episode54〜ジャバラ〜
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こうして、話を聞き終わったアルネがテントへと戻ると、既にピアンと話を終えたルクナ達がいた。
そこには、サリドナの姿もある。
「アルネか… ん? その顔はどうした?」
ルクナはアルネの腫れたその瞼を見て、心配そうに言う。
「え? あぁううん! ちょっとね! 何でもないわ」
「… そうか」
「それより、次の旅行き先は決まった? やっぱりピアンの故郷であるシレーヌの入り江なのかしら?」
「そうだ。ここから距離は少しあるが、心当たりはあると言うからな」
「そっか! それでサリドナさんとは?」
すると、サリドナはアルネを待っていたかのように、話を切り出した。
「アルネ、例の耳飾り… その名も ’ジャバラの天秤’ その、真の付け方を教えよう」
(え? ジャバラの… 天秤? ん? 耳飾り関係あるのか? 天秤の形をしているのかしら… )
アルネは、その名の由来が気になって仕方がなかった。
「なんかすごい名前ですね! そんな名が付いていたなんて… というか、そうでした! サリドナさん! この耳飾りの真の付け方を教えて下さい!」
頷くサリドナ。
「あぁ、その前にこの首飾りの名の由来を説明しておこう。皆、気になっていそうな顔をしているのでな… 」
コクンと頷く、一同。
約1名を除いては。
「この耳飾りは、元々は対女神達用ではなかったそうな。本来ならば、その土地の安寧を保つためのもの。そのはずじゃったと… そしてそれは、ある土地から恩恵を受けた者のみに作用すると言われている」
「それが、キティール島出身者… いや関わっている者ということか?」
ルクナは、応えを求めるように聞き返す。
「そっか、 ’恩恵’ だから… 私にも効いてるってことですね?」
「あぁ、おそらくじゃがな。儂も最初はその島の出身者の事ばかりと思っておったが、 ’恩恵’ というその言葉があるのは、そういう事じゃったんじゃな。そして昔からある一族が、この耳飾りの管理を行なっていた。それが ’ジャバラ’ の由来じゃと聞いておる」
「その一族がジャバラ族? っていう種族かなんかなのかしら?」
「それは儂にもわからぬ… 」
(管理人の名前か何かか?)
「そこでじゃ、何故この耳飾りに ’天秤’ という言葉が付いているのかが鍵じゃ」
「天秤って、あの天秤ですよね? 2つの物を比較する為に使うあの… 」
「そうじゃ。単にその重さだったり、そして優劣を天秤にかける天秤じゃ。しかし、これは… この耳飾りに関しては3つ。そう… 3つの釣り合いが必要となる」
「3つの釣り合い? 激ムズじゃないっ!?」
「アルネ様、お言葉が乱れております… 」
すかさず、ヴィカが突っ込む。
「あ、失礼」
「アルネの言う通り、3つのバランスを取るのは、2つの時より難しい。とても繊細ですぐに不安定になり得る。しかし、その釣り合いがなされた時、その力は絶大となる。更には、その持つ者達の能力が合わされば… 」
そう言いながら、アルネの方を真っ直ぐに見るサリドナ。
「あ… 」
「そう、例えば大聖女のような絶大な能力とかな」
「じゃあ、俺はそんなんでもないな? だって俺は、精霊からちょっと昇格したくらいのパスティール族でしかないからな」
そう言うのは側で、聞いていたキティール島出身者のデイルであった。
「いや、そうでもないぞ?」
「え? そんな気安めは… 」
「お前も何度か聞いたはずだろ? 精霊パスティール… 神に1番近い存在。推測でしかないが、それはどの精霊よりも、偉大な力を持つと言われているのではないか? それが種族となったんだ。もはや、最強の種族とも言える」
「えっ!? そうなの!? みっ見えないっ!」
(え? アルネも聞いていたはずだが… )
ルクナはそう思いながら、アルネの方を横目で見た。
「お前が言うなアルネ。見えないのは、大聖女であるお前も同じだろう? それに… お前が生み出してくれたんだからな… 」
「私が… 生みの親… つまりお母さん… デイル! 今日から、私の事お母っ… 」
そのやかましい口を抑えたのは、ヴィカであった。
「失礼… 話が脱線しておりますゆえ… 」
(チッ、ヴィカめ… )
