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episode57〜洞窟の入り口〜

たくさんの作品の中から見て下さり、ありがとうございます。

最後まで読んで頂けると、嬉しいです。

少し長くなってしまったので、episode57を二つに分けました。


こうして、アルネを先頭に全員がバジリスクの背に乗り込むと、彼はその翼を大きく羽ばたかせた。


空高く飛び立つ。

その風景には何度でも感動する。

ノギジ、ネネルト、ピアンは初めてなので尚更だった。


「すごい… こんなにも世界が広く見えるなんて」


「ふふ、まだまだよ? あっ! 見て! 皆が見える!」


アルネが指差す方に、目を向ける一同。


そこには美しく光りを放ったアンセクト達が、こちらに向かって合図を送っていた。

各々手を振ったり、舞ったりと声を上げていた。


「うわぁ! 綺麗! みんなぁ! 色々ありがとう! 絶対また会おうねー! ゾルは任せてー!」


アルネは精一杯の声を出し、その見送りに応えた。


そして、バジリスクは上空の更に雲の上へと上がっていく。

深い夜の中、無数の星達の中に煌々と光る満月が浮かぶ。


すると、大きく風を切るように、後方から、何かが近づいて来る気配がした。


その紫檀色の羽根からは、まるで星が溢れたように鱗粉が舞う。


「え!? ロクサーヌ女王!?」


それはたった今、満月の力によって大きく羽ばたいたばかりのアンセクト族の頂点、月華蝶ロクサーヌ女王であった。


女王はバジリスクの横に並ぶと、何かを訴えかけるように、鱗粉の量を強めた。


そして…



『礼を言う。この恩は忘れぬ。其方達も道中気を付けて… また会うその日まで… 』



そう伝えると、女王は横から外れ、どこかへと行ってしまった。


「え? 今のって… ロクサーヌ様本人のお言葉… ?」


「ん? 女王が何か言ってきたのか? … 今のは一体?」


「ルクナには聞こえてない… ?」


他に聞こえた者がいないかアルネは後方を振り返り、皆の表情を確認した。


一同は、近づいてきた月華蝶に感嘆の声をあげるのみで、その言葉に驚いている者は誰一人いないように見えた。


(今の… 私だけが?)


すると、肩に温もりを感じ、それと共に低く囁く声が聞こえた。


「月華蝶が、アルネに何か伝えてきたんだな? 一体なんと?」


アルネは驚くと共に、すぐに言われた言葉を伝えた。


「そうか… おそらく、大聖女であるアルネにしか聞こえていない… まさか、向こうから接触をしてくるとは… 」


「もしかして… もう、月華山ではないからかしら?」


「確かにそうかもしれない。それに、この耳飾りが関係しているのかもな?」


「え? あ、そう… かもね… 」


「ん? どうかしたか?」


「あ、いや… えっとその… 」


(むず痒い… 密着しすぎじゃない? いつの間にか、腰に手まで回してきてるし… ルクナ、高い所苦手だったのかしら?)


アルネのその身は、ガッチリとルクナによって固められていた。

一寸の隙間もないくらい。

むしろ、今まで抑えていた分の感情を、みっちりと埋めるかのようにである。


周りの目もくれずに、その腰は愛情で支えられていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


月華山を出発してから、1週間半程が経っていた。


アルネ達は、仲間兼下僕となったバジリスクの背中を借りることによって、通常なら成し得ないスピードで、北西の海岸へと進んでいた。


その場所には、シレーヌ族がかつて住んでいたという入り江があるという。

そう、ピアンの故郷だ。

彼女の仲間が未だいると信じて、その場所へ向かうのであった。


休み休み、陸でテントを張りながら、先へと進む。



こうして、約1週間半程で目的の海岸へと辿り着いた。


上空から見たその景色は、文献通りとても入り組んだ形状をしていた。

まるで、何もかもを… 何者もを… 拒むかのように。


そして、何処に降り立てば良いのか、ピアンへと尋ねるアルネ。


しかし、その応えは意外なものであった。


ピアンが指差すその方は、海岸とは程遠い、木が生い茂る森の方であったからだ。


そうしてアルネの指示のもと、バジリスクは森のとある木が少し開けた場所へと降り立った。


「ピアン? 本当にここでいいの?」


「えぇ。あの海岸は入り組みすぎて、私達シレーヌでさえも、入る度に無傷では行けないわ。こっちの方が安全… だと思う」


「ん?」


(だと思う?)


