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episode34〜本当の脅威〜

たくさんの作品から見ていただき、ありがとうございます。

最後まで読んで下さると嬉しいです。


アルネによる、アルネの為の、アルネ式服従法。


先程、それをお見舞いされた者がここにいた。


そのバジリスクの頭部には、巨大なタンコブが浮き出ていたのだ。


単に殴るとも言う。


良い子は真似してはダメです。


(この人だけは敵にしたくない)


(アルネは怒ると怖いからなぁ… 島にいる時からそうだった)


(大聖女があんな事するはずがない… )


何人かはその想いを心の奥に閉ざした。


しかし当の本人は、そう思われているとは、1ミリも思っていなかった。


気合いを入れて、その若干怯えている大きなバジリスクに挨拶をしていた。


「よしっ! よろしくね! バージ! 私の可愛い子ちゃんの仲間入りね! ふふ」


(呼び名が変わっている… )


こうしてアルネの狙い通り、バジリスクこと、バージは素直に彼女の仲間… いや、従順な下僕となった。


それから程なくして、アルネ達のもとに集まったコクシネル達。


この状況に驚いたのは、言うまでもなかった。


アディティアの事は、ここに到着するまでの間に、簡単にゾルがライや仲間達に話していた。


まだ、少しの警戒が残るが、それでも信じるしかなかった。


それよりも、これからバジリスクの背に乗って、月華山まで行くという計画を知らされた時の方が、彼らには信じられなかった。


その慌てた表情ときたら、虫生一と言っていいほどの、光を放ったのではないか。


そして、そのバジリスクが既にアルネの手に、いや拳によって従順な子犬の様になっていたことも…


それから、その場にいた全員はバジリスクの背に乗り、月華山へと向かうこととなる。


しかし、一度その洞窟から出ると、一旦山林へと降り立つアルネ達。


そう、この山脈から出るその前に、大切なことをしなければならなかった。


アルネはバジリスクから数歩離れた所で、膝を曲げる。


そして両手を組むと、目を瞑ったその額に当てた。


どのくらいそうしていたのか。


一同はハルザをアルネの側に置いて、バジリスクの背で、その様子を静かに見守っていた。


(ん? 何だかいつもより… )


ルクナとデイルはそう思い、互いに目を合わせた。

その様子に疑問を持つ者は多少いた。


すると、事情を知らないアディが側にいたヴィカに尋ねる。


「あんな場所で一体何をしているんだ?」


「探し物だ。この山の者達に尋ねている」


「特殊だな? 何を探している?」


「本だ」


「本? それを探すために、わざわざ降り立ったというのか?」


「あぁ。私共も中身を見たことはない。しかしアルネ様にとっては、とても大切な本だそうだ」


「本か… ん? そういえば… 」


そして、思った以上にその応えはすぐにわかった。


「そう… ありがとう… 」


アルネはそう言うと、歪な笑みを浮かべてその場を後にした。


(ないか… )


ルクナはそう思いながら、ゆっくりとバジリスクから降りた。


それと共に、アディもその大きな背から飛び降りた。


そしてルクナよりも大きなその一歩で、アルネへと近づく。


「おい、お前本を探しているそうだな? それは、とても古めかしいが、傷もなく表紙に羽根の生えた杖みたいな… 」


「えっ!? そう! それ! アディ知ってるの!?」


アルネはその冷え切った全身に、血が巡る感覚が一気に上がってくるのがわかった。


心臓の鼓動が、段々と速くなっていく。


「あ、あぁ… あの時… 拾った。白い煙の中から少し光りを帯びていたから不思議だと思い… 」


「そ、それは今どこに!?」


「弟に預けてある」


「ほ… ほんと!? はぁ… 良かっ… 良かったぁ」


アルネは大きく安堵の言葉を吐いた。


「それ、とても大切な物なの」


「そうか… その… 勝手に持って行ってすまなか… 」


「ありがとう! アディ…っ!」


アルネのその両腕が、再び力いっぱいアディの身体を包み込んだ。


「え? あ、あ、いや… 」


(何で礼を言われているんだ?)


