第二十三話 サラマンダーの里と魔剣の力
「なんでこんな状況になった」
「わかるわけないでしょ」
俺と姫様は現在サラマンダーに囲まれていた。
なぜこうなったかというとそれは少し前にさかのぼる。
回想開始。
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「死ぬかと思った」
「あははは。楽しかったじゃない」
「死に掛けたけどな」
姫様と空中散歩という名の落下をさせられて現在どこかの屋根の上。姫様はもう完全に本性をだしている。
「そうね、ちょっとやりすぎたわ、ごめんなさい」
「いや、死んでないからいいけど。そういや、名前言ってなかったな、俺はカイト」
「そういえば人の名乗るのって久しぶりね。私はティアよ」
「ティアかいい名前だな」
「!?」
ティアの顔が真っ赤になった。
「おい、真っ赤だけど大丈夫か?」
「え?、あ、うん、大丈夫」
「そうか、さてと、で、どうするんです、お姫様」
「ねえ、怒ってる?」
「いや、まったく」
「怒ってるでしょ。謝ったじゃん」
「冗談だ、冗談」
「もう、そうね、とりあえずこのままサラマンダーの里にいきましょ」
「仲間に何か言っていいか?」
「出来れば内密にして、あなた一人で行かないと意味ないからね」
「そうか、ならやめておくか」
あとが怖そうだが。トミーは釣りしてるからいいけど。
「じゃあ、行きましょうか」
「ああ」
そのまま屋根伝いに街を抜け出しサラマンダーの里に向かった。
アヴァロン島は四つの種族がそれぞれ里を作って生活をしている。首都は中立地帯もような場所らしい。もしくは沖縄と東京みたいな関係だ。これであってるのか?
一時間でサラマンダーの里についた。
「さて、で、どうするんだ」
「まずはばれないように入ってリーダーのところに行くわ」
「じゃあ、行くか」
行こうとした瞬間
「動くな」
見るとサラマンダーの一団に囲まれていた。
てなわけで回想終了、最初の場面に戻る。
「姫様がこのようなところにくるなんて光栄ですな」
一際えらそうな男が前に出てきて言った。
「アーデルバイト」
どうやらこのえらそうな男がサラマンダーのリーダーのようだ。
「さて、姫様私の要求はわかっていますな」
「ええ、十分承知してるわ」
「そうですか、ならひ弱なシルフの姫さま、早くしてください」
「そうね、この人に勝てたらいいわよ」
ティアが俺を指差した。
「こんな小僧に任せるなどシルフはよっぽど人員不足と見える。だが、いいだろう。我ら全員に勝てたら諦めよう」
「いいだろう」
まじかよ
「おい、ティア!」
「すまない、頑張ってくれ」
ティアが離れていく。
それと同時にサラマンダーの一団が一斉に襲いかかって来た。
「クソ!」
俺は逃げまくった。数が違いすぎる。剣一本で太刀打ち出来る量をゆうに超えている。
「クソ!」
ドクン
「!?」
魔剣が脈動した。魔剣の刀身に闇が渦巻く。
「これは」
「おおおおおおおおおお!!」
サラマンダーの男が襲う。剣を振る。それについて闇が鞭のようにしなりサラマンダーの男を斬った。
「なるほど、これが魔剣の力。なら!。なぎ払うまで!!」
迫り来るサラマンダーのプレイヤーに剣を向ける。
「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「すごい」
それは圧倒的としかいいようがなかった。魔剣の動きにあわせてしなる闇は自由自在に操れた。闇は襲い来るサラマンダーを全て切り伏せた。
残ったのはアーデルバイトのみ。
「なるほど、魔剣ですか。確かにすごいですね」
「さあ、どうするの。負けを認めるの?」
「ご冗談を、私が倒してやろう」
アーデルバイトが前に出る。巨大な斧を持っている。
「行きますよ」
アーデルバイトが巨大な斧を振り下ろす。それを避け剣を振り下ろそうとする。
しかし。
「がっ!」
いきなり砂が目に入りしかいがふさがれた。
「アーデルバイト!、あんた!」
「勝つためならなんでもしますよ。砂を投げたりもね」
気配でアーデルバイトが迫ってきているのがわかる。でたらめに剣を振る。
「さすが魔剣、この闇のおかげで近づけませんね」
