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episode82〜別邸〜

たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます!

最後まで読んで下さるととても嬉しいです。


鬱蒼と生い茂る森の中、アルネは今は大所帯となった、その一行と共にその森を進んでいた。


目的はただ一つ。


オーガ族であるオルの生存を、確認するためだった。


そして、バジリスクの姿をしているバージ。

彼は、竜族であり、真の名をジャグモという。

目的と関係のないジャグモとは、一旦、別れる事となったのだ。


「また後で、話聞かせてね? いつでも来てくれるんだよね?」


そう言いながら、2本の指で輪っかを作って見せる。


「指笛… 」


ぼそりと、思わず声が漏れるジャグモ。

引っ掛かりが拭えない。


(あれ? 自由に…? ん? 自由とは一体)


ジャバンはアルネ呪縛からは、当分、自由には解き放たれる事はなさそうだ。


しばらく歩いていると、遠くの方で古びた屋根と煙突が木々の中から、高々と聳え立つのが目に入った。


「あ、見えたわ! あそこに見えるのが、私達オーガ族一家の別邸よ。皆様、ここまで私達オーガ族のために、ありがとうございます」


オレスは改めて、皆に向かって、お礼を言った。


「素敵なお屋敷ね! さぁ! 旦那様を早く助け出して、長年離れた分の家族団欒の時間を過ごしましょう!」


アルネがその口から、精一杯の希望を出した。


一行は、その微かに見える別邸へと更に足を進めた。


そして、その前に来るとアルネは、何とも言えない感情が込み上げてきた。


(何だろ… この感じ… 本当に旦那さんがいるのかしら? 誰かがいるような気配が全くない… これ、本当に入って… 一緒に入って大丈夫かな? もし… いんや!)


アルネは、一発両頬に気合を入れた。


その突然の行動に周りの者が驚く… というよりか恐怖を感じていた。

負のオーラを吹き飛ばすように、更に言葉も加える。


「よしっ行こうっ!」


その声と共に、全員が一歩を踏み出した。



オレスを先頭に、屋敷の中へと案内をしてくれた。


その造りは、本邸と同じとは到底言えるようなものではなかった。


「えと… なんて言うか… 」


「言いたいことは… 何となくわかるわ。こっちの方が立派よね? 約3倍はあるから」


「3倍… 」


しかし、屋敷の造りやデザインといったところは、同じように感じた。


「何故こちらの方が? まるで本邸と間違える程だ」


ルクナの問いに、思いを馳せるかのように応えるオレス。


「それが狙いだから… 」


「どういうことだ?」


「それは… 中へと入れば自ずとわかるわ」


オレスはルクナにそう言うと、その大きな一歩を更に進ませた。


奥に進むにつれて、アルネは異様な空気を感じ取った。


暗くその湿気のこもった匂いは、アルネ達の鼻をつく。


特にノギジには堪えた。


嗅覚が非常に優れているため、鼻を摘んでいてもその臭いを過敏に感じ取っていたのだ。


(これはキツイな… ノギジは大丈夫か?)


そう思い、ヴィカはノギジへと声をかけた。


「ノギジ? 無理をしなくていい」


その言葉に、ノギジは片手を挙げて言葉を絞り出した。


「悪い… 俺にはこの臭いはキツ過ぎる。すまないが、外回りの探索の方へと、身を移させてもらう」


その言葉に、ルクナも了承した。


外では、既にネネルトとオレスの子、シェリュウスが待機していた。


(しかし… この臭いは一体。カビの臭いだけでこんなに酷くなるかしら?)