「ふぅ… そしてそれをこの儂が請け負い、来たるその時に、その人物に渡すという任務であったのじゃ」
「ではあと1名、キティール島出身者、もしくはその恩恵を受けた者を探して、真の付け方と言うのを行えば良いんだな?」
ルクナが話を筋に戻すと、サリドナは深く頷いた。
「そうじゃ… さすれば、この月華糖がなくとも、常にその作用も発動する」
「なるほど… サリドナ殿、話を聞いていて思う
事があるのだが… 女神達から居場所をわからなくする効果は、その一部に過ぎないという事のように感じるのだが」
(鋭いな… )
「左様じゃ… それをする事によって、おそらく他にも何個か発動してしまう作用があるのではないかと… 」
「しかし、その作用が何なのかは、サリドナ殿にもわからないと?」
「うむ… なんせ、この任務を受けてから、渡すのは今回が初めてだからな」
「… それは付けてみないとわからない… か」
その言葉に、今度は沈むように頷くサリドナ。
その姿を見て、ルクナは真っ直ぐに感謝の意を述べた。
「サリドナ殿、改めて礼を言う。在るべき者に渡すというこの時まで、大切に持っていてくれた事、感謝してもしきれぬ。それはそれは長き時だった事だろう。我らユマンでは、到底成し得なかったその任務、どれだけ大変であったか。其方が繋いでくれたこの想いも、全て受け取ろう。決して、無駄にはしない」
そう言いながら、ルクナはその誰よりも高い頭を深々と下げた。
「ルクナ… いや、ルクナリオ様、有難きお言葉。生涯、この身が果てるまで、身体の隅々まで残しておきます」
すると、ヴィカによって封じられたその身を、解き放つアルネ。
「ル、ルクナ! ちょっと! 私もお礼言いたいのにっ! 先に言わないでよ! … サリドナさんっ! 私っこの恩、一生忘れないからっ! 必ず他の種族達も見つけ出して、そしてあの悪女達にギャフンと言わせてやる!」
(これが育ちの差… )
そう思いながらも、ヴィカはその様子を黙って見ていた。
「ほほほ、相変わらず威勢が良いのう。その言葉、しかとこの耳に残しておくぞ。」
そして、アルネはそのままサリドナの小さい身体を抱きしめた。
すぐにでも崩れ落ちそうなその老体を。
「ありがとうっ… 」
アルネはその最後の想いを絞り出し、サリドナへと贈った。
「ア、アルネ! お婆ちゃんが昇天寸前だよ! 危ない危ないっ! 何してんの!」
周りにいたゾルとアンセクト達が、必死にその身を剥がしにかかった。
「ゲホッ… ゴホッゴホッ… ガハッ… 大事ない… 肝心な事を言うまでは、天には逝けないからな」
(ほんに危ういところじゃったがな… )
「はっ! そうだった! 付け方!」
(そのすぐ話が脱線する癖… 本当に勘弁して欲しい)
ヴィカは、またいつその身を拘束しようか目論んでいた。
「その真の付け方は非常に簡単じゃ。互いの耳飾りを付け合うだけじゃからな。但し、三者が同時に付け合う事が条件じゃ」
「なるほど… どおりで、ただ単に装着しても、効果は発揮しなかったのか」
慎重なルクナは、今一度サリドナに確認した。
「… その瞬間、危険はないのだな?」
「… 断言はできないが… おそらくそこまでは」
「ルクナ! 新しく何かをするのに、全く危険が無いなんてつまらないじゃない? それが冒険! それに、これには必ず意味がある。ねぇ? ワクワクしない? ふふ、私は今、とても楽しいわよ?」
「… ふっ、あぁそうだな」
「大丈夫! 私がついてるわ! 兎にも角にも、もう1人見つけないとね!」
「アルネはとても危うい存在だが… 何よりも頼もしい娘だ… 」
サリドナはそう笑みを浮かべると、表情を改め直した。
「して… 1つ、この老ぼれからある望みがある」
その真剣な声色に、ルクナは察したように深く頷いた。
アルネはというと、サリドナの突然の申し出から、驚きしか出なかった。
(何かしら!? もしかして… え? まさか、サリドナさんも一緒に… )
「儂のま… 」
「ダ、ダメです! だってそのご老体じゃ、すぐにうぐっ… 」
遂に、再び封じられた大聖女の身。
ヴィカは、必要な事は躊躇なく実行する。
「ん? 儂の孫であるゾルを、其方らと共に連れて行って欲しいのじゃが」
「あぁ、話は聞いている。本人もそう強く願っていたからな」
そう言うルクナに、目が点になるアルネ。
寝耳に水であった。
(え? そうなの? 聞いてたの? いつの間に?)
