episode24〜星達〜
たくさんの作品の中から見て下さり、ありがとうございます。
最後まで読んで頂けると嬉しいです。
アルネの奇行によって、滝の流れが止まり、そこから現れた先の見えない漆黒の谷。
一行は今、その入り口に立っていた。
「あぁ… 近くに来るとバカでかいわね… これ、こんな暗くてちゃんと進めるの? 大丈夫?」
「灯りがないと、全く見えなさそうですね」
「あ、そういえばアルネ、さっきデイルが水中で気になる物を発見した。ハルザ… 」
ルクナからそう言われ、ハルザはアルネにソレを見せた。
しかし、アルネはソレを観た瞬間、身体中の細胞までもが絶叫した。
飛び出たかもしれない眼球を引っ込めて言う。
「ギャアッ!! 何これ? 何!? ナニナニ!? 何なの!?」
「…… えと、何かの身代わりの類? とか… ?」
「いやいやいや! これ! 人形でしょ!? どう見ても! 何でこんなドロドロなの? ずっと水の中にあったの? それにしても… 」
「そうですね、少し藻が付着してますね。一応拭き取ったのですが… 」
ハルザは優しい手つきで、その人形らしきモノを撫でた。
「え? これ、どうするの?」
「えと… 一緒に連れ… 」
「元の場所に返して来なさい」
アルネは子犬を拾った子供を諭すように言う。
「あ、いや、でもあんな所にあるのは不自然です。何かの手掛かりになるかと… それに… 」
その様子を見ていたルクナが、言葉を添える。
「アルネ、 ハルザの言う通り、これが何なのか少し気になる。どうだ? 何か感じる事はないか?」
「うーん、特に何も… 」
「そうか」
するとルクナは、アルネの耳元に少し近づくと、その美しい声を発した。
「ハルザはこの人形に惹かれているようなんだ。だから、少しの間だけ一緒に… まぁそれが何なのかわかれば、そのうち諦めるだろう」
「… はぁ、ルクナがそう言うなら… わかったわ。確かに、また薄暗い水の底に戻すのは… 可哀想ね」
「え? あ、はい!」
「ハルザが… 面倒見なさいね、ちゃんと」
アルネのその言葉に、ハルザは嬉しそうに頷くと、その人形らしき物をじっと見つめた。
(可愛い… )
ハルザの可愛いの概念は少し… いや、だいぶ他の者より広かった。
(それにしても嬉しそうだな… ハルザ)
そしてアルネは気を取り直して、再度先の見えない谷の方へと向いて言った。
「じゃあ! 入るわよ! 入るっ… わよ?」
「そうだな! 行くか! あ、不安だったら手でも繋ごうか?」
「いっ、いらない!」
「ふふ、遠慮しなくとも良いんだぞ?」
ルクナのその揶揄うような発言を、突っぱねたアルネ。
しかし、彼はあくまでも本気だった。
一行は意を決して、その谷へと足を踏み入れた。
従者達のランタンの灯りを頼りに、暗い谷を進む。
後ろを振り返ると、入り口の細い光は、既に針のように小さくなっていた。
どのくらい進んだであろうか。
何の手掛かりも、距離感もわからない。
真っ暗な闇を進むその足は、進んでいるのかも、わからない感覚に陥っていた。
辺りが本格的に暗くなった所で、アルネ達はある事に気が付く。
「ねぇ… 目撃情報の… 」
「あぁ、 ’光る道’ だろ?」
「うん、無いよね? 全然見当たらなくない? それとも、私達を警戒しているのかしら? ほら、入る前に水浴びしたりして騒いでたから」
(特に騒いでいたのは、アルネ様ですけどね… )
「そうかもしれないな」
その薄暗さに、感覚の失いかけたアルネは、少しふらついた。
「アルネ? 大丈夫か!?」
咄嗟に、アルネの肩を支えたルクナ。
「あ… ううん、大丈夫、ちょっと足下がふらついただけ… 大丈夫! 大丈夫よ! この場にいる方が不安だわ、進みましょう!」
「そうか… しかし何かあれば、すぐに言うんだぞ?」
「うん、ありがとう」
それから幾許か進むと、少し開けた場所に出た。
(あれ? 何だろ? 風の流れが変わった? 少し広い… ような)
すると、足を止めたヴィカは、少し驚いたような声色で呟いた。
「ルクナ様、これは… 上… いや、一面が… 」
ヴィカの後ろに続いていた者達は、その声に前方向、上を見た。
「… っ! すごい… 何これ… まるで… 」
そう、そこには四方八方と、空間一面に無数の光の粒が散りばめられていた。
「すごいな… 本当にあったとは… 」
一同が感嘆の声をあげる。
「星空の中にいるみたい… あぁ、なんて素敵なの… 」
アルネは思わず、ヴィカより前に出て言った。
それはまるで、星空の中を歩いているかのようだった。
「素敵… まるで、星のドレスが踊っているみたい」
人一倍、感受性豊かなシュリのその一言に、何か違和感を感じたアルネ。
(踊ってる? え? 待って… )
「う、うご、動いてる!?」
アルネの言う通りだった。
そしてその瞬間、歩こうとしていたその光り達が、道を作るかのように一斉に捌けた。
「これって、王宮地下道で見たやつと同じじゃない?」
声を顰めて、アルネは言う。
「そうですね… まさかここに ’居た’ なんて」
そう言うのは、後方にいたハルザであった。
「え? いた? ハルザ、これが何か知ってるの? 皆にも見えるって事は、精霊ではないわよね? 生き物のようにも見えるんだけど… ?」
「生き物… そうですね。まさに彼らです。私達がずっと探し求めていた種族だったんです。この者達はおそらく… アンセクト族かと」
「えぇっ!? … あ… 」
アルネは驚いたあまり、大きな声を上げてしまった。
そのせいで、周りの光り達は一斉に蠢き始める。
(アンセクト族だと!? まさかここで会えるなんて)
アルネはゆっくりと近づきながら、その腰を低くした。
「ご、ごめん… 驚かしちゃったよね… えと… 」
(何て声をかけたらいいのかしら? そもそも私達の言葉通じるのかしら? き、緊張す… )
すると、アルネの耳元から小さな声が聞こえた。
「そう、僕達はコクシネル。ようこそ、ルーの幽谷へ、大聖女様」
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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