第二十五話 王都から塔へ
「ここがアースムーブ王国、王都リベルセントか」
リベルセントは海に面した街で城下にはこのグローリア最大の港があり、港町としても栄えている。
建物の造りは石造りがほとんど海に向かって緩やかな下り坂になっており港は少し低い位置にある。
城は一番高いところにあり街に入るとまず城が見えその後ろに街が広がるという特殊な立地である。
この街にはトップギルドの本部が数多くあり、また多くのユーザーがここをホームとしている。
「よし、釣りだ!!」
「着いて早々つりかよ」
「まあ、いつものことですし」
「うわ~、海さだ、海だ!」
「あんま、はしゃぐなよ、ユイ」
「わかってるわよ、でもあの二人にこそいったほうがいいんじゃない」
ティアとコペイがはしゃぎまわっていた。
「王都に来たのって初めてだけどすごいな~」
「本当ね。あ、綺麗なアクセサリー発見!!」
「お~い、二人とも、はしゃぐのもほどほどにしておけよ」
「わかってるわよ。あ、あっちのも!」
ほんとにわかってるのだろうか。
「ねえ、カイト、港の方に行ってみない?」
「そうだな。まずはいろいろ見て回るか」
そう、言って港へ向かった。
「なんか予想してたより寂れてない?」
「おかしいですね」
「あ、そうか」
「え、なに」
「グランドクエストだ」
「ああ、そういうことか」
グランドクエスト。この世界にいる全ての人が等しく受けているクエスト。
「確か、塔の攻略だったっけ」
この大陸には塔の最上階にいる魔王によって特殊な結界がはられていてその結界から外には出れなくなっているのだ。
「結界があるから寂れてるのね」
「あとはたぶんギルドの奴らが塔に行ってるからだろうな」
アリアたちは今も戦っているんだろうな。
「そういえば今何層まで攻略されてたっけ?」
ティアが言った。
「確か今は998層だったと思います。王依頼のおかげでかなり早いペースで進んでいるみたいですし」
「どうする?」
「そうですね。ここで数日過ごして塔に行くのも手ですね」
そのとき白い騎士服を着た男に声をかけられた。
「その、黒いコート、もしかしてあなたはカイトか?」
「そうだがアンタは?」
「私はケイン。悠久の風というギルドの一員です」
悠久の風。確かアリアのギルドのはずだ。
「俺になんのようだ?」
「アリア様から、あなたが来たら渡すように命じられていたものがあります」
そう言って黄金に輝く結晶を渡してきた。
「大転石!?」
リーナが結晶を見た途端驚いた。
「リーナなんなんだこれは」
「大転石ですよ!、転移石の強化版で普通一人しか移動できない転移を複数人で出きるようにしたものです。かなり高額でほとんど持ってる人なんていないんですよ!」
「そんな、高いアイテムを俺に!?」
「はい、アリア様から、言われておりましたので。では、それでは」
ケインはそう言って去っていった。
「で、それ、どこに出口設定してあるの?」
ユイがそう言ったので、アイテムで確認してみる。
「999層の街メガロアンセミアだって」
「!?」
「まさか。もう、そんなところに!?」
「早いわね。ってことは十二騎士勢ぞろいってことか」
ティアが言った。
「で、どうするんですか?」
「俺は行こうと思う」
「そうですか、なら、いろいろ準備しないといけませんね」
「リーナも、来るつもりなのか!?」
「当たり前ですよ、ここまで来たら最後まで一緒に行きます」
「そうだ、カイト、釣りだ!!」
「まったく関係ないな」
「そうよ、私も行くわよ」
ユイも行く気満々だ。
「もちろん私も行くわよ」
「姫様が行くなら僕も行きます」
「私はもう、姫じゃ、ないわよ」
と、ティアとコペイも言った。
「わかった、なら、準備が出来次第、行こう」
みんな頷いて準備に行った。
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一時間後。広場の女神像の前にみんな集合した。
「みんな、準備はできたようだな」
「はい」
「もちろんよ」
「あたりまえだ」
「もち」
「はい、もちろんです」
みんなの顔を一度見て。
「じゃあ、行こう」
大転石を地面に叩きつける。ゆっくりと輝く門が現れた。
俺たちは999層の街メガロアンセミアへと移動した。