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16.陽キャ集団に突撃するのは私的にハードルが高いんですが


「おーい肉足りねえってぇ!」

「買い出し班は!? おっせえなあいつら!」

「生肉うめぇ~w」

「やば、お前もっと焼けってw」

「大丈夫だっておれ腹クソ丈夫だからw」

「あの~」

「クソなのはお前が前に腹壊して垂れ流してたやつだろw」

「そうだったわガハハw」

「きったね」

「ていうかお前らなんか臭くね」

「あ、あの~……」

「うわガチじゃんシャワー浴びて来いって」

「水魔石あったっけ?」

「このまえボコったやつがだいぶ持ってただろ。使えば?」

「ひゅ~探索者様々じゃんw」

「いや俺らも探索者だしw」

「そうだったわw 探索とか全然やってないから忘れてたわw」

「……あのぅ……」

「……なんかさっきから聞こえね?」

「あー、なんかうるせって思ってたけど気のせいじゃなかったか」

「いやうるさいのは俺らだわw」

「わかるw お前うるさすぎw」

「お前もなw」

「またカモがやって来たんだろ。……あれ? 誰もいねえ」


「あっ、こっちです……」


「は?」


「ひぃっ」


 十数人の男の人がやっとこちらを振り返る。

 うう、さっきからずっと呼んでたのに……!


「お前、なんでそっちから来たわけ……? っつかどうやって」


「あ、一度第三層の入り口から入って二層に引き返してきました……」


 キャンパーは第二層の最奥にいる。

 馬鹿正直にそこまで順番に降りていくのは時間がかかるので、第三層にジャンプしたというわけだ。

 私はすでに二層のボスを倒しているのでその条件を満たしている。


 私が少なくとも三層以降を探索するに値する強さがあると気づいたらしい。

 キャンパーたちにわずかな緊張が走り、ゆっくりと立ち上がった。


「んで、あんたはどうしてわざわざこんなところに来たんだ?」


 彫りの深い顔をした、坊主頭にそり込みをした男が話しかけてくる。

 集団の中心にいることから考えると、この人がリーダー格なんだと思う。


「あなたたちを立ち退きさせる緊急クエストが発令されました」


 そう申告してやると、キャンパーたちはざわざわと顔を見合わせて話し始める。

 緊急クエストは、さすがに笑い飛ばせるような事例ではない。


「へえ、そうかい。それで?」


 だがリーダーの男は怯まない。ニヤニヤとした笑みを浮かべてすらいる。

 だめかー……。これで諦めてくれれば良かったんだけど。

 

 こんな緊急クエストが出た時点で本当はさっさと逃げるべきだ。

 仮にここで私を退けたとしても、事態がさらに急を要してもっと強い探索者が派遣される可能性もある。

 

 だけど、そんな理屈で止めるくらいなら最初からキャンパーなんてやってないだろう。

 この人たちは、やりたいからやっている。

 人を食い物にして甘い汁をすすりたいからやっている。

 それだけのことだ。


「おいリーダーまずいって。こいつナビで見たけどレベル高すぎ。俺らで太刀打ちできるかどうか」


「ビビってんの?」


 その一声でキャンパーたちが鎮まり返る。

 ……うん、確かにこのリーダーだけ他の人より一回りレベルが高い。 

 誰も逆らえないんだろう。


「俺たちは今まで格上の探索者にも立ち向かって勝って来ただろうがよ。自分たちの力を信じなくてどうすんだ? 戦いってのは数だって、俺らが一番知ってるだろうがよ」


「そうだよな……」「俺ら最強だもんな」「あの子前髪とフードで隠れてるけどよく見たら可愛くね?」「身ぐるみ剥いじゃおうぜ!」「うおおおおおお!」 


「ひええ……」


 すごい盛り上がってるしなんかちょいちょい怖いこと言ってる!

 結局私みたいなコミュ障じゃあ言葉で平和的に解決するなんて無理だったんだ……。

 

「……まあ、でも良かったかな」 


「あ?」


 刀を抜く。

 フードを深くかぶり直し、息を吐く。

 覚悟を決める。


「私は個人的に依頼を受けててさ。君たちにやられて大怪我したっていう人の妹さんが懲らしめてほしがってるんだ」


「は? 知らねえよ。お前ら覚えてる?」


 キャンパーたちは揃って首を横に振る。

 でしょうね。

 でも、躊躇いは無くなった。


「うん、じゃあ……そろそろやろう。殺しはしないから安心してね」


 キャンパーたちがめいめい武器を抜く。

 多勢に無勢。

 面倒だけど、問題は無い。


「え……?」


 キャンパーの一人、ソフトモヒカンの男が音も無く倒れる。

 驚くことじゃない。集団の中に一瞬で踏み込んで峰打ちしただけだから。

 だがその事態は私を取り囲むキャンパーたちを恐慌状態に陥らせた。


「お前ら……はやくそいつを殺せえええっ!」


 リーダーが裏返った声で叫ぶ。

 数は力――確かにそうかもしれないけど限度はある。

 人間を何人も集めたところでブルドーザー一機には勝てないんだから。


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