episode43〜100年越しの再会〜
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月華山に到着し、数日ほど歩くと、ある音と気配に気が付いたアルネ達。
探し求めていたその音は、どんな疲れをも散らせてくれた。
彼らはこの場所へと、長年来ていなかった。
それなのに遠い記憶なのか、仲間の匂いを嗅ぎつけたのか。
コクシネル達のスムーズな案内により、その場所に辿り着いたのだ。
それはそれは美しい風景であった。
水面に映る陽が、とても眩しく光を放つ。
ここには他の場所とは違い、少しばかり緑が多かった。
蔓のような草花に、水面に浮かぶ色とりどりの花の蕾。
「これは… 極楽浄土かしら?」
「え? ごくら… ? じょう?」
(アルネ様、どこでそんな語彙を身につけたのでしょう?)
ヴィカはそう思いながら、一行とは違う者の気配を感じていた。
「ここの花は蕾なのね?」
「ん? アルネ様、お気付きではございませんでしたか?」
ハルザのその言葉に、アルネは首を傾げて聞き返した。
「何が?」
「昼間はここだけではなく、山の中全ての花は閉じています」
「… 確… かに」
(この反応は、絶対に気が付いてなかったな… )
「そして夜になり、月の光が舞い込むと、それを浴びた花々は咲き誇るのです。それが月華山なる由縁なのですよ」
(さすが、長年生きているだけのことはあるわね)
「物知り爺さん… 」
「ん? 何か仰いましたか?」
「ううん! 素敵ね! えへへへへへ」
すると、遠くの方からそれはそれは可愛らしい声が1つ、2つと聞こえてきた。
「その通り! ふふ、素敵でしょ!?」
「この月華の泉は、夜になると更に美しいんだ」
その声のする方へと、アルネは目を凝らした。
そこには透き通るような美しい4枚の羽根を、ひらひらと羽ばたかせながら飛んでいる、小さな男の子達がいた。
(か… かわわっ! あれ? この子達、もしかして… )
「エルフだ! ライ! ゾル! ここに… っ」
アルネの声に驚いたコクシネル達が、一斉にその場に飛んできた。
「みんなぁっ!! 会いたかった! 会いたかったよ! うわぁぁあんっ!」
アンセクト族は互いの存在を確かめ合うように、再開の涙と喜びを解放した。
そこに遅れて走る1人のコクシネル。
ゾルだ。
彼は生まれつき、自身の羽根では飛べないので皆のもとまで、その足で走ってきたのだ。
そこに、いち早く飛びゆく2つの影があった。
「お兄ちゃんっ!」
「会いたかった… うえぇんっ… ひっく… 会いたかったよぉ」
2人のエルフは、ゾルに抱きつき泣き叫ぶ。
他のコクシネルよりも大きなその身体で、2つの愛情をいっぺんに抱きしめるゾル。
その再開を見ていた旅のお供達。
微笑むように、安堵した顔をしていた。
しかし、ここに微笑んでいるとは到底言えない、ニタつき顔をしている1人の女がいた。
「ギャーーー! 可愛い!!」
それを横目に見るヴィカ。
「アルネ様、心の声が… あ、失礼、漏らしているのでしたね」
「そうよ! こんな美しくて、可愛くて、感動的で、超絶可愛い種族、他にいないわ!」
(可愛いが重複している)
「え? じゃあノギジは?」
「ノギジは全く別の、もふもふ可愛いキュンな種族じゃない!」
「……… 」
(全く理解できん)
アルネは隠しきれていないそのニタリ顔を全開にし、ゾル達へと近づいた。
「ねぇ、ちょっとこの子達紹介してくれない?」
アルネは、親指を後ろ向きに立てながらそう言う。
これこそ歪んだ欲望だ。
「あ、うんっ! リルとメル、俺の妹達だ。リル、メル! この人は、ユマン族のアルネとルクナリオ、それにヴィカと… 」
そう言いながら、次々とアルネ達を紹介していった。
すると、その聞こえるはずもない足音が、アルネには聞こえた。
トトトトテト…
「初めましてアルネ嬢! 兄を… 仲間達をここまで連れて来てくれてありがとう! また再会させてくれて、本当にありがとう!」
そう言うと、2人のエルフはくるりとその身を一回転して舞い、華麗な一礼を魅せた。
それを見たアルネは、その思考が止まった。
そう… 止まったのだ。
「… アルネ様? ヨダレを召してますよ?」
「あぁ… 君達… 可愛いね」
(ダメだこりゃ… )
そう思いながら、大聖女の正気を戻すために、ヴィカはその腕をつねった。
「はっ! そうだ! ゾル… 本当に良かったね!」
「あぁ… そうだな」
「ん? なんか… 気になることでもあるの?」