「あ! ごごごめんなさい! 何百年も前の事だから、ちょっと記憶が… いえ… ごめんなさい… 本当の事を言うわ」


「え? 本当のこと? ピアンはシレーヌ族で、この入り江に住んでいたのよね?」


「えぇ… それは本当よ… でも… 」


「ピアン? 大丈夫。何か理由があるのね? どんな事があろうと、あなたを咎めたりしないわ! ゆっくりでいいから… 話してくれる?」


「アルネ… ありがとう… 私… 実は…あの入り江から出たことがないの。気が付いたら、人形にされててあの場所に居たから… だから、実際に見たこともなければ、行き方さえもわからない… さっきだって初めて海岸を見て… とても感動したくらい… だから… ごめんなさい… お役に立てなくて… 」


「ふふ… ふふふふふ… 何だそんなこと!」


「え? アルネ?」


「私と同じじゃない! 私もね、ある島の出身なの。でもその島から出た事がないから、行き方さえわからない。その島に行きたいと言う者は、信じられないくらい多いというのに。なのにもう… 多分奇跡でしか戻れない。島の皆には、必ず戻るとか言って、啖呵切ってきたけど… きっともう… 」


「アルネ… それは、まだわからないだろ?」


そう言うのは、その島で共に過ごしてきたルクナであった。


彼は漂流したとはいえ、島外でその島に辿り着いた数少ない者なのだ。


そして、幼い頃から共にしてきたデイルも言葉を添える。


「そうだ! 俺は絶対また戻るからな! アルネが行けないと思っていても俺は行く! 絶対に!」


「あ… うん。そ、そうだよね! 慰めようと思ってたのに、逆に慰められちゃった! こんなんじゃ説得力ないよねぇ! ごめん、ピアン! だからさ、絶対辿り着けるよ! 現に私達だけなら、さっきの入り江に真っしぐらに行って、ズタボロになって人生詰んでたと思う!」


(ん?)


「ピアンがこの場に居てくれて本当に良かった! 本当に! 聞いた事でも、覚えてる事でも、何でも良い! だから、頼りにさせて?」


「ふふ… えぇ。ありがとうアルネ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


こうして、一行は海岸とは異なり、森の方を探索する事になった。


段々と森が生い茂るその道を進む一行。


人魚であるシレーヌ族のピアン。

彼女の仲間を探して、今ここを訪れているのだ。


アルネ達は丸2日ほど彷徨った。


そして、足が進むに連れて、辺りも暗くなっていく。

昼か夜なのかもわからないくらいだ。


そして、遂に辺りは暗闇と化した。


いや、もはや既にそこは森ではなかった。


アルネ達はいつの間にかある洞窟へと、入り込んでしまっていたのだ。


天井から滴り落ちる雫を感じながら、その洞窟内を進んでいくアルネ達。


「こっちで… 合ってる… わよね?」


アルネが不安ながらも、ピアンに確認する。


「アルネ… 同じ質問、これで32回目だけど… 合ってると思うわ… 昔、彼に聞いた事があるもの」


「彼? えっ! もしかしてその彼ってこの間言ってた… 」


その言葉に顔を赤らめるピアン。


「なるほど… 」


(ん? それにしても… なぜ海にいるはずの人魚が洞窟なんだ?)


