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episode90〜阻害〜


王宮へと帰った後、軽く昼食を取ることにしたアルネ達。


(軽く? これが?)


ここだけ切り取って見た者ならば、確かにそう思うであろう。


そこに並べられていたのは、昼食とは到底言えるようなメニューではなかった。

そして驚くべきは、その量だ。


ヴィカが、事前に料理人達に伝えていた適切な量だ。


それを美味しそうに頬張るアルネ。


「やっぱり宮廷の料理人は最高ね! はぁ、こんなにも美味しいものを、幼い頃から食べてたなんて… っごく。ルクナは本当幸せ者ね!」


「あぁ… うん、そうね。でもそれ、さっきの ’露店のご主人’ に対しても、同じようなことを言っていなかった?」


「え? うん! 同じくらい美味しい! 素晴らしい!」


「いや、そうではなくて… 」


先程、アルネの空腹は限界値を超え、ここに到着するまでに、王都の露店へと手を伸ばしていた。


香ばしい匂いという、誘惑に負けていたのだ。

もちろん、ルクナから出るお金で。


アルネの言う通り、全く同じ表情にて、食事を頬張っていた。


その姿にルクナは呆れつつも、笑みを溢す。


「ルクナは午後、予定があるのよね?」


「そうよ? たんまりと溜まった公務がね。はぁぁあ… 憂鬱」


(それ、ここで言って大丈夫?)


「ねぇ? 一度着替えなきゃダメかしら?」


そうため息を吐きながら、華麗に顎に手を置き側近へと視線を飛ばす。


「当たり前です。それが本来の、この国の、殿下で在らせられる、お姿ですから」


そう言うのは、少しばかりの休暇から戻って来たばかりの、側近ヴィカであった。


休暇と言っても、弟の事が気掛かりで王宮地下へと行ったりしていたのだ。

根っからの仕事人間である。


そんなヴィカに喰いかかるルクナ。


「あら? 本来の姿って何? これが本来の姿かもしれないじゃない」


「ご冗談を。それはあり得ませんね、断じて」


その言葉に、アルネも大いに頷いた。


しかしその視線は、食事の方を向いている。


「2人して! … っはぁ、早く公務を終わらして、隣国にも行かなきゃいけないのに!」


「ルクナ様、その件ですがその ’目的’ 以外の公務もついでに担ってもらいますので、お忘れなきよう」


「キィー!」


「っぷ… 」


アルネはついに吹き出してしまった。


ケラケラと笑うアルネに、人差し指をこめかみに捩じ込むルクナ。

その様子を見ながら、更に呆れる側近であった。


(むしろ、そっちの方が本務と思って欲しいくらいですが… )


そんな殿下と側近のすれ違う想いに、アルネは何故か愛情を感じていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


昼食後、公務へと向かったルクナと別れたアルネ。


その足は、ある場所へと向かっていた。


(ルクナには、明日行こうって言われてるけど… まぁ気になるわよねぇ)


その場所は王都にある、地下道に近い裏通りにあった。


先程、話を聞いた貴族から便りが届いた事を知ったアルネは、半ば無理矢理、その従者から聞き出していたのだ。


『どうせ、午後は私の事監視しろとか言われてるんでしょ!? なら、一緒について来てよ! ネネちゃん』


彼の表情は、いつも通り迷惑を隠しきれずにいた。

不幸な事に、見つかり、捕まり、更には行動までも読まれていたのだ。


(俺に与えられた任務は、アルネ様を御守りする事… 言うなとは… 言われていない。それに、妙な危害を被られるのは避けたい)


そう思いながら、ネネルトはその見た目とは裏腹な腕力に、引きずられながら、口を開いた。


そして今、2人はその裏路地へと来ていた。

先程、貴婦人が黒い羽根を目撃した場所だ。


その場所は、昼間にも関わらず、薄暗かった。


「ここね。確かに何かが出てもおかしくない雰囲気が漂っているわね」


そう言いながら、アルネは辺りの臭いを嗅ぎ始めた。


(犬… )


ネネルトは、アルネを監視しながら息を殺していた。


「カビの臭いがする。でも、あの貴婦人がよくこんな小汚い場所に来たわね。うーん、それにしても黒い羽根も無ければ、潮のような香りもしないなんて」


それから暫しの間、アルネは周囲を調べた。


「… ふぅ。何だろう? 確かに異様な気配は感じるんだけど… ネネちゃんは何か感じる?」


「いいえ、特には」


「そう。じゃあとりあえず戻… 」


「誰だ!?」


突然の警戒心に、驚くアルネ。


ネネルトのその言葉と視線は、アルネを通り越して更に奥の方へと向いていた。

アルネは即座に後ろを振り向いた。


「ほぅ… やはり実物は美しいな。フルムーンならばもっと… 」


「あなた… やっぱり」


その漆黒のような羽根を、身体を覆うように閉じた。


(… !? アルネ様?)


ネネルトは、警戒心を更に強めた。

目には視えない、それに対して。


「アルネ、やっと見つけた。久方ぶりだな」


「2、3日ぶりでしょ、ファジー」


(ファジー?)


