episode44〜予知〜
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月華の泉へと到着したその夜。
再び、見張り番をしていたハルザのもとへと近寄るアルネの姿があった。
(最近よく話に来るな… ルクナ様の方は大丈夫なのか?)
そう思いながらも、ハルザはアルネの話に耳を傾ける。
「ねぇハルザ、私少し思ったことがあるんだけど」
「何でしょうか?」
「ライの視た夢についてなんだけど… あれって何かの能力なんじゃないかな?」
「能力… ですか? と、言いますと?」
「うん… よく覚えてないんだけど… ハルザなら記憶があるかと思って… 」
「… ?」
「えと… 何処かで読んだ事のある一説に… こう書いてあったの…
’各種族にはそれぞれの役割がある
そして、それに特化した能力を持つ者が少なからずとも一名は存在する’
と… 」
(そんな著書なんてあったか?)
「あと… 何だったけなぁ… 他にも色々と書いてあった気がするんだけど… 今はそれが全然思い出せなくて… ハルザは、この一節に聞き覚えはない?」
「いえ… 初めて耳にしました。それにアルネ様がそんなにも、うろ覚えなのも珍しいですね? 一体どこで… 」
「それが、全然思い出せないのよ… 」
「そうですか。私も国へ戻った際に、今一度確認してみます。それにしても、能力者ですか… 各種族に一名はいる… 彼はそれが何の能力をお持ちなのかも、わからないという事ですね?」
「そうなの… でも大体予想はできるわよね?」
「「予知夢」」
2人の考えが声となり、揃った。
にこりと微笑み合うと、ハルザが更に考えを出す。
「そう、その予知夢、もしくは夢でなくとも未来が視えたとしたら、それは未来予知の能力ですね。本人は自覚がないように見受けられましたが」
「やっぱりそう思うわよね… まぁそれがライだって言うのは、勘でしかないんだけど… ね」
「大聖女様の勘ですか… ふふ」
「ん?」
「あ、いえ… 少なくとも私は、その勘を信じておりますので… 」
「うん… ありがとう」
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そして、翌日。
遠くの方に、ある2つの姿が見えた。
「… ギジ!? ノギジッ!?」
そう言いながら、こちらへと走ってくる影に飛びついたアルネ。
その腕に力強く抱きしめられるノギジは、少し苦しくも喜びに満ちていた。
「アルネ… 苦しい」
「ノギジッ! 無事っ!? 怪我はない!? あれ? 服が… 」
「あぁ… 大事ない。しかし… 俺のせいで小僧が怪我を… 」
その罪悪感の溢れる顔の下には、きらりと光る金色に輝く石の首飾りがあった。
その目線と共にアルネはノギジと同じように、ネネルトを力強く抱きしめた。
その腕には、ノギジの変異によって傷つけられた跡があった。
「ネネちゃんっ! ノギジをありがとう! 2人とも本当に無事で良かった! 腕の傷、大丈夫?」
ネネルトは例のごとく、黒い覆面を被っているため、表情がわかりにくい。
しかし、ちょっぴり抵抗しつつも、コクンと素直に頷いていた。
(可愛い… )
しかし、彼の拳は何かを堪えるように強く握られていた。
更には、それ以上に拳を強く握る者が近づいてきた。
彼の主人だ。
「ネネルト苦労であった。以後、報告を」
「御意」
そう言うと、ネネルトはルクナに耳打ちをするように、言葉を発していた。
(む… 私もネネちゃんの声聞きたい)
簡潔に報告を聞いたルクナは、そうかと一言頷くと、アルネを呼び寄せた。
そして、考えを交えながら、ノギジの事を話し始める。
「アルネ、ノギジの事なんだが、彼は間違いなくルー族だ。月が満ちるその光に反応し、姿の変化があった。全てをネネルトが目視し、確認している」
「そう… まぁそうよね… 私も少し見たもの。それで、どのような容姿に変異したの?」
「それは人だ。しかし、完全な人ではなく、何と言っていいのか… ほぼ人型に近いが、その頭部には、狼の耳が生え、口元には鋭い牙、そして、尾が生えていたという。それ以外は… 我々人間の男性型と類似していたらしい… 」
「男性… 型? そこは男性でよくない?」
「あぁ、そ、そうだな」
「ん? 何か見たの?」
「それはだ… つまりあの大きさから、ネネルト程の大きさの人間型になったらしいからな。服は破れ… 」
「素っ裸!?」
頷くルクナ。
