圧倒的強者
仮面の女が、私の目の前に立っていた。
「えっと…襲撃者?」
そう言うと、仮面の女はズコッとコケる。
「私別に襲撃者じゃないから!アンタの姉貴と兄貴と先生の上司だから!」
あ!そういえば、お姉ちゃんが上司が変な人だって言ってた気がする。なるほど。確かに変な人だ。
「めっちゃ失礼なこと考えてない⁉」
「考えてないです。」
そんな話をしていると、天狐が恐怖と驚愕が混ざったような声で言う。
「お前は、空狐が相手をしていたはず…」
「あぁ、あの空飛ぶ狐ね。これのこと?」
お姉ちゃんの上司の人は、片手に持っていたソレを天狐に投げ渡す。
「空弧!?」
ボロボロになったソレをキャッチした天狐は驚きの声を上げた。
「死んでないから大丈夫。まぁ、死ぬ直前まではいってるけど。」
上司さん(仮名)は仮面の奥で天狐を嘲笑する。
「あ、あぁ…あ…」
「んじゃ、いくよ?」
上司さんはクルクルと回る。
「ローリング・パーんち!」
ドカーン!と、恐ろしい打撃音が鳴り、天狐は飛んで行った。
「一件落着!」
そんなこんなで、私達は襲撃を乗り切った。上司さんが来ていなかったら恐らく全滅していたが、そんなことは無かったし、犠牲が出なかったことを喜ぼう。
「助かりました上司さん。ありがとうございます。」
「どーいたしまして。」
「上司さんって何よ?」
アカリ少し不機嫌になってそう聞いてきた。
「お姉ちゃん達の上司だから上司さん。変なこと言った?」
「それは分かるわよ!何でそんな名前で呼んでんのって話!」
「?」
別に誰をどう呼んだって私の勝手だろう。まぁアカリが嫌ならやめるが、何でそんなに怒っているのかが分からない。
「あれれー?アカリちゃん、私に嫉妬かなー?」
そんなことを考えていると、仮面の人(仮名)がなぜかアカリを煽りだす。そんな煽ってばっかじゃ嫌われると思うのだが、私の勘違いだろうか?
「はぁぁあぁあああ⁉そんなんじゃないし‼ただちょっと気になっただけだし‼」
アカリも乗せられるな。何なのこの二人。微妙に似てるんだけど。姉妹か何か?
「よぉぉし!アンタのその変な仮面剥ぎっとてやるわ!」
「変じゃないから!かっこいいでしょ!狼だよ!」
仮面の人が姉、アカリが妹だなこりゃ。楽しそうで何よりだが、そんな暇があるならクラスメイト達の治療を手伝ってほしい。
「大丈夫か!」
そんなことをやっていると、お姉ちゃんとお兄ちゃんが駆けつけてきた。
「大丈夫だよ。仮面の人が来たから。」
「仮面ライダーかよ!」
言われてみればそうだ。よし、名称は仮面ライダーにしよう。
「リヒトは本当に状況を把握するのが上手いな。いつも助かっている。」
「リヒト?」
「あの人の名前だ。本名は違うらしいが、こう呼べと言われた。」
リヒトか…なんかで聞いたことあるような…
「ま、あんまり深くは考えない方がいい。リヒト程の権力と実力があれば私達なんて一晩で消える。」
こわ!
「そこ!変な事ユキナに教えない!」
「なんでアンタがユキナを呼び捨てにするわけ⁉」
リヒトさんはアカリの猛攻を軽く躱しながらお姉ちゃんを注意した。
「こいつ等の治療は終わったぞ。取りあえず全員、命に別状はない。」
それは良かった。全く知らない人じゃないし、死んじゃったらちょっとは悲しい。
「じゃ、私達は次の仕事があるから。またね、ユキナ!」
そう言って、お姉ちゃん達はどこかに行ってしまった。
「何でアイツあんなにユキナに馴れ馴れしいのかしら…?」
「何でだろうね?」
そんな話をしていると、教師たちが来た。ひとまず、危険は去ったようだ。