episode21〜山の精霊〜
本日2回目の投稿です。
最後まで読んで下さると幸いです。
よろしくお願いします。
「な… んで? 連れ去られた?」
何者かの襲撃から、ノギジとネネルトの2人を見失ったアルネ達。
真っ白な煙が捌けたその場所には、テントと焚き火の跡だけが静かに残っていた。
従者達がその辺りを確認したが、2人がいないという他は、何も変わっているところはなかった。
「アルネ… この場に血痕等がない。となると、少なくとも大きな怪我はしてないのではないか?」
(いや… 血を流さずに殺める方法はいくらでもあるが… ここは)
「でもっ… 」
「大丈夫です。ネネルトならノギジを連れて、必ず安全な場所へ移動してるはずです」
「とりあえず場所を移すぞ。ハルザだけここに残ってもらう。世が明けたら… ここを立つ… 2人が戻って来ても戻って来なくとも… だ」
ルクナのその言葉に他の者達は頷いた。
アルネ1人を除いては。
(誰が一体こんな事… 2人とも、無事でいて… )
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まだ薄暗い中、弱々しく陽の光が森の中へと所々に線を成す。
アルネには、それが痛みにも感じた。
夜が明けたのだ。
その足音は、ひとつだった。
ひと晩中見張っていたハルザが、ルクナ達のもとへと報告をしに戻って来たのだ。
それを聞き入れたルクナは、重い表情で頷くと、その足をこちらへと向けた。
焚き火の近くに、座り込んでいたアルネの前で止まるルクナ。
目線を合わせるようにしゃがみ込むと、その口を開く前にアルネの頬を拭った。
その涙で濡れた頬を。
「大丈夫だ… 必ず… 」
「… っん… 行くのね… 」
「あぁ… 目的を忘れてはいけない。悔しいが、俺達は先へ進む選択をしなくてはならない」
「… ん… わかってる… 」
そう言って、その涙をもう溢さぬようにとしっかりと拭った。
「少し… 眠ってからにするか?」
ルクナは一睡もしていないアルネの身体を労り、言葉を選んだ。
しかし、強く横に首を振るアルネ。
「そうか… 準備が出来次第ここを出る。念の為、今日に限っては、ゆっくり進む事にする。体調が優れない時は、すぐに申し出るんだぞ?」
「… はい」
こうして、重い足取りで深い山の中を進み始めるアルネ達。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
しかし、それから2日経ってもノギジとネネルトとの再会は叶う事はなかった。
アルネは祈った。
祈り続けた。
その方法を知らないはずのアルネが、祈る事によって、彼らのもとへとそれを届けたのだ。
その淡い光は、、1つではなかった。
四方八方から、 ’彼ら’ が集まってくるのがわかる。
それは他の2人にも視えていた。
ルクナとデイルだ。
「… っ精霊か!?」
デイルが思わず声を上げた。
そして、その光達はアルネの周りに集まると、その姿を現した。
「大聖女様… 遅くなり申し訳ございません。貴方様の想いは、この山脈中に既に届いておりました。ご安心を… お探しの2人はある場所へと身を置いております」
話すことのできるその精霊は、アルネに言葉を伝えた。
「本当にっ!? 2人は無事なの!? 怪我は!?」
「していない模様です」
「良かっ… 良かったぁ… 」
「しかし、既にこの山脈に彼らはおりません。その為、我々の監視下の範疇を超えております。悪しからず… 」
「え… この山脈にいない… ? どういうこと? あれからまだ2日しか経ってないわよ!?」
すると、アルネ達の会話を静かに聞いていたルクナも、その言葉に反応を示した。
「2人は無事なんだな!? 既にこの山脈にいないと、そう聞こえたが? 一体どういうことだ?」
「ぐ… ユマン… 」
その精霊は、ユマン族であるルクナを警戒した。
「大丈夫よ。ユマンの民は悪い人達ばかりじゃないから… それに、彼は私が最も信頼している人よ… 」
アルネのその言葉に、ホッとした精霊達。
しかしそれは、ルクナも同じだった。
(アルネ… そんな風に思っていたのか… )
「… 大聖女様がそう言うのなら… ユマンの民よ… この山を穢すなよ」
(ユマン族の事、すごい警戒してる? それにしてもこのギャップ… 可愛い)
アルネはその姿に、癒されていた。
しかし、すぐに緊張感を取り戻し、2人の動向を尋ねた。
「それで、2人はどの方向に行ったの?」
「北の方角へと抜けたように思われます。もうひとつ申し上げますと、厳密には ’2人’ ではありません。4人です」
「4人!? やはり誰かに攫われた!?」
「攫われた… そうですね… 感覚の相違があるかもしれませんが、少なくとも私共には、そのようには感じませんでした」