ゾルは、少し晴れない表情をしている。
「あ… いや、そうじゃないんだ。妹達… 仲間達に会えなかったのは、俺のせいなんだ。だから… 」
「え? だって、エルフ達は無事ここへと辿り着いてるのよね? それは鱗粉の加護の為に、女王に呼ばれたからだって」
「うん… でも、他のコクシネル達は? 彼らだけならその羽根で行けたはずだ… 月華山に。何日もかかるかもしれない。それでも行けたはずなんだ」
「え… でもそれは… 」
「コクシネルの皆は、俺の為に行かなかったんだっ… ! だから… 俺さえ飛べたら、すぐにでも迎えに行けたかもしれない… 他の皆より身体が大きい分、体力もあるし… なのに… っ俺のせいで… 足を引っ張ったから… 」
「それは違うぞ、ゾル」
そう言うのは、ゾルの親友ライだった。
その後ろには、コクシネルやエルフの仲間達も、こちらへと集まって来ていた。
「違… くなんかないだろ! だってあの時、お前は行くのを諦めた! 俺が… 俺がいるからっ!」
「諦めた? そんなわけないだろっ!! 諦めなかったから、今俺達はここにいるんだ! こうやって全員が無事で会えたんだ! あの時は好機を待つと決めた俺の判断だ!」
ライはゾルに言い詰めた。
「ここにいる仲間は、お前の事一度も足手纏いだとか、お前のせいだとか一度も思ったことなんてないぞ!」
「じゃあ… じゃあ何であの時っ… 」
「視えたんだ… 大きな竜と… 彼らの姿が」
そう言いながら、ライはアルネ達の方を向いた。
(視えた? まさか… 未来がか?)
ルクナは驚き、その言葉を待った。
「ライ? どういうこと?」
アルネがそう聞くと、ライはしたりと汗を流しながらも頷き、口を開いた。
「信じてもらえないかもしれないけど、大きな竜とその背に乗る2つの人影のようなものが、ここへ来るのが視えたんだ。その竜が… りゅ… 」
言葉が詰まるライに違和感を感じたアルネは、ライの汗を優しく指で拭う。
「大丈夫! あなたのどんな言葉でも、私達は受け止めるし、それに信じる… その一択しかないの」
「… ありがとう。その竜… 実際には竜ではなかったんだけど… 多分その空飛ぶ生き物は、バジリスクだったんだと思う。そして、その背中に乗っていたある人影が言ったんだ」
一同が唾を飲み込んだ。
『燃やせよ』
「え… 燃やせ? な、何を?」
「おそらく、この月華山までの道、全体をだと思う… バジリスクから吹き出されていたその激甚な炎は、月華山を目掛けて放っていたから… 」
「そんな… 月華山全体って… その背に乗った人物の顔は見たの?」
首を横に振るライ。
「男かも女かも… 何族かもわからなかった」
「うーん… でも、バージは火なんか吹かないと思うけど… 多分」
すると、ハルザがある事を思い、口を開いた。
「アルネ様、バジリスクの著書について読まれた事は?」
「あるわよ? でもそんな事は書かれていなかったわ」
「それは、王宮書庫室にあったものではありませんか?」
「うん? そうだけど? その他にもあるの?」
「禁断書庫室です」
「え!? あ、あの、王族しか入れないという!?」
「はい… あ、いや、それは少し違います。大聖女のアルネ様なら、その禁断書庫室も入室できるはずですので… ん? あれ? ご存知ではありませんでしたか?」
「えっ!? 知らないっ! 知ってたのなら、絶対に入り浸ってたもの!」
(… 何故知り得る事がなかったのだろう?)
「左様… ですか。その禁断書庫室に、バジリスクについて、更に詳しく書かれた著書がございます。それによれば、バジリスクは口から火を吹くとされております。また、視線を合わせるとともに、石化を伴う場合があるとか… ないとか?」
「そうなんだ! 帰ったら読もう! あれ? でも私、バージとバッチリ目を合わせて会話していたわよ?」
「えぇ… なので、 ’意志を伴わない種類の方’ ではないかと… まぁなんせ、伝説上の生き物ゆえ、何が真実かもわかりませんので… 」
「確かにそうね! 今度、観察日記つけさせてもらおうかしら?」
「それは… アルネ様にお任せ致します」
(おそらく父上なら喜んで参加しそうだが… 何かあった時が怖いしな… )
ルクナは唸りながら、帰国した際の事を考えていた。
「でも燃えてないってことは… これから起こり得る… ?」
(いや、もしくは… )
「その未来を変えた可能性があるな」
そう確定的に近しい言葉を放つのは、終始黙って聞いていたアディであった。
(未来を… ?)