そして、永年の経験をこの場で活かすためにも勘が働いてしまった。


本人も活かしたくはなかった。


それは、腐敗した屍の存在を意味するようなものだったからだ。


ハルザはその類に、心当たりがあった。

しかし、不安を煽るまねはしたくないと思い、その言葉を口にはしなかった。


もちろんその事に、ルクナやヴィカなどの者達は薄々気が付いていた。


オレスはというと、その先の真実に心音が地響きの如く、波打っていた。


「オレス… 私達がついてるわ」


そう言って、アルネは言葉を添えた。



そして目的の場所へと辿り着いた。


150年間もの間、その姿に触れる事が出来なかった。

今、どのような思いでここに来ているのか、アルネ達は想像すら出来なかった。

その悲痛な横顔を目に入れるには、辛すぎた。

しかし、それを解放したい。

そのために来た。

なのに何故だか、次の言葉が出てこない。

その目の前にある大きな大きな、まるで谷底のような深穴に圧倒させられていたからである。


「何なんだ… これは」


全員の足が止まざるを得なかった。


深穴を越えた奥の方に、横たわるその姿が目に映る。


しかし、異様なのがその深穴の形の方だった。


谷のような溝が、円形状に連なっていたのだ。

まるで、ある者を囲うようにしているかのようだった。


その中心にいるのが、横たわるオーガの姿だ。


オレスの夫であり、シェリュウスの父、オルである。


「あなた! あなたっ!」


そう言いながら、存命の希望を飛ばし続けるオレス。


(オレスが永年、ここに入ることができないと言っていた理由はこれだったのか… )


底が見えない程の大きな溝。


「まるで、谷ね… 狼の幽谷を思い出すわ。でもこれじゃあ… 」


アルネが言葉を引っ込ませた。


「あぁ… なんてことなの… やっぱりあの時と何も変わってないのね… ここからだと、あの人が息をしているのかさえもわからない… オル… 会いたいわ」


「本当にすごい状況だな。こんな事が一体… 何故?」


ルクナもそう言いながら、その深穴から目が離せないでいた。


しかし、アルネはその言葉が気になった。


「ん? 待って… あの時と何も変わっていない… ? てことは… オレス、私もここからじゃ息も鼓動も確認できないけど… ひとつ言えることがあるわ… 」


「え? な、何?」


「旦那さんは生きてる」


(多分… )


「え!? そんなっ本当!? 何でわかるの!?」


「あなた、今、 ‘あの時と何も変わってない’ って言ったわよね?」


「え? えぇ… 50… いや、150年前に見た光景と変わっ… 」


「普通、生物って亡くなったら、腐って骨になるはずよね? でもここからだと少なくとも、そうは見えない… 臭いも… いやぁ、臭いは確かにするけれど… 」


しかし、彼を目の前にした今、アルネはこの臭いの原因がそれではないと思い始めた。


それでも、やはりカビのそれとは違う。


その疑問を少しでも拭い去りたかったアルネは、ハルザへと問いかけた。


「ハルザは、どう思う?」


いくつもの屍を目の当たりにしてきた信頼者。


「正直、最初は私も不穏な予感しかしませんでした。しかし、この様子だとおそらく、アルネ様が思っているようなことはないかと… 」


(多分… )


「ふふ、ありがとう」


アルネは、希望の笑みを浮かべた。


その言葉にオレスの鼓動は、先程とは異なった音を奏で始めた。


「あとは、ここからどうやってあの場所まで行くかだな… 」


デイルがふよふよと浮かびながら、口を開く。

その姿に、全員の視線が集中した。


「… ん? なんだ?」


「いや、デイルが確かめに行けばいいんじゃない? その特殊能力を使って」


「これは別に特殊能力でも何でもな… 」


「そういうことを言っているんじゃないのよ! 使えるものは使えってこと!」


そう言いながら、アルネはデイルのとんがった耳を、更にとんがらせた。


デイルはその痛々しい耳を抑えながら、オルのいる場所まで飛んで行く。


「ったく… 族使いが荒いんだから!」


その様子を見ながらも、ルクナは次の策を練った。


「俺達はどうするか。とりあえず、様子を見に行ってもらうにしても、彼の元に行く事は避けたくない」


「そうね、橋を作るとか… 空を飛ぶ… とか、大ジャンプす… ジャンプ? そうか! ジャンプすればいいのか!」



「「「え?」」」



(正気か?)