アルネは顔が赤くなり、思わずその顔を両手で覆った。
(だから、服が違かったのか… 布切れ感がすごいもんな)
「でも… 人型に狼の耳、牙… 尻尾… それって… それって良いじゃない… ふふふふ」
「ん? アルネ?」
大聖女は、よからぬ思考が浮かんでいた。
そのニヤケ顔に表情を歪めるルクナ。
横にいたヴィカがいつものように、その腕をつねると、正気を戻した。
「ゔゔん。それで、ノギジは首飾りによって、その姿を元に戻したって事よね? 満月の力がノギジ自身の変異を促して、更にそれを制御するために、首飾りをかけられていたから… って認識でいいのよね?」
「あぁその通りだ 」
「あの時、変異するその直前に、息からがら首飾りをって言ってたのはそういう事だったのね。それにしても、満月の力って… 私もだけど、全部の種族に関係あるのかしら?」
アルネは、今までの出来事を思い出しながら考えた。
「可能性は大いにあるな」
「よしよし。これはアルネノートに書き足さなくちゃっ! 帰ったら、国王様にも教えてあげないと!」
「ふふ、そうだな。それはとてもお悦びになる」
「さぁてと… 」
そう言いながら、アルネはネネルトの姿がまだその場にあることをいい事に、その足を近づけた。
「ネネちゃん! その傷、ちゃんと見せて!」
その言葉に、ふるふると首を横に振るネネルト。
「ダメよ! バイ菌なめてたら、痛い目見るわよ!?」
アルネは、その傷を隠す腕を強引に引っ張った。
「ほれっこっちへ来なさい! ノギジもよ!」
覆面の隙間から見えるその目は助けを求めるように、他の従者の方へと向けられていた。
ノギジはというと、その身をぬいぐるみのように抱えられていた。
しかし、全員があからさまに目を逸らし始めた。
シュリだけは不憫な笑みを浮かべながら、手を振った。
その後ろを、ルクナがついて行くのが見える。
(コワイ… )
すると、コクシネル達が一斉にノギジ達のもとへと集まって来た。
「どっち? どっちがルー族の子?」
「こっちの子かな?」
「この被り物邪魔じゃない?」
そう言いながら、何の悪意もなく軽々と覆面を外す。
その露わになった顔に、アンセクト達は特に驚く様子はなかった。
「そうだね! 目つきもルー族っぽいし、それに… 」
アルネはその一瞬の顔面を見逃さなかった。
その瞳をキラキラとさせ、心も躍る。
(イケメン!!)
即座に覆面を取り上げ、戻すネネルト。
しかし、アンセクト達の言葉も同時に耳に入ってきた。
「匂いも何だか… 」
(匂い… 私も嗅ぎた… )
そう思いながら、顔面を近づけようとするアルネの身体が制される。
ルクナが、その欲望の腕を抑えていたのだ。
アルネが残念そうに、視線を彼らへと戻した。
喜びで騒ぎ立てるアンセクト達が、ネネルトの方へと未だ群がっていた。
(匂い… )
ネネルトは、体験した事のないようなその状況に困惑していた。
しかし、そんな中ライがひと言放つ。
「違うよ、皆! こっちの子だ! ちゃんと見て。この瞳の色… まさに… 」
「「「ルー族だぁ!! わぁ!」」」
間違いに気が付いたアンセクト達は、一斉にノギジの方を囲んだ。
「な、なんだ!? てんとう虫と… エルフか!? 何故俺の事… ふふ、くすぐったい! やめろ… ふふふ」
そんなノギジ達を見ていたアルネは、更に良からぬ考えが浮かんでいた。
(え? え? 何!? あの可愛い現象は! 私も飛び込みたい! 一緒にスリスリし… )
その危なく伸びる脚を再び止めたのは、言わずもがなルクナであった。
行かせまいと、首根っこも掴まれている。
(ルクナ様… 大変だな… )
ある従者は、主人を気の毒に思った。
そして、ネネルトとノギジの傷の具合いを診終わると、彼らの様子がある程度落ち着いたのを見計らって、アルネがアンセクト達の事を紹介した。
「ねぇ、これってまた次にここを出るには、満月になるまで待たなきゃいけないって事よね?」
「そうだろうな。次のタイミングまでは、まだまだ半月以上あるな。俺達はここの者達と歴史の照らし合わせをする。アルネも一緒に聞くだろ?」
「そうね… 聞きたいこともあるし。でももう少し待とうかしら?」
そう言いながら、アルネはお互いを懐かしむアンセクト達を見ながらそう言う。
「そうか… ではそれまで探索… 」
「そうね、それまで、愛でようかしら? ふふふ」
(… 愛でる… ?)
ヴィカはアルネのその言葉に少し気の毒な表情をしながら、アンセクト達を見た。
(はっ! ネネちゃんがいないっ!)