そこに現れたのは魔の精霊、その名もファジリアモルドアラベスクサルナンド。


長いので、アルネも覚える気はない。

通称ファジーである。


その言葉に、更に疑問を浮かび上がらせるネネルト。


「あの、アルネ様… 先程から一体、誰と話しておられるのです?」


「誰ってあいつが…… っ!」


(そうか! 彼はまだ精霊。魔の精霊であるうちは、ネネちゃんには姿が見えないんだわ)


「でも… 何かとても嫌な気配がするのは、感じます… 居るんですね? 何かがそこに」


そう言うと、ネネルトは厳戒態勢に入った。


「おやおや、大聖女の騎士か何かか?」


そう笑みを溢すと、ファジーは言葉裏腹に殺気を放った。

それに対し、ネネルトは身動きが取れず、更には体勢を崩すようにして、片膝を地面へと着いてしまった。


「えっ!? ちょ、ちょっと! ネネちゃん!? 大丈夫!?」


「ほう… 騎士ではないのか? 何だか親しそうに見えるが違うのか? ならば、そいつはアルネの何なんだ?」


その言葉に対し、アルネは鋭い視線を飛ばし睨みつけた。


「愛玩用よ!」



「「え?」」



思いもよらない言葉に、驚く2人。


(愛玩… 用)


ネネルトはその言葉に、顔から火が吹きそうなくらい真っ赤になった。


「あ、間違えた! 違うわ! 違うの! ついっ! でもとても大事な子よ!」


「つまり… 私の願いの妨げになる者… と言う事に間違いないのだな?」


「え… ?」


すると、今度はその大きな羽根を一気に広げ、黒紫色のオーラを手の上へと集中させ始めた。


(まずい… )


アルネはそう思い、おもむろにファジーへと近づいた。


「ア… アル… ネ様!」


苦しそうな声を堪えながら、必死にアルネを呼び止めようとするネネルト。


しかし、アルネはそのオーラをものともせずに、足を進め続ける。


そして、ポケットからある物を取り出し、それをファジーへと突きつけた。


「ほら! これ、貸してあげるから! ね! とりあえず落ち着こうよ!」


「これは… 」


アルネのその手には、キラリと光る耳飾りがあった。


視力の良いネネルトだ。

さすがにそれが何なのか、すぐに目に映った。


「ア、アルネ様! それはなりません!」


「黙れ! アルネが私にくれた贈り物だ」


その耳飾りは既に、彼の手に渡り、そして耳へと収まろうとしていた。


「あぁ… なんて素晴らしいんだ。飾り物を私に差し出すなど… それに何だか、まるで私を求めていたかのようにしっくりと… 」


「勘違いしないで。それは有るべき種族の元へと行く物。それまで、貸してあげるだけ。後でちゃんと返してよ! じゃないと、一生口聞かないから!」


(え? そんなことで返してくれるか?)


ネネルトは、とっても不安になった。


「そ、それは嫌だ。わかった。その者が現れるまで、私が暫し預かろう」


その応えに、ニコリと笑みを浮かべたアルネ。


(ん? 納得したのか?)


ネネルトは、もどかしい気持ちになった。


「で? ファジー、何故ここに? … て、まぁさすがに察するわ。私なのね? 種族にしてもらう為でしょ?」


「その通りだ。でも何でだか、アルネに中々辿り着けなくてね。まるで、何かが邪魔をしてるようだったよ


「何かが邪魔を? どういうこと?」


「私にもわからない。見えない何かが… 」


ファジーはそう言うと、眉間を寄せた。


「てかファジー、以前会った時… あの時は確か、夢のような空間だったわよね? あの不思議な場所は一体何なの?」


「あぁ、君を肉体として探し出すのは困難だったからね。魂だけを呼び寄せたんだよ」


「… まさか、その後気を追って、私本体を探し出したの? 会うために… 」


(それが本当なら、新手のストーカーだ。しかも相当執念深いレベルの)


ネネルトは、違う意味で警戒し始めた。


「言… ったであろう? 私は優… しいと」


「ん? 意図通じてる? 会話できてるよね?」


「あぁ… 残念だ。また誰かが邪魔… をしようとしているな」


「え? ファジー? 何を言って… 」


「残念だ。身体… が… もたな… い」


そして、様子がおかしいが、何故だか上機嫌なファジーは、ゆっくりとアルネの耳元まで近づくとこう言った。


「また会いに来るよ」


そして、柔らかい頬へと口づけをすると、羽根に身体全体を羽根で覆うようにして、一瞬にして姿を消した。


「え?」


アルネは何が起こったのか、理解が追いつかないでいた。


その頬を軽く抑えながら、呆然と舞い散る羽根達を見つめた。


「ファジー? ねぇ… 」


「既に、ここから去ったようですね」


ネネルトが、その言葉と共に警戒を解き放った。


(邪魔する者って一体… )


そうしてアルネ達は、その場に残された数本の羽根を手に取ると、王宮へと持ち帰った。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。

何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。


また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。


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