第二十七話 闇の咲く頃に
ゲートから出るとそこは黒い空間だった。どこまでも果て無い闇が続く空間。
「ここが第1000層」
1000層は他の層と違い塔の屋上だ。そのため塔の直径と同じ大きさしかない。
だが……。
「どこまでも続いてるようにしか見えないな」
『よく来たな、人間共』
不意に体を揺らすような声が響き黒い鎧を身に纏った3mほどの人型が現れた。
「!?」
『我は魔王デグリエス。よく来たな。お前たちは我の張った結界を解きに来たのだろう。ならば、何をしている、我を討ちに来たのだろう?。かかってくるがいい』
「ふ、ならば見せてやろう」
「トミー!、何してやがる!!」
トミーがそう言い放ち前に出て何かを振りかぶる。
「フィシーング!!」
振りかぶったのは釣竿。釣り糸が魔王に巻きついた。
そして
「行くぞ!!」
トミーは竿を思いっきり引いた。
「無理だろ!!」
だが、その予想は裏切られた。
『ぬあ!』
なんと魔王デグリエスが釣り上げられた。
「僕に釣り上げれないものはない」
トミーが無駄に輝いている。なぜかシステムアナウンスが流れた。
『トミー、称号『魔王を釣り上げし者』獲得』
「なんじゃそりゃ!!」
しかし、魔王はいつの間にか脱出していて玉座に座っていた。
「ふざけている暇はない、行くぞ!!」
ガヴェインの号令により一斉に俺たちは動き出した。
『来るがいい、人間ども!!』
弓を持つものは一斉に矢を放ち、剣を持つものは魔王デグリエスへと向かう。
だが……。
『効かぬわ!!』
デグリエスが腕を振るそれだけで矢と人は吹き飛んだ。
「なんて奴だ!」
『もう、終わりか?、ではこっちから行くぞ!』
デグリエスは巨大な剣を一振りした。人外の剣風が俺を襲った。
「なんだよ、これは」
一振りで全ての状況が変わった。そう、たった一振り。それだけで。
「うあああああああああああああ」
「ぎゃああああああああああああ」
「ああああああああああああああ」
各所から悲鳴があがり、半数の人間が死んだ。
「ちょっと!、ありえないでしょ」
ユイが声を上げた。
「なんて力なの!」
ティアが言う。
そうこうしているうちにほとんどの人間が死んでいった。残っているのは十二騎士と俺たちと他数人くらいだ。しかも俺たちが生きているのは後ろにいたからにすぎない。
「やばすぎだな、これ」
それでもここに来たのならやらなければいけない。
「我らを甘くみるなよ。紅蓮剣!!」
ガヴェインがデグリエスに向っていった。他の十二騎士もだ。
十二騎士の戦いは凄まじかった。だが、一人また一人と倒れてゆく。それほどにデグリエスは強い。だが、まるきり弱っていないわけではない。動きがだんだん遅くなってきている。
「きゃ!」
「アリア!」
体勢を崩したアリアにデグリエスが巨剣を振り下ろそうとする。
「やらせるか!!」
咄嗟に魔剣で受け止めた。
「ぐっ! なんて力だ」
『面白いぞ人間』
何とか受け流し横に転がる。
「大丈夫か、アリア」
「ええ、大丈夫よ」
「小僧!、邪魔だどけ!!」
ガヴェインの声と同時に紅蓮の剣が振り下ろされる。
横に転がって避ける。
『フハハハハハハハハハハ!。良いぞ人間!、だが、甘いな』
「な…に」
「ガヴェイン!!」
ガヴェインが斬られ粒子となって霧散した。
死亡。ガヴェインの死亡にこちらの士気は大いに下がり、どんどんやられていく。
残りは俺たち六人とアリア、ユラン。そして逃げ惑っている者。いつの間にかこれだけしか生き残っていなかった。
「カイト!」
「ユランか。何だ!」
「仕方がない。我々があいつを少しの間足止めする。その隙に全力でやれ!」
「な!?、でも」
「それ以外なさそうね」
「アリアまで」
「私もそれで良いです」
「リーナ!」
「いいわよ」
「ユイ!」
「任せろ!」
「トミー!」
「大丈夫よ、あなたならできるでしょ」
「ティア!」
「出来ますよ」
「コペイ。わかったやろう」
「じゃあ、僕が奴を縫い付ける!」
トミーが槍二本の槍を持っていった。
「行くぞ!!」
トミーが二本の槍をデグリエスに投擲する。
『小ざかしいマネを!』
デグリエスは弾いた。トミーはすかさず、さらに二本投擲。
『無駄だ!』
これも弾かれた。だが。
『なに!』
デグリエスの目前には魔槍を構えて突進してるトミーがいた。デグリエスの胸に魔槍が刺さる。それでも止まらずにトミーは咆哮をあげて踏み込んだ。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」
『グアアアアアアアアアアアア!!」
そのまま壁に槍で縫い付けられた。だが、まだ死んでいない。
「行くぞ!」
ユランが刀をデグリエスの右肩に突き刺す。
『ガアアアアアアア!』
「行くわよ!!」
アリアが細剣を左肩に。
「当たれ!!」
リーナが矢を両手の甲に。
「いっけー!!」
ユイが細剣を。
「風の槍!!」
ティアが風の槍を右足に。
「おりゃああああああ!!」
コペイが斧を左足に。
「行ってカイト君!!」
魔剣に闇が集まり巨大な剣となった。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
それを構えデグリエスへと疾駆する。
『フオオオオオオオオオオオオオ』
デグリエスが抜け出そうとするがみんなが押さえつける。
「カイト!」
「カイトさん」
「カイト!!」
「釣り仲間!」
「カイト!」
「カイト様」
「カイト君」
「いっけえー!!」
巨剣はデグリエスの頭を貫いた。
『グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!?』
刹那、闇が晴れ青空が視界を埋め尽くした。
「勝った」
だんだんデグリエスが消えてゆく。
『フハハハハ、いい気になるなよ人間、どうせ、我が死んでも代わりはいる』
「それでも、お前は俺が倒す、消えうせろ!」
魔剣を振り下ろしデグリエスは消えた。
多大な犠牲をだして全ては終わった……。
これにてカイトの物語は一区切りを迎えました。
身勝手ながら次話のエピローグで最終話とさせていただきます。
更新予定は明日です。お楽しみに。