「… こ、これにはまだ続きがあって。場面が変わったんだ。何人かの影が、それを止めるように誘導していた。色んな人に避難をさせながら、その竜を… 」
「竜を… ?」
「拳一つで制圧していた」
一斉にアルネを見る目撃者達。
それに続いて、その場にいた全員がアルネを見た。
目撃者側の彼らは、それを実際に目の当たりにしていた。
そう、狼の幽谷でアルネがバジリスクに与えた一撃を。
その衝撃的な光景を、ルクナ達は思い出したのだ。
「あ、えぇと… ふふ、それって夢よね? 実現率はどのくらいなのかしらね? うふ… ふふふふふふふふふふ」
(状況は違うが、案外合ってるな)
アディは、鼓動が1段階上がった。
その状況を知らないライは、考えを続ける。
「どこまで本当かはわからないんだけど… でもバジリスクが実際に俺達の前に現れて、僕達の仲間になってるってことは… 既に制圧されてる… ?
もしくはこれから… とにかくその時の僕は、その未来が来るまで待っていようと決めたんだ。谷に留まれば、その者達がきっと来るんじゃないかって、そんな気がして… 僕達は彼らを勝手にこう呼んでいたんだ。 ’導く者’ と… 」
「導く者… 」
「そう、平和へと導く者… これってきっと、君達の事だよね?」
ギクリとするアルネ。
しかし、いくらその拳でバジリスクを制圧したのが自分自身だったからといって、ライの言う ’導く者’ が自分達であるという確証も自信もなかった。
「あ、うん、そう… なのかな? 確かに私達は… バージとお友達になったけど… 」
「お友達… 」
ヴィカは、ボソリと本心が漏れた。
(ということは、やはりアルネ様が未来を変えた… ?)
ライは話を続けた。
「だから、ゾルのせいとかじゃないんだ! そんな風に誰も思ってない!」
「でもそれだけじゃないだろ!? わかってるんだ。皆とは何か違うって… 俺は… 歪だから… 」
「え? どこが?」
「身体だってこんなに大きいし、皆よりも光も強い。形も何だか… 」
(みにくいアヒルの子的な?)
「… ゾル、私にはあなたのその考えの方が、歪に思える。それはねぇ、個性っていうのよ? 素敵な個性。あなたにしかない」
アルネが真っ直ぐにその瞳を見てそう言うと、更に妹達が参戦する。
「そうだよ! 私達… お兄ちゃんの事、一度も歪だとか変だとか、恥ずかしいとか思ったことなんてないよ!?」
(ん?)
「いつも私達のこと考えてくれてる。忌みも嫌われもしてない!」
(忌み嫌われ… ? 何だか誇張されてないか? 俺、そこまで言ってない気が… まぁいいか)
「お兄ちゃんの心を蝕んでるソレは、お兄ちゃん自身だったんだよ! 私達… 大好きだから! お兄ちゃんの事、大好きなんだよ!」
その熱い言葉に、震えを堪えるゾルの身体。
正直な涙は、ゆっくりと頬を流れ始めた。
(でも… 私にだってわかる。ゾルは変とか思われてないと思う… むしろ)
「グスッ… っく… ひっく… ズズ… ッ」
「え? アルネ様?」
ヴィカのその言葉に、同じくアディも反応する。
「泣きすぎだろ… ん? おい… 」
アルネはアディのその服で、涙と鼻水を拭っていた。
(遠慮ねぇな… こいつ)
そして、アルネは気持ちを切り替えた。
同じく涙を拭うライのもとへと近寄り、聞いた。
「ふふ… だってゾル? 私もそう思うわ… あなたは素敵すぎるほど男前よ! ほんと良い兄妹ね」
「うん! ありがとう、アルネ」
更に抱きしめ合うゾル達。
十分にその時間を堪能したゾルに、アルネは見計うように尋ねた。
「ねぇねぇ、少し聞いても良いかな? 先日、私達ルクナの… えと…… 国にある王宮地下通路に行ったの。その時に、光を帯びた動くモノを見たんだけど、あれってもしかして… 」
(?)
「えっ!? それってここから南方にある国だよね!? その地下通路に!? それはきっと僕達の仲間だ! そうか! あの日、確かに南の方にある国に使いに行った者が、何名か居たな… そうか、彼らも無事だったんだ!」
「そうなんだ! だから国に来ればきっと会えるわ! アンセクト族って色々と働き者… というか… すごく信頼されてるのね、色んな種族に」
(ん? アルネ? なんだ… ?)
「えへへ、そうかぁ、無事だったんだ。早く会いたいなぁ」
「あ、ねぇねぇ、あともう1つだけ聞いても良い?」
「ん?」
アルネはライへと耳打ちをした。
「どっちがライの想い人?」
「えっなっ、ちょっ! 何言っ… 」
「ヌフフ… わかるのよ、私には! へへへ」
アルネはその不気味な笑いを、抑えることができなかった。
リルとメルを指差しながらそう聞くと、動揺しながら顔が真っ赤になるライであった。
(メルの方か… ふふ)
アルネの女ハンターとしての勘は、余計なことにばかりに長けていた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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