(そんなこと、本気でできると思っているのか?)


(突拍子もなさ過ぎて… 思考回路どうなってんだ? このお嬢さんは)


いつもながら、そう各々に思っていた。

しかし、何も言葉にする事はできない。

いつも、何かしらの突破口を見つけ出すのは、大聖女だからだ。


何も言えない。

言わない。


「あーでも、私がジャンプして行ったところで、どうやって彼をこっち側へと連れてこよう?」


「それは問題ないわ。あの拘束さえ解き放つことができれば、あとは彼ならこの溝を跨ぐことができる。それも最も簡単にね」


アルネはオレスのその言葉に、一気に顔が明るくなった。


(それがデイルに出来れば良いのだが… )


そう思いながら、アルネの方を見たルクナ。


その表情は何だか生き生きと、そしてやる気満々であった。


「そう!! じゃあいっちょやりますか」



「「「え?」」」



「ル、ルクナ様… あまり口を出したくはないのですが… 流石にこれは… こればかりは止めた方がよろしいのでは?」


そう言葉を震わすのは、この2人を一番近くで見てきた側近ヴィカであった。


「ゔ… っゔぅん… そう… だな… いや、しかしだ。一応どういう作戦なのか聞いてから決める」


ルクナの心が一瞬揺るぎそうになりながらも、言葉を飲み込んだ。


彼はアルネを信じる気持ちと、心配な気持ちの2つを葛藤させていた。


「アルネ? それはつまり、ここからその身ひとつで飛び越えるということか?」


「うーん、本当はその方が楽だし、そうしたいけど、さすがにこのまま直接あの場に行くには、勇気がいるわよね?」


(そうでなくとも勇気がいると思うが)


「だからほら、あそこ」


そう言いながら、アルネは少し斜め下の方を指差した。


「一旦、あそこまで降りてみたら、いいんじゃないかしら?」


その言葉に、オレスも納得いくような形で言葉を出した。


「確かにあの辺までは降りれるわ。でも、高低差が小さくなるから更に、オルのいる場所まで行きにくいように感じると思う」


「そうなんだ? でも一度、試してみたいの。もしかしたら、その時とは状況も変わっているかもしれないでしょ?」


「わかった。俺も行っ…… 」



(((あ… )))



「ぐ… っぐぐぐぐ」


その言葉にならない言葉を発することよって、従者達は感じていた。


いつものことながら、慣れていた。


「何故いつも… いっつも言うことを聞かない! あれ程、危険な真似はするなと言っているのにっ」


ルクナはその本能のままの本能に対し、強く拳を握りしめた。


その様子に、オレスは驚きを隠せないでいた。


「信じられない。この高さを、最も簡単に飛び降りるなんて… 」


そしてデイルもそれを考慮に入れた上で、飛び降りたアルネに対し、当たり前のように合図を送っていた。


しかし、それに対しアルネは言葉を失う事となる。



下に向かったアルネへと、怒りの意を含めた心配の声を投げかけるルクナ。


「アルネ!? 大事ないか!?」


「……… 」


返事が中々返ってない事に、焦り始めたルクナ。


目の前ある深穴をまじまじと見るアルネとデイルは、すぐにそれが何かを察した。


アルネの元へと戻るデイル。


「おい… っこれって… 」


デイルの言葉に、ゆっくりと首を縦に下ろすアルネ。


そして、その手を伸ばし確認した。


「嘘でしょ… これがどうしてここに…?」


「あぁ、一体何の為に… 誰が? しかも… 」



「「ちゃんと騙されてる」」



2人は顔を見合わせながら、心臓が高鳴る記憶を思い出した。



最後まで読んで頂きありがとうございます。

突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。

何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。


また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。

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