完璧な一撃
「遅かったな。こっちは準備完了だぜ!」
クロの声で、私は勝利を確信する。価値確定BGMが、今頃流れているだろう。
「おーけー!やっちゃえ!」
『行くぞー!』
いっせーのーで声を上げて、クラスメイト達は作戦を実行する。
『憑依』
数時間前の作戦会議にて、私の知らない新情報がばんばん出てきた。
例えば、憑依霊を憑けられる数は、必ずしも一人ではないということ。例えば、憑依の回復速度は、人によって違うこと。他にも様々な情報があった。
その中で私が注目したのは「鬼の知力は基本的に人間より低い」ということ。例え話が出来ようが、知力という面において、鬼が人間に勝てることは殆どない。
今回の作戦はそれを利用し、鬼は知らない「戦略」。「数」と「連携」で勝負をすることにしたのだ。
「第1フェーズ、行けトワ!」
クロの指示で、トワが天狐の前に出る。トワの能力「遅延」にて天狐の動きが鈍った。そこに数人の対人が得意なクラスメイトが同時に攻撃を仕掛ける。見事な連携で爆発を躱しながら天狐の動きを翻弄し、体育館の中心へと誘導した。
「第二フェーズ、全員突っ込め!」
二回目のクロの指示と同時、クラスメイト達が一斉に天狐に攻撃を仕掛ける。ここで私の出番だ。
「くそ、ざこのくせに…じゃまだ!」
天狐は狂った感覚など気にせず、無造作に爆発を起こす。
「それを待ってたんだ。」
天狐を中心に全方向に結界を展開する。すぐに消えてしまうが、天狐も爆発を一気に起こしたため、全て吸収できた。
「な…⁉」
天狐は一瞬動揺した。その隙を見逃すわけもなく、最大火力をぶつけに行く。
私とアカリは一瞬で天狐との距離を詰め、刀・剣を振り抜く。
──ガキンッ──
隙を突いた完璧な一撃…の、はずだった。しかし、天狐は防いで見せた。9本に増えた尻尾で。
「みとめてやる。お前等は「ざこ」じゃねぇ「じゃくしゃ」だ。」
ズーンと、立っているのがやっとな程の重圧が私達を襲う。
「ここからは本気で行く。あっちの力、見せてやる。」
ビュンッと、何かが通り過ぎた音がした。私達は何が起きたのかも理解できずに、その場に倒れる。
「この場で、意識を保っているのはお前等だけだ。」
呂律の良くなった声で、天狐は告げる。
「殆ど死んじゃいないが、時間の問題だろうな。」
やばい…動けない…
「あの雑魚共は脅威でもなんでもねぇ。優先すべきは…お前等だけだ。」
動け!動け!動け!
「まずは白髪の方から───」
そう言い、天狐はいつの間にか手に持っていたバットを私に向けて振り下ろした。
死んだ。そう思った瞬間。また何か、が私の目の前に現れた。
「セーフ!間に合った!」
仮面を付けた女が、人差し指でバットを止めていた。
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