しかし、その2つの身体はすぐに引き剥がされる事となる。


「それは良かったな?」


「ルクナ?」


「そうとわかれば、速く向かおうじゃないか」


「あ、うん! そうだね!」


(な、なんか怒ってる?)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そしてバジリスクのもとへと戻ったアルネは、その腰をルクナによって抱えられ、定位置となる場所へとついた。


(う… 子供じゃないんだから… )


アルネは照れながらも、ルクナに礼を言う。


「ありがとう」


「どういたしまして」


その笑顔は、怒っているようにも感じた。


(な、何で怒ってるの!?)


アルネは混乱の糸がちょっぴり絡まったまま、合図をするようにバジリスクの首元を撫でた。


「それにしても、随分早く返事が返って来たんだな?」


「えぇ、力を注いだからね」


「そうか… あまり… 」


「大丈夫よ! 何だか最近、満月の時じゃなくても力が漲って来てるのよね! ふふ、急ぎましょう!」


先頭にはアルネに対し、後ろにはその手を緩めない腰を支えるルクナの姿があった。


(こんだけ広い背中だし… そうそう落ちないと思うけど… ルクナ、高い所怖いのかしら?)


しかし、すぐにアルネはその手を気にする事もなく、ノギジ達の再会と、更なる出会いがある事を想像する。


その感情を高揚したまま、空の旅へと飛び立った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


狼の幽谷を旅立ってから、数分後。


一同は、ただただ広い上空へとバジリスクの背に身を預けていた。


(風が気持ち良い〜こんな世界があったなんて… あのままタナマ村にいたら、絶対にできなかったわ、こんな経験… まさか伝説上の生き物、バジリスクの背中に乗る日が来るなんて)


アルネは最高潮の気分にいた。


先程までいた場所の近くに、滝らしき飛沫は見えなかった。


(そういえば、あの滝… 何でせき止めるような仕掛けがあったんだろう?)


アルネはその疑問を後で誰かに尋ねようと思った。


今はこの素晴らしい世界を堪能しようと、アルネは気持ちを前方へと戻した。


コクシネル達も自身の羽根では飛べないような高さから、下界を見渡す。


「寒くないか?」


ふと、耳元から低く優しい声が聞こえた。


少しビクつくアルネ。

平然を装って、その優しさに応える。


「あ、うん… 大丈夫よ。ありがとう」


(むしろ暑いんですけど… )


「そうか」


アルネの鼓動音が大きくなる中、あちらこちらで感嘆の声が聞こえてくる。


大きな身体のゾルは、もっとすごかった。

大粒の涙を流し、感動のあまり咽び泣いている。

そのせいで折角の視界も見えにくくなっていた。


それを見た仲間達が笑顔で見守る。


生まれつきなのか、自身の羽根では飛べないという事を周りもわかっていた。


そして空の旅もあっという間に過ぎ、数時間ほどで一際目立つ山のような形のものが遠くに見えた。


「え? あれは何? ここからでもわかる。とてつもなく大きい… ピンク色した山… よね?」


アルネが疑問を投げかける。


「あれが目的地の月華山だ」


アディが見慣れたように、そう言う。


「とても綺麗… 目立つからわかりやすいわね」


「あぁ。そういえば、何故お前達は月華山へと向かっているんだ?」


「え? それは、彼らコクシネル達の仲間がいるアンセクト達に会いに… それに、あなたの弟と一緒にいるノギジとネネちゃんに会いに行くためだけど?」


「そうだな… じゃあ質問を変えよう。何故、狼の幽谷を探していた? 山脈に入った時には全員一緒だったろう?」


「え? 何で幽谷を探しているって… あっ! もしかして、山脈に入ってから、ずっと後つけてたのってアディだったの!? あの気配を気配とも感じない… てか盗み聞きしてたの? 悪趣味〜」


「なんとでも言え。それで?」


不安定なバジリスクの背中に、器用にあぐらをかきながら、その答えを待っていた。


アルネはルクナに委ねるように、目線を後ろに送った。


少し考えるようにしたルクナは、コクンと頷いて話す事に同意した。


アルネは簡単にその経緯を説明した。


「種族か… まぁあの一件以来、大体の種族は見なくなったと言われているからな」


「やっぱり、滅びてしまった種族とかもいるのかしら?」


「それはわからない。この近くにいないだけなのか… ひっそりと身を隠しているのか… 」


「そう… 」


「まぁ少なくとも、ユマン族とアンセクト族、それにルー族はまだ生存しているからな… 探せば他にいるかもしれない」


(おそらく奴も… )