この間に視力を回復させる。
「よし、見える」
「なら、これはどうですか?」
アーデルバイトはそう言うと近くに倒れていた斧を持ったサラマンダーの少年を掴んで、投げつけてきた。
「な!」
あわてて受け止めるがその隙にアーデルバイトが懐に入ってきた。
「ほ~ら、これは避けられないでしょう」
斧が顔面に迫る。とっさにバックステップで間合いの外にとんだ。
「それも読んでいるのですよ」
短剣が腹に刺さる。アーデルバイトが投擲したものだ。
「がっ!」
刺さっても血は出ないが痛みはある。
「ほらほら、次行きますよ」
また、仲間を投げつけて来た。 仕方なく避ける。
「貴様、仲間をなんだと思っているんだ」
「何を怒っている、これはゲームだ。なにをしてもいいだろう」
「あんたね!」
「もういい」
コイツにはなにを言っても無駄だろう。
「なら徹底的に叩き潰す」
アーデルバイトめがけて疾駆する。
「血迷ったか。炎を喰らえ」
炎の龍が迫る。だが、俺はいたって冷静だった。
「邪魔だ。消えろ」
魔剣を振る。それだけで炎の龍は消えてしまう。
「な、なんだ、それは!?」
アーデルバイトがあわてている。
闇は巨大な大剣を形作る。
「わ、私の方が王にふさわしい!、ここで負けるはずがないのだ!!」
アーデルバイトが斧を振り下ろしてくるが楽に避けられる。
「そんなだから王になれないんだろうよ、アーデルバイト」
俺は躊躇いなく闇の大剣を振り下ろした。アーデルバイトは光の粒子となり消えた。
「カイト」
「ああ、ティア終わったよ」
「ええ、ありがとう。それにしても大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「よかった。じゃあ、帰りましょうここにいても意味はないから」
「そうだな」
サラマンダーの里を出ようとしたとき。
「待ってください」
最初にアーデルバイトに投げられたサラマンダーの少年が言った。
「なに?」
「あの、ありがとうございます姫様。アーデルバイトを倒してくれて」
「お礼なら彼に言って」
「はい」
少年はこっちを向いていった。
「あの、助けてくれて。ありがとうございました」
「いいさ、別にな」
「じゃあ、私たちは帰るわ」
「あ、僕も行きます、謝罪をしたいんです。今動けるの僕しかいないみたいですし」
「ええ、いいわよ」
俺たちはサラマンダーの里をあとにした。
サークリアに着いたときには日が暮れていた。
「すっかり暗くなったわね」
「そうですね」
「さて、カイト、今日はありがとう」
「いいよ、別に」
「明日までだ。この島別にモンスターもいないからな」
アヴァロン島にはモンスターが出現しない珍しい地域なのだ。
「そっか。じゃあ、またね」
「ああ、てか、まあ、いつ会えるかはわからないがな」
「それなら大丈夫」
「?」
「じゃあ、ね」
ティアたちと別れて俺は宿屋に向かった。リーナとユイにこっぴどく怒られたのは言うまでもない。その機嫌は一日たっても元に戻らなかった。
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「さて、そろそろ、出発するか」
「そうだな。ここで釣れる魚は全部釣ったからな」
トミーはこの短い間にこの島の全ての魚を釣ってしまっていたらしい。暇な奴だな。
来たときと同じようにウンディーネの虹の橋で戻る。
「さて、こんどは西だな」
「王都ですね」
「王都ってなにがあるのかしら」
「王都と言えば港、そして海、と言ったら釣りしかない!!」
「面白そうね」
「ですね」
ん、二人多くないか。
「じゃっじゃ~ん」
なんと、ティアとサラマンダーの少年がいた。
「ティア!、なんでこんなところに」
「うん、カイトたちと一緒に行きたくて待ち伏せしてた」
「仕事はどうすんだよ」
「やめてきたから大丈夫!!、この子も行きたいみたいだったし」
「はい!」
「はあ~、どうせ、追い返しても着いてくるんだろ」
「もち」
「なら、勝手にしろ」
「じゃあ、勝手にする」
「よろしくおねがいします、あ、そうそう、僕の名前はコペイです」
こうして、おてんばな元姫様と礼儀正しいサラマンダーが仲間になったのだった。