episode56〜再会を願って〜
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ついに今夜、月が満ちる。
月華糖の効能により、皆のいるその場へと戻るアルネ達。
そこにはハルザの姿もあった。
その変化を催してない姿に、言わずもがな一同は驚いていた。
アディは、その丸く光る月を再度確認するように天を見た。
(フルムーンだ。間違えてない… よな)
アルネ達に駆け寄るアディ。
「やはり… 月華糖によって変異を止める事ができたのか?」
「えぇ、そうみたい。ほんと良かったわ」
「そうか。じき、女王が目覚める」
それぞれの思いを抱えながらも、夜空は進んでいく。
その時が来た。
一番明るい夜。
一度見たその光景は、何度見ても美しい。
満点の星空が開き始める。
月が見えた。
そして、ゆっくりと美しい小さな粒が、舞い降りてきた。
月華蝶が目覚めたのだ。
「あぁ… ほんと… 綺麗」
それを見上げながら、鱗粉を纏った月華蝶の大きな羽根が、ゆっくりと開くのを感じ始める。
鮮やかに色の変わる鱗粉が、例の如くその地に降り注いだ。
コクシネル達は喜び、各々飛び回ったり、跳ねたりしている。
そしてエルフ達は鱗粉の加護を受けるかのように、ひざまつき、目を瞑った。
それと共に、満点の星空が鱗粉と重なるように、ゆっくりと現した。
「うんわぁ… めぇっちゃ綺麗! ここから見る光景も最高! ね? ね!」
アルネは両隣りにいた、ルクナとアディに同意を求めるように彼らの腕を引っ張った。
「… 誠に素晴らしい」
「あぁ… 美しいな」
夜空を見上げながら、先日のことを思い出すアディ。
その場所にはこの場所からは見えない、喜びの島がある。
「そういえばお前、あの降る矢の襲撃を、一切受けてなかったな? まさか全て見えてて避けてたとか… ないよな?」
「ん? あるわよ? 全て感じていたから」
(やはり… あの時に追われた時の脚力は、まぐれでは無かったのか… 普通、ユマンの女性は、ここまでではないはず… )
月華山が開けた今、各々が別の道へと歩み始める。
アディとフレールとも、月華山の麓で別れることとなったのだ。
すると、突然アルネはアディに手を引かれ、人気の少ない木陰へと連れて来られた。
もちろん、彼らが気が付かないはずはなかった。
しかし、別れの挨拶を邪魔するほど、心は狭くない。
遠くの方で少し様子を見ることにした。
「アディ? どうしたの?」
「アルネ、俺とフレールはこの場に残る。アンセクト族と女王の事もあるが、この上空にある奴らの楽園のことが気にかかる… 」
アディは空を少し睨むような表情をしながら、そう伝えた。
「そう… よね。折角会えたのに残念。寂しくなるわ… でも、必ずまた会いましょう」
「あぁ、必ず… 」
そう言うと、名残惜しそうにアルネを抱きしめた。
(ん? あ、お別れのハグね)
アルネも目を瞑り、その身体をそっと抱きしめる。
「ふふ、珍しいわね、アディがこんな事するなんて」
「…… うるさい」
そう言うと、照れた顔を真っ直ぐに向け、アディは口を開いた。
「… アルネ」
「ん?」
「いつでも待っている… 」
「え? … あぁ! うん! 2人に会いに来るわ! 必ずまた会えるから!」
「え… あ、いや… そう言う意味じゃなく… 」
すると、我慢の糸が切れる音がした。
嫉妬の憎悪にかられた腕が、彼女の身体に絡みつき引き寄せた。
「ん? ではどういう意味だ?」
「ルクナッ!? びっくりした!」
ルクナリオ殿下はちょっぴり、心が狭くなっていた。
それはアルネのせいでもある。
「大事なモノが狙われないようにしなければな」
「大事なモノ?」
(自覚なしか… )
「はぁ… 本当危ういな、だから俺は… 」
そう言いながら、アディを睨みつけるルクナ。
「ルクナ? 一体どうし… 」
アディはそれを遮るように、今度は強めの想いを言葉として放つ。
「アルネ… 俺の所へいつでも来い。何なら迎えに行っても良いぞ?」
「お前、それがどういう意味を放っているのか、わかって言ってんのか?」