洞窟の中は暗闇と微かな水の音のみで、方向がわかりにくい。


しかし、ここには暗闇に特化した強い味方がいた。


ゾルである。


もちろん従者達は、灯りを持参していた。


しかし、その燃料に限りがある事は確かだ。


それに対し、ゾルはその身体の特性を大いに使い、辺りを明るくする事ができる。


彼はその身が果てるまで、何の苦も無く ‘点灯‘ する事が出来るのだ。


「ゾル。とても助かる」


ルクナの言葉に、照れているのか、光らせる事で返事をする。


「本当! いつ見ても綺麗よね!」


アルネが褒める。


「素晴らしい光りですわ! まるで星を間近で見ているかのよう!」


ピアンが追って褒めちぎる。


そして、その手をそっとゾルの光る背へと伸ばした。


「んなっ! な、な、な、何をっ」


その光を最上級に煌々とさせるゾル。


「あ、ご、ごめんなさい! 触ってみたくてつい… 」


「お… お? い、いいぞ… 少しならな… 」


「ふふ… ありがとう… ふふ、とても暖かい… 」


アルネは、ニタニタを暗闇に紛れて存分に放出させた。


すると、突然の殺気を感じたルクナ達。


全員がその場から身を飛ばした。


何者かが刃物の様な物で、襲い掛かってきたのだ。


ネネルトが咄嗟にその身を拘束した。


その者は、痛みを堪えてるかのような呻き声を上げた。


ヴィカが声を荒げるように問いただす。


「何奴!? その剣を納めろ!」


しかしその男は甲高い声を上げたまま、身体を捩らせ、もがくだけだった。


「はっ… あなたは… ?」


ピアンが何かに気が付き、話しかける。


彼女には、はっきりと見えていたのだ。

その見たこともないような、不思議な容姿が。


ゾルが恐る恐る近づき、その者を照らす。


その男の耳は、上方に角張っていた。

手には水掻きのようなものがついており、目が大きく艶を帯びていた。


「ルクナ様… この者は… シレーヌ族ではないでしょうか」


ヴィカが、そう確信する。


「まさに半魚人に近い… 本当にいた… 文献で書かれている特徴と類似しているな。これがシレーヌ族の姿か… 」


そして、その者はピアンの姿を見た瞬間、声を更に高くして早口で何かを言い始めた。


この世の言葉ではないのか、この種族の言葉なのか、何を言っているのか、アルネ達には全くわからなかった。


しかし、ピアンだけはその言葉を理解していた。

同郷の言葉だ。


「通訳を頼めるか?」


ルクナの言葉にピアンは頷き、口を開いた。


『永年… お待ちしておりました… ピアヌリーネ様。お守りできなくて、申し訳ございませんでした… ここに、再会したこと、大変嬉しい限りでございます。

その者達は… あなた様にとって脅威が無いと、お見受けしてもよろしいのでしょうか?』


ピアンは同じ言語で、大きく頷きながら応えていた。


「ピアヌリーネ? ピアンの本当の名か?」


ルクナがピアンに尋ねる。


「そうよ。わたくしの真の名はピアヌリーネ。でも… この名前、言いにくいでしょ? ふふ、だから今まで通りピアンでお願いします」


「そうか。ピアンの知り合いなのであれば、脅威はないな。我々が敵では無いことは、わかってくれた様だ。ネネルト、拘束を解いてやれ」


身体の自由を取り戻したその者は、更に高い声を発し、何かを訴えるように先の方を指さした。


「えっ!?」


「何事だ!?」


「オロン兄様が!?」


「オロン? 兄上か? その者がどうしたん… あっ!」


話の途中で切羽詰まっているのか、シレーヌ族の者が突如走り始めた。


「皆様っ! こちらです!」


そう言うと、ピアンはそのシレーヌ族の者の後を追うように、ルクナ達を誘導した。




最後まで読んで頂きありがとうございます。

突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。

何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。


また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。

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