけどたぶんないよ」
カ「それは本当なのか?」
作「さあ~。読めばわかるよ。さて、今回はこれくらいで、それじゃ~」
ア「ちょっとまって出番ないって本当なの!?」