「あぁ、そのままの意味だが?」
2人の言い合いに、一番わかっていない者がわかったような口を利く。
「ん? そうよね? そのままの意味でしょ?」
「…… あぁ」
(鈍感… )
するとそんな中、フレールが別れの挨拶にやってきた。
その可愛らしい姿に、アルネは興奮せざるを得なかった。
「フレェエーールッ!」
そう発すると共に、ルクナの腕からするりと抜けるアルネ。
「あっ、アルッ… ネ!」
その様子を見たアディは、鼻で笑うように言った。
「ふっ、時間の問題か? ちゃんと捕まえておけるのか?」
「お前… 手を出したら容赦しないからな」
「お? 何だ? 余裕じゃないな? そもそもお前のモノではないだろう? 本人は気が付いてすらなさそうだしな? そりゃ自信がないのもわかる」
「 ’今はまだ’ というだけだ。そうだな… お前みたいな輩が出てくる前に、早く手を打たないとな。それにつけあがって、狙ってくる奴が多い。牽制はその予防策だ」
睨み合いが続く2人。
そんなことも、鼻から露知らず、逆にアルネはフレールを離さないでいた。
アルネの腕に力がこもる。
「いだっ… いだだたっ! 痛いよアルネ!」
「絶対絶対、また会いに来るからね! 私のお世話になっている国にもおいで! ノギジの神殿もあるよ! 何なら王宮にいつでも泊まりに来ていいのよ! 美味しいお菓子もあるよ? おいで? ね? ね?」
誘拐犯になろうとしているアルネ。
少し手口が雑だ。
それでも、やはり寂しい気持ちが込み上げるフレールは、その涙を堪え隠すので精一杯であった。
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そして、本当に別れの時が来た。
美しく丸みを帯びた月が、煌々と辺りを照らす。
「じゃあ! 皆またね! 必ずまた会おう!」
山の麓までコクシネルやエルフ、そしてアディやフレール達が見送りに来ていた。
「アルネ! ありがとう!」
「必ずまた会おう! 気を付けてね!」
「危ない事はしないでね!」
「水場での飛び込みはダメだよ!」
「木の蔓にぶら下がるのもやめてね!」
「ん? あ、うん… 」
「アルネ様… そんなことしてらっしゃったんですか?」
ヴィカが信じられないという目を向ける。
アルネはその目を見て見ぬふりをした。
しかし、アンセクト達の言葉は止まらなかった。
「夜な夜な勝手に布団に潜り込んでくるのもやめなねー」
「可愛い子を見つけたからって、いきなり一緒に水浴びしようとしないようにねー」
(あぁ、もう皆黙ってぇ… )
(えっ!? アルネ!? 夜な夜なだと!? 全然気が付かなかった)
ルクナの心境は複雑だった。
「フフフフフフフフ、ミンナマタネー」
しかしアルネは、その満面の笑顔を崩さずにいた。
(本当、危うい… )
ルクナはその細い首に、無性に首輪を括り付けたくなった。
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こうして、長い間共に過ごしたアンセクト族達やアディ達と別れたアルネ達。
月華山を背にしながら、足を進める。
ここからは、アルネ、ルクナ、ヴィカ、ハルザ、デイル、それとノギジとゾル。
そして、シレーヌ族のピアンがその旅を共にする。
ネネルトの姿は通常通りその場にはなかったが、彼は黒子役としてその姿形と共に影として行動している。
大所帯となってしまったが、他種族のいるこの状況はアルネにとっても彼らにとっても喜ばしいことであった。
これは目標が、少しずつ達成されている証だ。
こうして彼らは、次の目的地であるシレーヌの入り江へと向かうのであった。
しかし、肝心なその場所に行くための足が未だここにはなかった。
その疑問をヴィカが口にした。
「それで… アルネ様?」
「ん?」
「そろそろ教えて頂けませんか? そのどこにいるかもわからないバジリスクを、どうやってこの場所へと来させるのでしょうか?」
(あれから1ヶ月以上は経っている。もはや… 既に姿を絡ましているのでは… ?)
