第三話 出会い
「って、どこ行こう」
どこに行くかまったく決めていなかった。
「装備を整えるにしても金がないし。む~」
しばらく考えて思い出した。
「そうだ。塔の一層目は確か弱いモンスターだけだったはず、行ってみるか」
と、俺はゲートに飛びこみ塔の中に出た。出た場所は森の中だった。
「お~、すげえ!」
花の香りまであるとは、さすがだな。
「さて、とりあえず、歩いて見るか」
しかし、どんなに歩いてもモンスターは現れなかった。
「おかしいな。普通なら一体くらい遭遇してもおかしくないのに」
周りにはまったくといっていいほどモンスターの気配がしない。そのうえ人の気配もしないのだ。今日ログインしたのは俺たちだけじゃないはずだから、すこしはいてもいいはずなのにまったく人がいない。
「あれ、もしかして俺、いきなり躓いた?」
いやいや。首を横に振りその考えを追い出す。
その時遠くで地鳴りが聞こえた。
「!?、もしかして他の人がいるかも行ってみよ!」
俺は駆け出した。
地鳴りがしていたところにいくと。
「確かこのあたりだったはず」
その時
ドーン!!
「!?」
サイのような巨大なモンスターが木々を破壊しながら現れた。すぐにサイのステータスが現れた。どうやらラノックスというモンスターらしい。問題なのは俺が到底倒せる敵じゃないってこと。
「俺、貧乏くじ引いちまった。てか、なんでこんなとこにこんなのがいんだよ!!」
「そこの初心者!、早く逃げなさい!!」
後ろから女の声がした。その瞬間、俺の真横を白い騎士風の服を来た女が通りすぎていった。
女が剣を抜く。女が抜いた剣はエストックと呼ばれる突き用の剣。剣身の断面は菱形で、先端になるにつれ狭まり先端は鋭く尖っていて剣身90cm、全長120cm程度のものだった。
女が鋭い突きをラノックスの頭に放つ。だが、あまり効いているようには見えない。
ラノックスが俺に突進を仕掛けてきた。なんでこっちに!
「うわあああああ!!」
「早く逃げなさいって、行ったでしょう」
女が一際鋭い突きをラノックスの脳天に放つ。さすがのラノックスにも効いたようだ。
ラノックスが逃げていく。女は追おうとしたが俺を見てやめた。
「あなた初心者でしょ、なんでこんなとこにいるの!」
女がエストックをしまいながら言った。
俺は女をその時初めてよく見た。年は俺と同じかひとつ上くらい。栗色の髪を上向きにゴムで止めている。一言で言って美人である。
俺が見とれてボーっとしていたら。
「ちょっと、聞いてるの?」
「あ、いや、何の話だっけ?」
「はあ~」
あからさまにため息をつかれた。
「だから、なんでこんなとこにいるかよ」
「え~と、とりあえず弱いモンスターでも倒そうかと」
「あんた、掲示板見てないの?」
「掲示板?」
「あきれた、あなたそんなことも知らないの?、掲示板って言うのは――!?」
「ちょ!!」
いきなり腕をつかまれ茂みに連れ込まれた。茂みの外を確認するとラノックスが戻って来ていた。
「あの」
「しっ!!、見つかったらあなた死ぬわよ」
「――!?」
急いで黙った。しばらくじっとしていたらラノックスはどこかへ行ったようだ。
「ふう」
「はあ~」
茂みからでて息をつく。
「まったく、とりあえずここは危険だから、こっち来なさい」
とりあえずついて行った。着いたのはキャンプだった。
「さてと、とりあえずあなたに説明してあげるわ。そこに座りなさい」
言われた通りに座った。
「そういえば自己紹介がまだだったわね。私はアリアよ。よろしく」
「俺はカイトだ。よろしく」
互いに握手する。そしてアリアが説明し始めた。
「いい、まずこの塔について。この塔はね、一ヶ月ごとに上から強いモンスターが降りてくるの」
「なるほど、だから他のモンスターがいなかったわけか」
「そういうこと」
「で、レアアイテムを落とす奴もいるから、こうして討伐に来たってわけ」
「じゃあ、掲示板ってのは?」
「広場にある。掲示板よ。そこには結構情報が載ってるの。モンスターが降りてきたとかね」
「まったく気にしてなかった」
しまった。そんなものがあるなんて。いや、考えればわかることか。俺のバカバカバカ。
自己嫌悪に陥っていると笑いながらアリアが言った。
「面白いわね。あなた」
なんか馬鹿にされているような気がするが美人の笑い顔を見れたのでよしとしよう。うん。
「じゃあ、あなた帰りなさい、転移石あげるから」
アリアが淡い青色の石を渡してきた。
「アリアはどうするんだ」
「私はラノックスを狩るわ」
「1人でか?」
「そうよ、ほら、早く帰りなさい、石を叩きつければいいから」
「ダメだ!、アリアを1人には出来ない」
「何言ってるの、あなたがいても足手まといよ」
確かにそうかもしれないでも。
「アリアは女の子じゃないか」
「え?」
アリアは驚いた顔をしていた。
「あの、今なんて?」
アリアが聞いてきたからもう一度言う。
「だから、アリアは女の子じゃないか。女の子を1人では戦わせれないよ」
アリアは急に笑い出した。
「アハハハ!、君、本当に面白いね、それに変」
「そうか?、普通だろ。てか、笑うなよ!」
「ごめん、ごめん」
アリアが目尻についた涙を拭いながら言った。そんなに、面白かったのか。
「いいわ、着いてきなさい。でも、危なくなったらすぐに逃げることわかった?」
「ああ」
こうして俺達2人はパーティーを組むことになった。
更新は書き上げたら随時あげていくので不定期になることがあります。
なるべくはやく書き上げれるよう頑張ります。