episode4〜船旅〜
新連載始めました。
最後まで読んで頂けると幸いです。
こうして、遠く離れた国へと向かう為の、船旅が始まった。
先程まで見えていた島は、あっという間に小さくなり、霧に包まれるかのように消えた。
ひと息つき、各々が持ち場へと向かう。
そして、船内を案内する為に、アルネへと声をかけようとしたルクナ。
しかし、その前にヴィカがずっと気になっていた事を尋ねた。
「して… その者は一体… ?」
「え?」
「そこにいる者も連れなのですか?」
アルネ達は自分を通り越したその視線の先へと、勢いよく振り向いた。
「なっ! デイル!? 何であんたがここにいるのよ!?」
「俺も外の世界を見たくなったんだ! 良いだろ? 別に1人や2人増えたからって」
デイルは、偉そうにそう言いながら、珍しい物を見るかのように、船内をきょろきょろと見回していた。
「… まぁ別に構わないわ」
少し複雑な感情を抱きながらも、ルクナは承諾した。
「はぁ… 全く! ルクナ! この小僧をこき使って良いわよ!」
アルネは船内に響き渡るように、声を張り上げた。
「そぉんなこと言って、アルネも心強いんじゃないのか? な? 俺が居てくれて、本当は嬉しい、く・せ・に!」
「な… う、嬉しくなんか、な、なく… もない」
「へへぇ、ま、そういうことだ! よろしくな!」
そう言うと、馴れ馴れしくもルクナの肩にぽんと、手を置いた。
(こいつ… アルネから離れてないから、そのままなのか… それにしても一体どうやって… いつの間に入り込んだんだ?)
ルクナは、そんなデイルの生態の方が気になっていた。
そして、船内のとある個室へと案内されたアルネ。
デイルは船員として、乗せることを条件に、大部屋へと案内された。
アルネは案内された部屋を見て、詠嘆の声を上げた。
「うわ… 外からでも思ってたけど、すんごい豪華な船ね… こんな凄い部屋に寝泊まりして良いの? しかも私達2人だけでって… なんか勿体無くない?」
「あぁ、まぁ… 私は特別だから… ね!」
「特別… ?」
しかし、すぐにその扉は開かれた。
ノックの音がし、それに応えたルクナに物申す者が入って来たのだ。
「ルクナリオ様? まさかとは思いますが、この方と同じ部屋でお過ごしになるおつもりですか?」
「ヴィカ? そのつもりだけど… ん? 何か問題でも?」
「問題大有りです。それは到底許し難い事かと」
「あら? 何故?」
「ご婚約前のその身と、歳若き娘が同じ部屋で過ごすなど… 」
「え? あなた、あの村で何を見ていたの? 私はアルネとずっと同じ屋根の下で過ごしていたじゃない」
「やはり… その娘と同じ夜を過ごされていたのですね… まっまさか既に!?」
「それはないわ」
「ゔゔんっ… とても信じ難いですが… 」
「それに、どうするの? この猛獣だらけの船の中に、子羊ちゃんを解き放つの? そんな事したら、一瞬で食べられちゃわない?」
(え? 食べられる?)
「そのような事致しません。決して。されません。決して」
(ゔ… なんか傷つく事言われた気が… )
そして、そんなアルネを横目に見る2人。
「うーん… でもダメ、ダメよ。それに私達、ひとつ屋根の下で、3か月は過ごしたもの。大丈夫よ」
「3ヶ月も…… 左様ですか… ルクナ様がそう仰るのであれば… 」
「えぇ、だから心配ご無用よ」
「もし… もし、万が一何かあったその時は… 」
「何もないわ」
「……… 」
「ふふ、ないわ」
「… かしこまりました」
ルクナは、ニコリと微笑んだ。
その圧に押されたヴィカは、部屋から出ると、この警戒心をどこに向けて良いのかわからなくなっていた。
(それだけじゃない… あの娘、船に居るだけで危害は… 本当に大丈夫なのか? 何か役にでも立つような事ができるのか? あんなピヨピヨ娘に何ができるっていうんだ? もし、ルクナ様に何かあればその時は… )
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そして、翌日。
ヴィカの考えは全て打ち砕かれる事となる。
「じゃ!」
「「え?」」
おもむろに薄着になったアルネが、準備運動を終え、彼らに手を振った。
そして深く蒼い海へと、迷う事なくダイヴした。
「ちょ! え!? アルネ!」
(この高さから飛び降りた!?)
慌て驚くルクナと船員達。
デイル以外の者達は、信じられないと思う他なかった。
そして、息を飲む暇もなく、アルネが下から合図を送った。
それに対し、力一杯に何かを引き上げるデイル。
「こ、これは… 網?」
ヴィカが、やっと出た声を吐き出す。
そこには、大量の魚介類が入った大きな網があった。
「これを… ? あの子、まさか… 」
「ふぅ… 大量大量! やっぱ海が違うと獲れる魚達も違うわね! 食べるのが楽しみ」
「思った以上に獲れたな。前日に仕掛けろって言われた時には、驚いたけどな」
「どうせ用意してるって思ってたもんっ」
アルネとデイルの会話に、ゆっくりと割って入るヴィカ。
「え? まさか、これを昨日から仕掛けておいたの?」
「うん! そうよ! 皆と美味しいお魚食べようと思って! へへへ」
(全然気が付かなった… 監視はつけていたはずなのだが… )
ヴィカは監視役の者に目を向けた。
ルクナは言葉を失っていた。
(こんな得体の知れない海に、躊躇なく良く飛び込めたわね… 怖いわ… 野生児怖い)
そして、デイルの方を見るルクナ。
「俺は泳げないからな」
「まぁ… そうよね」
その言葉に納得していた。
一方、身体から水しぶきを放つアルネ。
しかし、ずぶ濡れの姿を見て、一斉にルクナとデイルがその身を隠す。
「え? 何?」
「お、お前! その格好わかってるのか!?」
ルクナは思わず、男としての素が出てしまった。
「何が?」
(無自覚って怖い… )
そして、自身の上着をそっと薄い肩にかけるルクナ。
「ありがと! さぁ! 食べましょう! お命頂戴致します」
アルネは収穫時に行ういつもの仕草をすると、そっと目を閉じた。
もちろんそれだけでは終わらなかった。
島っ子としての、アルネはこれからまだまだ本領を発揮するのである。
ある日は、風や鳥の動きを読み、弓矢で真上に解き放ち、鳥を射止める。
その数、17羽。
(あの群れを全て射落とした… なんて視力… )
「鶏肉確保ー! お命頂戴致します」
そう言って、調理場へと運ぶアルネ。
鳥達もまさかこんな所で、夕飯のメインにされるとは思っていなかったであろう。
(野生児の持つべき視力… 本当怖いわ… ふふ)
ルクナはそんなアルネに、日に日に目が離せなくなっていた。
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そして… すっかり忘れていた。
それを思い出させてくれるデイルは、今は船員に借り出されていて、その場には居なかった。
辺りは深い青を下ろしながら、橙を押していく。
闇が纏い始めたのだ。
それを待っていたかのように、角のないそれが煌々と姿を現していた。
そう… 月が満ちる。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
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