出会い
滅多にする事が無い散歩をしていた。
珍しく体調も良く、俺を監視する奴らも居ない事からふらっと裏手から家を出て人気の無い道を歩いていると、美しい存在に出会った。
男か女かも、人間なのかすら分からない、とにかく美しい存在だった。
その存在は俺の前で変な事を言って、俺に「何でも願いが叶う上に叶う度に寿命が伸びる力」なんてものを授けたと言う。
どうやら一部叶えられない願いがあるらしく、正直その時点で「何でも」ではないじゃないかと思った。
けれどいくつかの制約を確認した後に、そいつの願いを俺の願いとして願ったら、死んだ。
死を望んだらその存在が目の前で死んだんだ。
嘘だろ、と思った。
そして同時に、目の前に横たわる死に動揺し、俺は咄嗟に「この死体を消してくれ」と願った。
……ああ、願いを叶える力というのは本当だったんだ。
「は、ははっ…!」
俺は笑った。
昔からあまり外に出る事が出来ない俺を「女のようだ」と笑った親戚連中を!近所に住む俺を馬鹿にする糞ガキたちを!どうにでも出来る力を手に入れたんだ!
母を「出来損ないの胎の嫁」と罵倒した奴らも、「外に出ないからそこらの女より色が白い」と言いながら俺を無理矢理襲った奴らも、何もかも……どいつもこいつも、消し去る事が出来るんだ…!
あの存在が言っていた制約はいくつかあった。
一、願いの取り消しは出来ない
二、時を進めたり戻したりする事は出来ない
三、自らの死は願えない
四、死者を生者に戻す事は出来ない
それと、「把握していないだけで他にもあるかもしれない」とも。
けれど把握しているこの四点以外は大抵の願いは叶える事が出来たらしい。
なんて素晴らしい力なんだ……とはいえ、俺もまだこの力を手に入れたばかりだ。
本当に何でも願いが叶うのか確認しなくては。
一先ず、この力で自分の体を何とかしてみよう。幼い頃から体が弱く、流行り病にはすぐ罹り幾度も死の淵を彷徨ったこの体を、丈夫な体に。走る事も出来、重たい物を持てる体に。
「……!」
体が軽くなったのを感じた。
ずっと付き合って生きてきた息苦しさも何もかも、元より無かったように呼吸が出来る。
……ああ、あの存在は神だったのかもしれない。
けれどこんなに素晴らしい力を授けてくれた存在は何故、死を望んだのだろう。
「飽きてしまったから」と言っていたけれど、本当にそうなのだろうか。
俺にはそれが真実かどうかは分からない。
だが、願いを叶える力というのが真実だという事だけが、昔から引き篭って生きてきた俺に、一筋の光を指し示したのだった。




