episode33〜予想だにしない〜
たくさんの作品から見ていただきありがとうございます!
最後まで読んで下さると嬉しいです。
(いつからだろう… 感情を表に出さなくなったのは。
いつからだろう… この閉じ込めておいた感情が、少しずつ外に漏れ始めたのは… 自分でもわかっている…
それはきっと… 彼女と出会ってしまったから… )
そう… 目の前で、周りの目を気にせず、その巨大な竜の穴を覗こうとしている彼女。
それが臀部の穴とも知らずに。
「アルネ様? それ以上はおやめになられた方がよろしいかと… 」
ヴィカのその声に振り向き、まるでソレが眼窩であるかのように話す。
「え? でも目を開けた時、最初に見た者を主人だと思うって言うじゃない?」
「いや、それは… 」
(またお門違いな事を言っているな。それは、産まれたての生き物が、最初に見た者を親だと勘違いするって言うあの… まぁいいか… )
そう思いながら、横で笑いを堪えている主人を横目で見るヴィカ。
「え? 何よ? 何がそんなにおかしいのよ?」
「アルネ様、そこはバジリスクの目ではなく、臀部の穴です。そこが開く時は… 」
その言葉に、アルネは一瞬にしてその場から離れた。
「もっと早くっ… 早く言いなさいよ! 危ないところだったわ!」
「はぁ… そうですね… 」
「ふっ… ふふ」
ルクナの笑いが溢れる。
そしてアルネ達は、ゾルがライと仲間達をこの場に連れてくる間、ずっと気になっていたことを聞いた。
「アディ、大事なことをまだ教えてもらってないわ」
「ルー族の青年と、黒い種族の青年の事だな?」
「ぶふっ… 黒い種族… ふふ… 」
ここに新たな種族が生まれた。
「安心しろ、2人は無事だ。弟が共についてる」
「っはぁああ! 良かったぁ! もうっ、めちゃくちゃ心配だったんだから! もっと早く教えてよ! それにしても、アディには弟がいるの?」
(やはり、ノギジはルー族か)
ルクナは段々と真実に近づいていると感じながら、耳にしていた。
「あぁ、似てないがな… 」
「ねぇ、2人を攫ったのはやっぱり… 危険人物だと思ってたハルザから、引き離そうとしたから? ノギジを… 守るために? 彼はやっぱりルー族なのね」
「その通りだ。ついでに黒い青年もついてきたが… それにしても、彼は何の種族だ?」
「ふふっ… ルー族をずっと探してたのね… え? 待って、何百年も… ?」
「いや、数年だ。代々を含めるなら、何百年にもなるが… 」
「え? 数年? たったの?」
「ん? 容姿を見ればわかるだろ?」
(容姿か… 確かに、しかしハルザの件もあるからな… )
ルクナは、ハルザに少しばかりの視線を向けた。
「イケメンてこと?」
「… 違う。その見た目じゃない。俺はまだ齢19だ」
(19か… 俺と同じだな)
ルクナはそう思いながら、耳を向けていた。
アディは ‘イケメン’ という聞き慣れない単語に、適応しつつあった。
「ん? どゆこと?」
アルネが混乱している中、ある事を察したハルザが驚いた顔をした。
これまでにない、驚愕の表情だ。
「まさかっ… そんなっ… 生きていたとは… 信じられない… 」
「え? 何? 何!?」
アルネは訳が分からずに聞き返す。
「彼は… ユマン族… 人間です」
「え? 人間? じゃあ私達と同じじゃない。何でそんなに驚いてるのよ?」
「同じではないんです… アルネ様… 彼は、ユマン族の中でも… 太陽の種族と言われている、ドレ族の生き残りです」
「ドレ… 族?」
アルネは王宮書庫室で仕入れた知識を、頭の中から引っ張り出した。
(ドレ族… 確か既に絶滅したはず… 太陽の種族!?)
「ハルザッ! それは誠か!?」
ルクナも思わず、声を張り上げる。
「嘘!? 本当に!? 太陽の種族の!? あの!? 滅びたはずの!?」
「はい… 左様かと… 違うか? あ、いや、相違ございませんか?」
ハルザは言葉と態度を改めた。
「今更だ、話し方を改めなくていい。その通りだ… それにしてもお前、やけに詳しいな」
「わかった。やはり… ということは、ノギジ達と共にいるという、弟君もか?」
「あぁ、そうだ… 今、月華山にいる。ルー族の青年と黒い種族の青年と共に」
(あぁ衝撃の事実が重なりすぎて、頭混乱中… それにしても、何でわかったんだ? そんでもって、ネネちゃんが現代のフェール族だっていつ言おう… 黒い種族なんていませんって… でも面白いからもう少し黙っておこう… ふふ)
アルネは、ネネルトの事で気を紛らわせていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして、アルネ達は暫しの間、その場でゾル達が戻ってくるのを待った。
バジリスクをどう手懐けようと思いながら、その周りを彷徨くアルネ。
また、ルクナも同じようにバジリスクと岩場の間に、身を置きながらある事を思っていた。
「アルネ、こっちへ」
(ん? あ、もしかして何か考えが浮かんだのかしら?)