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それはアルネ達が、この月華山に入ったばかりの事だった。
コクシネル達と月華の泉に向かっていた頃、ゾルのその想いは初めて打ち明けられたのだ。
もちろん、ルクナは最初は懸念した。
しかし、アンセクト族の仲間と落ち合った後、再度その想いを聞くと話し合う事にしたのだ。
そしてゾルのその強い想いは、今日まで変わることはなかった。
種族達を探す旅に、共に行きたいと。
彼の目的は、複数あった。
この世の様々な場所にいる可能性、仲間の再会を願って。
そして、未知なる広い世界を見たいと。
もちろん、アルネ達の種族探しの手伝いをしながらだ。
こんな自分にも、何か役に立つ事があるのではないかと。
アルネ以上に、その胸の高鳴りが止まらない。
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そして今、アルネ達にもその想いが届く。
その決断にアルネも尋ねる。
「でもいいの? 折角仲間に… 家族に会えたのに… 」
「あぁ、もちろんもっと一緒にいたいという気持ちはある。しかし、俺に出来ることがあれば、出来る限りのことはしたい。それにこの広い世界をこの目で見てみたいんだ」
「ふふふ… そっか! そうよね? 楽しいわよぉきっと」
(煽ってる… )
ヴィカは横目に見ながらも、その発言を止めようとは思わなかった。
「ライはこの国を背負って立つからな。わかったばかりとは言え、彼は王族だ。元々まとめ役でもあったし、その素質もある。
アンセクト族を守らなければならない立場で、ライはここに残るべきなんだ。
俺は外にいるというアンセクトが無事であると知って、迎えに行きたいという思いが一番に込み上げてきた。
それにもしかしたら、他にも何処かにいるかもしれないしな。俺も何らかの形で、皆の力になりたいんだ」
「強い絆ね。そう… わかった! それと… その気持ち、私にも分けてくれない?」
「え?」
「ふふ、良い旅にしましょ、ね、ゾル」
そう言いながら、アルネはゾルの小さな手を握りしめた。
それと共に、大きな意志ごと握りしめ、力一杯包み込む。
その周りには、緑色に光るオーブが包み込むように飛んでいた。
感じるその暖かさは、何よりも勇気と強さを大きくしてくれたような気さえした。
「あぁ… ありがとう」
そして、アルネはライに向き直すと、更に念を押すように言った。
「ライ… この間話したと思うけど、私… あなたが女神達がいるあの楽園へと行く手段になるのは、やっぱり疑問が残る。
だから、まだ月華蝶様と交信するのは、もう少し待ってくれない? これは私からのお願い… 必ずそうならない為の方法を見つけてくるから。せめてそれまで… 」
アルネの願いを快く聞き入れ、力強くライは頷いた。
「うんっ! わかった。アルネがそう言うんなら待つよ。女王とは… 母さんとは話したいけど… 俺にも何か出来ることがあるか、探してみる!」
「うん! ありがとう!」
そう言うと、ライはアルネの肩に乗り、頬を擦るように抱きついてきた。
「アルネ、道中気を付けてね。ゾルをよろしく。きっとまた会えるよね」
「当たり前じゃない! 必ずまた会うわよ! 絶対に! 約束! ゾルの事は任せて!」
そして、この月華山の地で、ライを含めた他のアンセクト族とは、ここで別れることとなる。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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