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13.コミュ障なんで急に話しかけるのマジ勘弁


 気だるい午後。

 この日最後の授業を控えた休み時間に、それは起こった。


「あ、あの~御影さん?」


「…………えっ、はいっ!?」


 頬杖をついてぼーっと空中を眺めていると、クラスの女子二人が話しかけてきた。

 大人しそうな子と活発そうな子の組み合わせだ。


 え、なに? 私なんかしたっけ?

 突然の非日常に心臓が早鐘を打つ。ここまで動揺したのは第四層で火に巻かれながら大量発生したマグマスラッグの大群と戦った時以来だ。


「最近ヒマちゃんねるによく出てるよね?」


「あっ、スゥー……そう、だけど……」 


 やばい、声が上手く出ない。

 助けてリリカ……ヒマリ……と心の中で届かない救援要請を送っていると、活発そうな子が大人しそうな子の背中を軽く叩いて「ほら、頑張りなよ」なんて励ましている。


 ますます何の話なんだろう。

 びくびく怯えながら待っていると、大人しそうな子が深呼吸をして、口を開いた。


「あのっ、私じつは御影さんのこと前から気になってて……! 良かったら握手してくれないかな?」


「えっあっ、それくらいなら……いいけど……」


「ほんとに? やった」


 喜色満面といった勢いで差し出してくる手をおずおずと握る。

 やばい、手汗大丈夫かな……なんて心配しているといつの間にか手は離れ、「きゃー」とかなんとか言いながら二人は去って行った。


 なんだったんだ……気になってた? 

 それも前から? 私何かしたっけ……。


「はあ……なんかどっと疲れた」 


 今の数分だけでHPが根こそぎ吹っ飛んだ気分だ。

 あと緊張しすぎて尿意が……。


「トイレ行こう……」


 椅子から立ち上がると背中がひやりとした。

 汗かき過ぎでしょ。


 廊下を早足で歩く。

 休み時間はそんなに残っていないし、少しは急がないと。

 あ、ちなみに私はひとりでトイレに行く派です。

 派っていうか、一緒に行く人が居ないっていうか……。


「さっきの子が友達になってくれればよかったのに……」


 自分から申し出るという発想には至らないまま、トイレ目指して歩いていると、曲がり角から小さな影が目の前に飛び出した。


「わっ」


 ダンジョン探索で鍛えた反射神経で踏みとどまり、衝突は避けた。

 黒髪おかっぱ頭の女の子だ。幼く見えるものの切れ長の目からは和風美人の素質が感じられる。

 手に提げた紫色の巾着もそう思わせる要因かもしれない。


 一年生だろうか。

 でもどうしてわざわざこの階に?

 

「あの、御影ユウ様で間違いありませんでしょうか」


 静かで良く通る声。

 かしこまった口調で話しかけられる経験が無くてどぎまぎしてしまう。

 いつもどぎまぎしてるだろというツッコミはやめてください。


「う、うん。君は……?」


「相楽アヤメと申します。此度はあなた様にぜひお頼み申し上げたいことがございまして……」


「そ、そうなんだ。ごめん、後でいい? 私ちょっと今取り込んでて」 


 トイレに行きたいのだ、私は。

 なんとなく長い話になりそうな気配を察知して、私は相楽さんの隣を通り抜けようとする。

 

「お待ちください」


 がっとスカートの端を掴まれる。

 

「ちょっと! 見えるから! 離して!」


「どうしても聞いていただきたい話があるのです」


「わかったから! 後で聞くから! お願いだからスカートは止めてぇ!」


「そう言ってなあなあにしてしまうお方を何人も知っているのです。今、まさに今! お聞きくださいませ!」


 うわあこの子人の話全然聞かない!

 このままだと漏らす! 本気で!


「だから……トイレに行かせてーーーーーっ!!」


 生徒たちが行き交う休み時間の廊下で。

 私はそんなふうに叫び、何とかおもらしを回避したのだった。


 …………別の尊厳はすり減ってしまったような気がするけれど。


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