アルネは、微かに舌打ちをした。
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そうして今度は下山の時が来るまでの間、この月華山で過ごす事となったアルネ達。
再び、月華蝶が開くまで約3週間。
その時はあっという間に過ぎていった。
その中で、アンセクト族がバラバラになった現在までの、エルフ達の生活等を聞いた。
約100年程前、大地震による地割れにより、ルー族と悲しい別れをした後の事である。
ライが言っていたように、定期的に女王ロクサーヌが放つ鱗粉の加護がなければ、エルフ達は飛べなくなってしまうのである。
呼び寄せられたエルフ達は、そのまま月華山に留まることとなったという。
その理由は、女王ロクサーヌの命令からであった。
『待ちなさい。あなた達はここで待つの。必ず来るから… さすれば彼らが導いてくれるでしょう』
そう言ったそうだ。
彼らには、狐に摘まれたような思いであっただろう。
しかし ’彼ら’ という漠然としたその人物の情報が少な過ぎた。
その場にいた誰一人として、王女の言葉に対し問いかけることができなかったのだ。
仲間を見捨てるはずがない。
女王のその言葉には、必ず何か意味がある。
女王ロクサーヌの命令とあらば、それを信じ、グッと堪えて従うしかなかった。
(あれ? 月華蝶様って会話した事ないんじゃ… ?)
アルネは、微かに違和感を感じた。
ライが言っていた事と違う。
(ん? 待てよ? 会話じゃなく、一方的なお言葉? こちらからは話しかけられない… とか?)
しかし、その言葉にアルネは、以前にも同じ様な言葉を耳にしたのを思い出した。
そして、月が満ちる前日にその疑問を言葉にした。
「その… 言葉ってもしかして… ライが言ってたものとは少し違うけど… それと同じ様な光景をロクサーヌ様も視たって事なのかしら… ?」
「それはわからないわ… 誰も何も聞けなかったもの… 」
そう応えるのは、ゾルの妹リルであった。
「でも私達がわかるのは、それがこの100年後の今、現実になっているということだけ」
「今が… その現実… 」
「確かなことはわからないけど、私はそう思うの。現にこうやって、仲間達と再会できたから」
リルはコクリと頷き言った。
同じように、その周りにいるエルフ達も頷いている。
(確かに… 本当にそれが私達だとしたら… ? 現実へと近づいてる… もちろん良い方向に… よね?)
アルネのその不安な表情は、アンセクト達へと伝わっていた。
物凄く顔を顰めていたからだ。
「あー… アルネ… ? あなたは、遠い島の出身なんだってね? ノギジから聞いたわ」
「あ… うん、キティール島って言うんだけど… 」
「それってやっぱり… 」
しかし、リルの言葉を遮り、その言葉に一番反応したのは、アディティアであった。
「何っ!? 本当なのか!? お前… あのキティール島から… 」
(あれ? ちょっと待てよ… )
「え? あ、うん… そうよ? アディにはまだ言ってなかったわね? 知ってるの? ライやあの幽谷にいたコクシネル達には、言った気がするけど… リル達はライやゾルから聞いたの? でも私、ずっと島の中にいたんだけど、自分の島がどういう風に周りから言われているのかあまり知らなくて… 」
「あの島は… キティール島は、この世の最果てにあると言われている島よ」
アルネがリル達とそう話を続けている間、アディはその会話がほぼ耳に入って来なかった。
(まさかアルネがあの島の出身だったとは… て事はあの生意気な小僧もか? いや、その前にここって… )
アディの胸騒ぎが、一気に跳ね上がるのを感じた。
「っ待て… 」
しかし、アルネはアディのその言葉の意図が分からなかった。
「どうしたの? … アディ?」
そして一瞬にして、アディの手がアルネの肩へと力強く伸びた。
アルネはここで、やっとアディのその形相に気が付いた。
「何故っ! 何故そんな大事な事を ’ここで’ 言うんだ!!」
「へ? ここで… って? ただ出身地を言っ… 」
「まずいっ!! 走れっ!!」
シュンシュンッ!
ザクッシュンシュンッ!
その瞬間、空から大量の矢が降って来た。
それと共に、何かキラリと光る物が宙を舞うのが目に入った。
目の良いアルネは、もちろんそれを捉えていた。
(なっ! 何っ!? 鉄の矢!?)
その場にいた者達は、その声に一斉に散らばった。
少し離れた所で、周辺の状況報告を受けていたルクナは、何が起こったのかすぐに判断がつかなかった。
現に今、周りにアンセクト族や自身達以外の者はいないと、耳にしたばかりであったから。
「何事だっ!? はっ! アルネはっ… 」
「ルクナ様! アルネ様はアディと一緒です! それより、こちらへっ!」
そう言いながら、ルクナ達はアンセクト達と共に、すぐ近くの洞窟の中へと身を隠した。
アルネはアディと共に。
そして、デイルとその近くにいたハルザは、更に違う方へと散らばっていった。
そしてその矢は、何故かアルネとデイルがいる方へとばかり落ちて来ていた。
まるでその2人を狙うかのように。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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