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episode6〜アルネ〜

たくさんの物語りの中から、覗いて頂きありがとうございます。

長編の新連載になります。

最後まで、見て頂けたら幸いです。


ルクナは泣き崩れるアルネをその腕の中に、どう声をかけていいかわからずにいた。


そして、ゆっくりと口を開き始めるデイル。


その声が届くかもわからなかった。

しかし、伝える事を選んだ。


「言わなかった… 言う必要もないと思っていた。アルネが寂しくないように… 悲しい気持ちにならないように… その生きる意味を… 感じて欲しかったから… 何より… 何よりも俺達が幸せだったんだ。だから、皆で言わないという選択をしたんだ。けど… 結果こんなに悲しませてしまったな… すまなかった」


泣きじゃくりながらも、目線を送る事の出来ない彼女の心には、ちゃんと届いていた。


優しさからの嘘。


とても温かい嘘。


真実がわかった今でも、それがとても大切になる嘘。


この世にはそういう嘘がある。


しかし、アルネは溢れ出るその涙を止める方法がわからなかった。


そうこうしているうちにも、アルネから放たれる光は強まっていった。


(マズイ… これ以上は)


ルクナは少し焦るように、デイルの方を見た。


「デイル… っ! アルネは満月の光りに晒されると、力が溢れ出る。そうだな?」


「あぁ… この通りだ」


デイルは手のひらを広げて、そう応える。


ルクナはアルネの姿が段々と変化していく様に、危うさを感じていた。


止まらない光り。

その明るさは、段々と強まっていた。


止まらない髪。

その長さは、その身体を当に越していた。


何より、止まらないその ’力’ 。

ルクナは、その脅威を感じていた。


他の者にはそれ程感じる事ができないその ’力’ を。


(このままだと力が暴走する。その前に、アルネを光の届かない場所へと… )


そう思い、近くにあった布を手に取り、アルネのその身を包むように覆った。


アルネを抱きかかえ、船内へと急ぐ。


何もわからないほどに、泣いきじゃくるアルネ。



部屋へと着いても尚、その涙は止まらなかった。


しかし、その想いを伝える事を今、選んだルクナ。


ゆっくりとその震える肩を両手で支えながら、口を開いた。


「アルネ… お前は1人なんかじゃなかった。村の者達は、人間ではなかった。しかし、それは姿形が違うということだけ。ただそれだけだ。そこには、ちゃんといたんだ。村人としての精霊達が。短い付き合いの俺にだってわかる。彼らはずっと、アルネを見守りながら、支えていた。あれはお前が創りあげた村だ。見た目だけではなく、心もだ。ちゃんとある。今も、あの場に… だから… 」


涙が止めどなく溢れ出るアルネ。


しかし、今回は違った。


その大きく打ち砕かれた心が、温かい涙へと変わる。


「… 今も? …ぇぐっ… ある?」


「あぁ、ただ形が存在しないだけだ。他の者には見えないだけで、アルネが側に戻… 」


(ここで、引き返すとか言うかも知れない… いや、それならそれでも… )


「そう… 私の為の村… ひっく… なら… 」


そう言いながら、涙を拭い始めるアルネ。


「また、絶対戻らないとね… この世界を知って… そして必ず戻る」


「いいのか…?」


「ん?」


「いや… 」


(てっきりすぐにでも戻るとでも、言い出すのかと思ったが… )


「やっぱり、おばあちゃんが… っく… 言おうとしてたことって… この事だったのかな…?」


「そうかも知れないな… 」


(そうか… おばあちゃんも… 私が産み出… し… )


「ん!? てかおばあちゃんも!? 私が創った? えっ!?」


「あぁ、おそらくな」


少し調子を取り戻したアルネが、泣き腫らした顔をやっと上げた。


その姿と共に、表情もゆっくりと元に戻っていくことに安堵し始めるルクナ。


「アルネ、精霊というのは、この世のどこにでもいる。それをある力で精霊から ’精霊族‘ へと創り出した。精霊は死ぬ事はないはず。おそらく、アルネの祖母は何処かで生まれ変わっているのではないか?」


「えっ… おばあちゃんが? 何処かで生きてる!?」


「詳しくはわからないが… その姿を変えてしまっているのか、記憶が引き継がれているのはわからない。ほとんどの事が何も… わかっていないんだ」


「でももし、本当にこの世の何処かにおばあちゃんが、何らかの形で生まれ変わっているって言うんなら、尚更世界を探し回らないと!」


「あぁ、でもそう焦るな。時が来れば、必ず向こうから何らかの形で接触してくるはずだ」


(この世の精霊に限らず、大聖女のその力を求めに、様々な者達が集まってくる… そう、良くも悪くも様々なモノがな)


ルクナは少し顔を歪めた。


「必ずか… その言葉、信じるわよ! それにしても、その ’族’ を創り出すような大きな力を、私が持ってるって事よね!? 今までそんなの感じた事ないから実感ないけど… 」


「自覚はなかったって事なんだな? 無意識に使える力か… 制御する方法も知っておいた方がいいな」


そう小さく呟くルクナ。


その拳を一度強く握り直すと、何かを決意したように口を開いた。



「アルネ… これからとても大事な事を言う… 落ち着いて聞ていくれ」


「えっ!? まだあるの? ふふ… でも、もうこれ以上驚くような事はないかも… 何?」


「お前は聖女だ。それもかなりの力を持つ大聖女なんだ」


「えぇぇぇぇぇー!?」


「…… おい」


「あ、とりあえず驚いてみたんだけど… えへ… で、聖女って何?」


「はぁ… 聖女とは、奇跡を起こす存在。神からの恩寵を受けている、とても尊い存在だ。時には神にも近い存在とも言われる。世界中の者がその存在を探し回っている。血眼になってな。目的はそれぞれだが… 」