そう思いながら、後方へとほんの少しだけ目線を送った。


「そうね! とりあえず、あの月華山へと早く行きましょ!」


「そうだな。だが近くまでは行けるが… 今は中には入れないぞ?」


「えっ!? 何でっ!?」


「月華山は、ある条件下の時にしか開かない」


「開かない? 扉かなんかあるの? 山ってどこからでも入れるんじゃないの?」


「どこからでもは、入れる。問題は ’いつ’ だ」


「ん? んん? どういうこと?」


「フルムーンの時にしか、それは開かれないからな」


(何を言っているのか全くわからんっ)


するとライがゾルの後方から、顔をひょっこりと出して、何か言いたげな顔をしていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そうこうしているうちに山の麓まで来てしまった。


とりあえず、全員がバジリスクから降りた。


「でも… 山に入れないとなると、月華蝶様にも会えないのよね? 泉にも行けないし… 困ったわね… 何より… 」


「え? 月華蝶様なら目の前にいるよ?」


「ん?」


アルネは、彼らの視線の先にある後方を振り向いた。


しかし、その目には鮮やかなピンク色の山が佇むだけだった。


首を傾げながら、ライを再び見るアルネ。


再度ライがアルネの後方をさしながら、見上げた。


「え? ライ? 何を言っ… 」


「アルネ、今背にしているお方こそが、ロクサーヌ女王様だよ」


「… えっ!!? こ、これが!? え? でも月華山… 山って… 」


「月華山でもあるし、月華蝶様でもあるんだよ。山を覆っているのがロクサーヌ様なんだ」


(でかっ!! いや、大きいとは確かに言ってたけど… それにしても大き過ぎでしょ!?)


アルネは驚愕のあまり言葉を失った。


それを代弁するかのように、耳元に顔を寄せたアディ。


「ふ… 尻込みしたのか? 驚きのあまり… 」


アルネは身を離して慌てるように、目を見開いた。


「月華蝶はフルムーンの時のみ、その姿を現す。そうだな、あと十数日程か? それまでは中に入れないぞ? しかも、運悪く天候によって月が姿を現さなかったら、またひと月待たなければならない」


「なんてこったい… 」


「とりあえず、俺は小屋に向かう。お前も… っ!?」


アルネがアディの両肩をキツく握る。


「ちょっと待て… 」


その指は食い込むように、アディの肩に圧力がかかる。


目はバジリスクを威圧できるソレをしていた。


「いっ… 痛っ… 」


「ノギジとネネちゃんは!? 2人は月華山に居るんじゃないの!?」


「い、いや… この近くの… 」


「早く連れてって! 2人に会わせなさい!」


アルネは力を制御するのも忘れ、睨みを効かせている。


(力強っ… こいつ、本当にユマンの民か?)


「あ… あぁ、わかってる。最初からそのつもりだ… 」


「はーやーくっ!」


目が血走っていて、今にも殺りそうだった。


アルネがアディに詰め寄っていると、フワフワと浮かびながら、コクシネル達が近づいてきた。


そう癒しが飛んできたのだ。


「アルネ! 君達は、これから仲間に会いに行くんだね?」


2人の会話を聞いていたライが、そう話しかけてきた。


「え、うん、えと、皆はおの間どうするの?」


その笑顔は指先とは異なり、とても清らかだった。


「僕達は、久しぶりにこの辺を探索してみるよ! 仲間がもしかしたら、この辺にまだいるかもしれないしね!」


「そう? そしたら、満月の日に、またこの場所で落ち合いましょう」


「うん! 月が満ちるその日に! またここで!」


命拾いしたアディは、その肩にアルネの指跡を残しながら、今までにない恐怖を味わっていた。


(コワイ… この女こそ… とてつもない脅威なんじゃ… )






最後まで読んで頂きありがとうございます。

突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。

何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。


また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。

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