「え? 誰かに、無理矢理連れて行かれたわけじゃないの? まさか… 自らついて行ったって事? でもそんな事するかしら? うーん… 頭が混乱してきた… 」
「素早い足取りでしたので、よくはわかりませんが… 」
「そう… でも2人が無事だという事だけでもわかって良かったわ。ありがとね」
「いえ… 大聖女様に再びお会いできたこと、誠に光栄に存じます」
「あら… ふふ、嬉しいこと言ってくれるのね」
そう言いながら、アルネは精霊の額をちょこんと指で触れた。
「へへへ… 」
「また何かわかったら、その都度教えてくれないかしら?」
「もちろんでございます」
「あと… 私達、ある場所を探しているの… 」
「何なりと」
そう言いながら、精霊達は丁寧にお辞儀をした。
その言葉を聞いて、アルネとルクナは顔を見合わせて頷いた。
「狼… いえ、ルー族がいると言われている幽谷を知ってる?」
「… っ! 幽谷でございますか!? 何故あの場所を探し… 悪いことは言いません。その場所に行くことはお勧めできません。大聖女様の身に何かあれば、それこそこの世界が… 」
「ええと… 世界の均衡を保つために… で通じるかしら? その為に私達は、その場所に行きたいの。お願い。あるんでしょ? 教えてくれない?」
「世界の均衡… わか… りました…くれぐれも無理をしないと約束して頂けますか?」
「うんうん! 約束する!」
「… それはここから北西の方へと進んだ所にあります。その滝の奥にあると言われている深い谷。その滝が止まる時、それは現れる。そう言われております」
「滝… ? 北西に進んで、その滝を探せばいいのね! ありがとう! ちなみに君達は、その奥へは入ったことはあるの?」
「ございません」
「そう… 」
(あれ? おかしいな? 目撃した者の情報によると、そこは暗闇だったと… 遠くに光る道の存在。しかし、滝のことなんて、一切報告が上がってなかったぞ? 一体どういうことだ?)
ルクナは違和感を抱えながら、2人の会話を続けて聞いた。
「ん? でもこの山脈内にあるのよね?」
「左様でございます」
「ねぇ… この山脈に人げ… ユマン族以外の種族って、まだいたりするのかな?」
「はい、おります」
「え!? 本当にっ!?」
アルネはルクナの方を見ながら、思わず歓喜の声を上げた。
「しかし、長年会話はしておりません… その場所には我々さえも、足を踏み入れることが困難ですので… 」
「なるほど… 君達とは異なる者達が存在しているからってことなのね… 仲悪いの? 種族や精霊によっては共存する者達もいるのよね? いつからなの?」
「そうですね… 数十年ほど前からでしょうか… しかし酷くなったのは、ここ数年です」
「酷くなった? どう酷くなったの?」
「それは… 仲の良し悪しではなく… 何と言ったらいいのか… 行けばわかるかと… 」
「滝か?」
「げ、ユマン… 鋭いな」
(警戒心、あらわにしてて可愛い)
「ルクナ? どういうこと? 滝って元々は水なんだから、精霊ならチョロリとすり抜けられるんじゃないの?」
「何か特殊な滝なんじゃないのか?」
「… ギギ、わからないが、その可能性は大いにある。その滝のせいで、俺達精霊はその先へと進めない」
(俺達… 俺って言った… 可愛い)
「うーん、でも、君達精霊でも進めないとなると、私達なんて到底進めないんじゃ… 」
「いや… 以前の報告から行くと、その時に滝があったと耳にしたことがない。その滝が途切れれば行けるんだろ?」
そのルクナの言葉に、精霊は疑問を問いた。
「そいつの見間違いなんじゃないのか?」
「見間違えか… その暗闇の先に、星の道ができていた… こう報告がされていたが… やはり… 見間違えか?」
確信を得ながらも、その言葉を突きつけると、ルクナの思惑通り、精霊は声色を変えた。
「… っ! 星の道… まさかまだあそこにっ… そうか、それなら見間違えではなさそうだな… 」
「そうね。行ってみるしかないわね!」
(おそらくその滝を止める方法が、何かしらあるんだろうな)
「できればその場所まで案内をと思いますが… あまり近寄りたくないゆえ… 」
「いいのいいの! 大丈夫よ! そこまでしてもらわなくとも! これも冒険の醍醐味よね! ありがとう」
「いえ… 再度申し上げます。くれぐれもご無理は、なされませぬよう」
「ふふ… 心配してくれてありがとう! 約束する!」
そう言って、アルネは精霊達に手を振り、その光を送り出した。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
また、心ばかりの評価などして頂けると、励みになります。何卒よろしくお願いします。