「あ、うん、何か思いついたの?」
そう言って、岩場の後ろへと連れて行かれた。
「ルクナ? こっちには何もなさ… 」
その瞬間、身体が熱く包まれた。
「え? ルク… 」
「心配かけんな… あんなふうに無茶しやがって」
(何? 少し… 震えてる… ?)
「ルクナ? 言葉遣い乱暴になってるよ? どうし… 」
「どうでもいい」
緩んだその腕の隙を見て、顔を上げるアルネ。
そこには見たことのないような、不安な表情があった。
「ルクナ? 私は大丈夫よ? 何てったって大聖… 」
しかし、その力は再び強まる。
遠くからその様子を見守る事を選んだ従者。
(あぁ… ルクナ様… 本当によろしいのですか? ここまでしたらさすがのアルネ様も… )
「勝手な行動はするな… 」
「そんなのルクナには関係な… 」
締め付けるような強い想い。
「関… 係な… 関…… 」
そして再びその腕が緩み、身体が離れるとその影はアルネを覆った。
いや、それは2人を覆っていたのだ。
「え… ?」
「ルクナ様っ!!」
その大きすぎる影は、再び起き上がっていた。
バジリスクが目を覚ましたのだ。
「まずい! アルネ、こっちへ来っ… !?」
しかし、数秒前の忠告が頭から既に抜けていた。
アルネはその身を、再びバジリスクの前にあらわにしたのだ。
(また勝手に… っ、奴は頭がキレる。今度こそ本当に危険… )
しかし、次の瞬間誰しもが予想だにしない事が起こった。
アルネがその身軽な身体を使って、バジリスクの大きな胴体を次々と登っていったのだ。
そして空高く飛躍すると、その脳天へと拳を振り上げた。
(いやっ! 二度は効かな… なっ!?)
しかし、その拳はバジリスクの脳天へとめり込むように、一点を突いていた。
そして、その一発により数10倍もある身体が地面へと倒れ込んだ。
その場にいた一同は、息をする事すら忘れていた。
言葉なんてものは、もちろん出ない。
一瞬にして静まり返り、そして凍りついたその空気をいとも簡単に破るのは、当の本人であった。
その一言が、空気を割ったのだ。
「あぁ… 最初っからこうしとけば良かった… 」
ここでやっと全員の声が、空気へと振動したのだ。
「「「えぇぇぇーー!?」」」
しかし、すぐにその巨体は立ち上がる事となる。
再び周りの空気が、張り詰めようとしていた。
「アルネ気を付けろっ!」
(やはりあれでは効か… )
次の瞬間、更に一同が驚く事となる。
その巨体は自身の意思で起き上がったものの、アルネの前に頭を下げたままだった。
そして、その細い腕と優しい手がバジリスクの頭へと伸びる。
「よしよし、良い子ね。バジリス君!」
(なんて女だ… )
「… それにしても、さっきからその呼び名は何なんですか?」
ヴィカが怪訝な顔をしながら言う。
「可愛い名前でしょ?」
アルネは満足そうにそう呼ぶ。
彼を服従させたその拳によって、更なる広大な未来に繋がったのだ。
(バカな… こんな事が目の前で起こるなんて… それにしても、絶妙にダサい)
ヴィカは目を細めながら、アルネを見ていた。
そして、ここにまた1人と彼女の不思議な魅力に惹きつけられる者が増えた。
それと共に、比例して理解不能度も上がった。
「あの女… 一体何者なんだ… 」
アディは驚きの声を漏らさずにはいられなかった。
「へへ、アルネは聖女だ。それも100年に1人の大聖女」
デイルのその言葉に、驚愕するアディ。
「なんだとっ… 大聖女があんな事するか? そうは… 見えない… 違う… 大聖女はあんな事しない… 見えない… 」
(大聖女に夢でも抱いてるのか?)
デイルは不憫に思った。
しかし、皆口を揃えて一度はそう言う。
「俺もだ… そうは見えない」
「私もよ、うふ」
「私もです… 」
「ふふふ… 」
そして、そんな風に思われているのも露知らず、心臓が苦しめ始める者がここに1人。
(さっきのルクナ… いつもと全然違った。あんな顔… 初めて見た)
そう思いながら、先ほどまでの温もりを確かめるように、自身の腕を交差させてその身体に触れた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
また突っ走って書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。




