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憑依とお祝い事

 家に帰ると、祭りでもするのかというレベルで準備が行われていた。


 「準備にあと一時間くらいかかるらしいから、色々試してきな。」


 お兄ちゃんがそういうので、私達は特訓ルームに向かった。


 「ユキナの家はこういうのあっていいわよねー。うちは見た目とか雰囲気とか気にするからこういうのないのよね。」


 「流石に、庭園の真横に作るのはどうかと思うけどね。」


 特訓ルームに着くと、私たちは準備運動を始める。


 「憑依ってどんなだっけ?」


 「今更聞くの?」


 アカリが大分呆れた顔で言う。


 「先延ばしにし続けた末、この十五年間一度もその手の勉強はしてないからね。」


 「こういうの真面目にやらないと、後で苦労するわよ…。

  憑依ってのは文字通り、霊を憑依させること。憑依にも段階があって、最初が憑依霊の能力を武器として現す「顕現」。これがランク1と呼ばれる段階ね。ランク2はさらに憑依霊の能力が装備にもなり、ランク1では黒い靄がかかっていた武器の靄が晴れる。これがランク2の「武装」。そして、ランク3「解放」。これは人によって全く異なる変化が起こり、その人の心に合わせて最適化される──って言われてるけど、ぶっちゃけよく分かってないらしいわ。」


 頭ごちゃごちゃする。とりあえず、今はランク1の「顕現」だけ覚えとけばいいか。


 「早速やってみましょ。憑依!」


 ぶふぉっと黒い光が周りを走る。アカリの手には真っ黒の武器?が握られていて、黒いマントを羽織っている。


 「一発成功じゃんすごーい。」


 「意外とできるものなのね…ユキナも早くやりましょ!」


 憑依を初見で成功させる人って全体の一割未満らしいんだけど、私に出来るかな…とも思うが、とりあえずやってみることにした。


 「憑依」


 一瞬の静寂。その後、私の周りに黒い光が走った。


 「できたよ…」


 黒い刀?っぽいのが出てきた。結構重い。


 『んー?なんか憑依してる。』


 憑依するとベルゼと脳内で喋れるのか。


 「やっぱり私たちは天才ね!一発で憑依できる人なんてあんまりいないわ!」


 アカリは嬉しそうにアホ毛を揺らして言う。


 「意外といなかった?お姉ちゃんとか、お兄ちゃんとか。」


 「一般的な話よ!早速勝負してみましょう!」


 アカリが武器を構えたので、私も刀を構える。


 「よーい、ドンっ!」


 私の刀とアカリの剣がぶつかり、どかっ、どかっ、と音が鳴った。


 「刀って使いずらいね。」

 

 私は刀を棍棒みたいに振りながら言った。


 「剣は普段から練習してるけど刀は使ったことないものね。」


 本当に使いずらい。重いし。

 私とアカリは幼少期から剣を学んできたが、刀は触ったことがない。当然、だんだんとアカリが優勢になっていった。


 「やぁっ、はぁっ!」


 調子が上がってきたアカリはガンガン攻めてくる。


 きっっっっつ!

 マジでヤバイ。フェイントを混ぜたり切り方を変えたりして色々試しているが、中々掴めない。


 そんなことを考えているとアカリが私の刀が打ち上げた。


 「今日は私の勝ちね!」


 「…負けたー。」


 一つだけ言い訳させてほしい。なんやねんこの鈍らぁ。


 「準備できたぞー。ってもう憑依できたのか。流石だな。」


 特訓ルームにお兄ちゃんが入ってきた。

 私は三人兄弟で、お姉ちゃん→お兄ちゃん→私の順で生まれた。脳筋のお姉ちゃんと違い、お兄ちゃんは頭脳派で、すごく頭がいい。勉強はほとんどお兄ちゃんに教えてもらっている。超スパルタだけど。


 

 準備ができたそうなので広場に行くと、たくさんの料理が並べられていて、ウチとアカリの家の人がたくさんいた。


 「美味しそう。」


 思わずよだれがじゅるっと出てしまう。


 「汚いぞユキナ。それでも貴族か?」


 お兄ちゃんが嫌そうな顔をしながら言う。


 「うるさい。おいしそうな料理が悪い。」


 「やっと来たか。」


 お姉ちゃんがお酒を持ってきた。


 「今日の主役はお前らなんだ、前に来い。」


 お姉ちゃんは私達を連れて前の方に出て行った。


 「ほらっかんぱいだ。」


 お姉ちゃんが小声で言ってくる。

 

 『せーの、かんぱーい!』


 『かんぱーい!』


 私達は初めてのお酒を飲む。


 「にがっっ。」


 「だろうな。ほらっジュース持ってきたぞ。」


 お兄ちゃんに渡されたそれを、私は一気に飲み干した。

 喉の奥でじゅわっと、弾ける感じがする。痛い。


 「これ炭酸じゃん!喉痛くなるでしょ!」


 「引っかかったな。今度こそジュースだ。」


 私はしっかり確認してからそれを飲む。リンゴジュースだった。口に甘味が広がる。


 「ふー。」


 「何してんの…?」


 一部始終を見ていたアカリが、ジト目で私を見ていた。

 悪いのはお兄ちゃんであって、私がそんな目で見られることはないと思うんですが?


 「そういうアカリは、お酒苦くないの?」


 「苦くないわよ。そんなことより、ご飯食べましょ!」


 アカリは私の腕を引っ張り、料理があるテーブルに向かった。


 「何から食べようか。」


 考えていると、アカリが私の口にスプーンを突っ込んだ。ひき肉と豆腐が混ざり、舌にピリッとした感じが伝わる。

 

 「麻婆豆腐よっ!好きでしょ?」

 

 「好きだけどさー、急に突っ込まれるとびっくりするでしょ。」


 私は仕返しに目の前にあった唐揚げをアカリの口に突っ込む。


 「あっっふ!はっはひふるの!」


 アカリが口をホフホフさせて。


 「人の口にご飯を突っ込んでいいのは突っ込まれる覚悟がある奴だけだよ?」


 「何それ!」


 唐揚げを飲み込んだアカリがツッコミを入れる。


 「さっきのでノーカンだし、ご飯食べよ。」


 その後、私達はパーティーを楽しんだ。


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