「神っ!? 私、神ぃぃい!? うわ! 急に何でも出来る気がしてきた!」


「いや、聖女だ… 」


(何か疲れるな… )


「大聖女ねぇ… そんな事いきなり言われても… なぁあぁぁぁあ」


頭を抱え始めたアルネ。


(急に雄叫び上げるとか怖い… こんな大聖女は嫌だ… )


「それとだな、世界の均衡が今、崩れ始めていると言われている。その為にも大聖女の力が必要なんだ。これから、お前と言う存在を狙う者達が、わんさかと出てくるに違いない。気を付けろよ?」


「うーん、気を付けろって言われてもなぁ… よくわからないや! あ、でもルクナが守ってくれるんだよね? そう言ったもんね? ふふ、期待してるー」


(ん? いつものアルネに戻ったか? 受け入れたって事か? それにしても危機感が… )


アルネはその実感が、まだ湧いていなかっただけであった。


しかし、当の本人はそれらを感じた事が、全くなかったわけではない。


昔によく感じていたあの違和感。

他の者とは違うそれは、村人だと思っていた彼らが精霊であったからだった。

それを精霊族にしたのは、アルネ自身であったのだ。


(おばあちゃん… あの時の言葉はそういう事だったのね… それが ’自分’ であり、 ’個性’ である。私はこの ’個性‘ を大切にするわ)


そう心に思いながら、アルネは自身を受け入れる事を決意していた。


今はまだ、この力をどのように扱えば良いのか、何になるのかはわからずであったが。


すっかり落ち着いたアルネが、その顔をタオルで冷やしながら、ふとある事を思い出した。


「そうだ! じゃあジールは?」


「ジールか… そうだな、これも一応言っておかねばならない。ヴィカ達含め他の者には、精霊達は普通の人間に見えていたはずだ」


「他の者には見えないって、そう言う事だったのね… て事は、ジールはその姿に騙されていたって事?」


「うーん、騙されていたとは少し違うな。彼らは騙すつもりはなかったはずだ。知っての通り、悪い精霊達ではないからな。外部から来た俺は少なくともそう感じた。そうだな、それを言うなら、 ’守っていた’ と言った方が当てはまるんじゃないか?」


「守っていた… か。やっぱそれって、あの島全体? 精霊達、自身の存在をって事?」


「それもあるが、アルネ自身を守っていたんだろうな… 勘に過ぎないがな。先程のデイルの言葉からもそう読み取れる」


「私をか… はぁ… 急に皆に会いたくなってきたぁー」


そう言いながら、顔のタオルを剥ぎ取り、アルネは枕へと顔を埋めた。


そしてすぐに、疑問を投げかけるために顔を上げる。


「でもルクナは? 見える ’はず’ って、さっきそう言ってたわよね? て事は、ルクナには一体彼らが何に見えてたっていうの?」


(たまに鋭い事言うな)


「それを、今から話そうと思っていた。俺には、彼らが人間には見えていなかった。しかし、精霊だとも思わなかった。… そうだな、人間のような形には見えてはいたが、その姿からは光りを帯びていたんだ」


「ふーん、そうなんだ? 何だか特殊なのね。じゃあルクナも聖女なの?」


ルクナは口につけた茶を、思わず吹き出しそうになった。


「… っな、何を言ってるんだ? 俺が聖女なわけないだろう? 女性のみの総称だからな」


「あ、そっか! つい… 」


そう言いながら、ルクナの女性よりも美しいその姿をまじまじと見るアルネ。


「ゔ… 」


「でも、聖女じゃないなら何なの?」


「それはだな、俺がある国の王族だからだ。その血には、代々聖女の持つ力と似た力を受け継ぐとされている。現に俺も幼い頃からその力を持っていた。アルネ程ではないがな」


「ん… ?」


「だから、タナマ村の者達は聖女や王族以外には、人間に見えたというわけだ… そもそも精霊という者自体、普通の人間には見えない。しかし、ヴィカ達は人間だと思って接して来ていた。それは、お前が力を与えていたからであって… アルネがそうさせてたんだ。あの数の精霊達をだ。それはとても測りきれない程の… 」


「待って? なら、あなたほぼ聖女じゃない。私とルクナは、何ら変わりないって事ね! 仲間がいると分かって、とても嬉しいわ! それに私より聖女っぽいし! ふふ、何だか一気に心強くなったわ! よろしくね!」


そう言いながらアルネは、その手を力一杯握った。


「え? あ、いや… お前、今の俺の説明ちゃんと聞いていたか? 最後まで聞… 」


アルネは自身の力よりも、ルクナという心強い友がいた事の方が、彼女にとっては重要であった。


「はぁ… 今日はもう遅い。また明日にでも話そう」


そして2人は、床に就いた。


しかし、アルネが眠りに着く頃には、空が白み始めていた。


「ありがとう… ルクナ」


そう呟くと、ゆっくりと目を閉じ、やっと眠りに着く事ができた。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。

何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。


また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。


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