「そうね! ふふふ、少し移動しましょうか?」
そして、アルネ達はバジリスクことバージを呼び寄せる為に、大きく開けた場所へと移動した。
「さぁっ! 呼び付けるわよ!」
(呼び付ける… )
すると、アルネは人差し指と親指で輪っかを作り、唇に当てた。
そして息を肺いっぱいに吸い込むと、勢いよく吹いたのだ。
(アルネ様… そんなんで来るわけ… )
(指笛… 本来なら、女性がやるのは下品であるのだが… 本来ならな)
(これは… 使える)
その場にいた従者達は、そう思いながらも指笛の音と共に辺りを見渡した。
すると、上空の遥か遠くから、大きく風を切る音が聞こえた。
その音はどんどんと近づき、やがて大きな風を感じ始めた。
翼をはためかせたバジリスクが姿を見せたのだ。
その姿に思わずルクナは、唖然としながらも小さく声を漏らした。
「信じられない… 本当に来た」
(バジリスクまでアルネの虜に… )
下僕の間違いであろう。
虜ではない、決して。
バジリスクを初めて見たピアンは驚きのあまり、腰を抜かしそうになった。
それをすかさず、ハルザが支える。
「ふふ、ピアン? 大丈夫よ? ほら… 」
すると、その大きな鳥のような竜はアルネの前にゆっくりと降り立ち、服従するように頭を下げた。
その様子に圧倒される一同。
アルネは嬉しそうにバジリスクの大きな頭に抱きつき、撫でくりまわした。
「おひさぁー良い子にしてた? ふふふ」
(本当にバジリスクを、その拳一つで制圧したって言うのか… )
(アルネの下僕… あり得過ぎて怖い)
ノギジとゾルは、同時にハルザへと目を向けた。
何か言いたげな心を汲み取ったかのように、静かに頷くハルザ。
「皆! さぁ! バージに乗って行くわよぉ! ピアンの故郷! シレーヌの入り江へ!」
「アルネ様、そんなに声を大にして言わなくても… 近所迷惑ですよ? それに、バジリスクに怯える者もおります」
従者は真面目で、かつ常識人だった。
「えっ!? 大丈夫大丈夫! そんな人がいるもんなら、私達がちゃんと擁護するから!」
「擁護?」
「そうっ! 何度でも、何度でもよ! 納得するまでこの子は怖くないよって。だって彼はもう私達の仲間よ! ね? ルクナ」
「え? あ、あぁ、そうだな」
(ルクナ様… 本当に同意してらっしゃるのか? それにしても… 仲間?)
ヴィカは少し考え込むように、目線を向けていた。
「さぁ、ピアン! 案内をよろしくね!」
「えぇ… でもこの鳥頭さん、本当に大丈夫なのかしら?」
(鳥頭… さん? 意外と可哀想な呼び方してるな… )
「大丈夫よ! 心配なら、ほら! ネネちゃんにしっかり捕まってれば、ね? あれ? ネネちゃんは?」
「…… 」
名を呼ばれた彼は、いつも以上に気配を殺した。
しかし、主人がその名を呼ぶ。
「… ネネルト… こちらへ」
そして、ゆっくりとその姿を現し、従順に命令へと従った。
(結局こうなるのか… )
彼もアルネの従順な下僕になりつつあるのに、今はまだ気が付いていなかった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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