episode20〜ルクナの想い〜
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こうして、数日の時が過ぎ、一行はその先に進んでいた。
そう、入山の時と同じように、何も起こらないまま。
そんな山道に慣れてきていたアルネ。
気になっていた事を、遂に聞いたのだ。
それは昔から彼の近くで、その姿を見てきた者に聞くのが1番良いと思った。
火をくべるヴィカにそっと近づき、尋ねた。
「ねぇ、ルクナは何であんなに女装するようになったの?」
「あぁ、その事ですね… いつか聞かれる事だとは思っておりました。答えは簡単です。美しい容姿が故です」
「美しい… 容姿?」
「はい。ルクナ様は、幼い頃からそれはそれはとても美しく輝いておりました」
「何か… 私情挟んでない?」
「…… それは… 10年程前の事でした… 」
(無視かな?)
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アルネがジールを怪しんでいた頃…
幼きルクナリオ。
何事も卒なく、そして清く正しく過ごして来た彼だった。
そんな彼の言葉に驚いた事は、今でも鮮明に覚えているという。
『憎い… 』
『へ? どうか致しましたか? ルクナリオ様は美しいですよ?』
『この整った容姿が憎い… 』
『… 左様… でございますか』
(急に何を言い出すのかと思えば… )
唐突なその言葉にどうしたもんだかと思う、若かりしヴィカ。
『1つ… 案がある。これはとても良い』
『何でございましょう?』
(嫌な予感がするな… )
『ん? ここは? リノア様のお部屋?』
そう言いながら、ヴィカは不安な気持ちが抑えられずにいた。
『一度だけ… した事がある。あの時は無理矢理だったが… 』
『え? ルクナ様? 一体何を… でございますか?』
『… ヴィカ、ここで待ってろ』
『… かしこまりました』
そう言い残すと、ルクナは第二王女であるリノアの部屋へと入って行った。
数分後。
部屋から颯爽と出てきた美少女に頭を下げる、ヴィカ。
それがルクナとは気が付かずに。
(… ん? リノア様… ? にしては、幼… )
『えっ!? ルクナリオ様!?』
『ふふふ、どう?』
『何なんですか!? その格好は!』
『あら、可愛いだ… でしょ? ふふふ。姉上も何だか大喜びだったし、これなら女達も寄って来ない』
(今度は違う ’モノ’ が寄ってきそうですが… それにしても… )
『そんな… 話し方まで変えて… ルクナ様はそれで宜しいのでしょうか?』
『あぁ… 大満足だ! 早速街に降りてみるとしよう!』
『え!? 今からですか?』
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「… と言うわけなのです。ルクナ様は幼き頃から、それはそれは、ありとあらゆる女性から声をかけられてました。老若男女… 問わずに」
(ん? 男も入ってないか?)
「なる… ほど… あれは本当だったのね… モテ過ぎるって言ってたの」
アルネは深く納得した。
「で、その後本当に街には行ったの?」
「はい… 意気揚々と街に赴いたのは良かったのですが、案の定、違う輩に目をつけられまして… とても大変な目に遭いました… 本当に寸前でした… 」
「な… 何が… ?」
「……… その時でした。彼ら、いや、彼女らに出会ったのは… 」
(あ、よっぽど言いたくない事が起きたのね… )
「彼女ら?」
「はい。それは、今、師匠とお呼びしているシュリーダムさん、その人です」
「え!? シュリさんが? 師匠って… その道のって意味だったのね… 」
(てかシュリさんの本名… シュリーダムって言うんだ… かっけぇな)
「しかし、何故今になってそれを?」
ヴィカが気になり、アルネに尋ねた。
「え? 興味本位?」
「…… 最低ですね」
「うそうそ。だって知りたくなったから… 何かきっかけがあったんだろうなとは、思ってたけど」
「… 気になりますか… ルクナ様の事」
「え? うん、まぁそれは… だって… 」
「だって?」
「あ、いや… 何だろ… 大切になってきたからかな? へへ」
「大切に… ですか。それは一体どういう… 」
「… ん? そのままの意味よ? 大切だからよ? 他に何か?」
「いえ… 」
(これは… 手強いですよ)
「あぁ、眠たくなってきた! 私、もう寝るね! 護衛、よろしくね!」
アルネはわからないその気持ちから、逃げた。
「…… 大切ですか… それってもう… 」
ヴィカはその後ろ姿を見ながら、アルネよりもわかっていた。
しかし、アルネの心臓は昂っていた。
テントへと戻った時の様子がおかしい事に、気が付くルクナ。
「ん? アルネ、どうした?」
「あ、ううん。何でもないよ? 寝るね。おやすみ… 」
「?」
その目は合わせることがなかった。
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それからそのくらいの時が経ったのだろう。
夜が本格的に深くなった時。
アルネはまだ眠れずにいた。
その方にそっと目線を向けるアルネ。
すやすやと眠るその美しい横顔を見てしまったが為に、更に眠りにつくことができなくなってしまったのだ。
(え!? 何!? 私! 病気!? 心の臓が侵されているの!? 何なの!?)
そう思い、外の空気を吸いたくなった。
交代の時を見計らって、テントの幕をめくる。
そこには既にヴィカの姿はなく、ハルザへと代わっていたのだ。
(ふぅ… ヴィカはいないわね… これ以上変な質問されるのはごめんだわ)
そう思い、ゆっくりと外に出た。
しかし、薪がくべてあるその場所から、ハルザは少し離れていた。
(… ん? あれ? 何であんな離れた所に居るんだろ?)
その姿に近づくアルネに気が付いたハルザ。
「アルネ様? 如何されました? あ… 厠で… 」
「違う… ハルザはそんな所で何してるの? あっちへ… ん? 顔色… 大丈夫?」
「あ、いえ、少し気分が優れなく… 申し訳ございません。すぐに戻り… 」
「具合い悪いの? 無理しなくていいんだよ? ハルザ… その傷… 」
アルネはそう言いながら、ハルザの前髪をサラッと掻き分け、顔を覗いた。
そして、首元の傷を見た。
ハルザはすぐに顔を背けると、慌てて否定した。
「いえっ… 大丈夫ですので!」
そう言うと、そのままテントの方へと走ってしまった。
(何なんだ… )
その後にゆっくりと続くアルネ。
しかし、定位置に着くその前に、ハルザはその身を素早くアルネの方へと向けてきた。
そして、そのままアルネの前へと背を向けながら警戒をし始めた。
一瞬何が起こったのかわからなかった。
いや、まだだ。
まだ何も起こっていない。
仮眠をとっていた他の者達も、その異常事態にすぐ様テントから身を出した。
ハルザは相変わらず、辺りを見渡すように警戒をしていた。
(何!?)
アルネにも緊張が走る。
「アルネ様… テントの中へ… 」
ハルザの言葉の通りに、彼女はテントの中へと… 入る事はなかった。
「嫌よ、この目で確かめるまでは戻らない」
「いけません! あなた様の身に何か起こってからでは… 」
「しっ… 何か来ます… 」
初めて聞くその声に、声を止めるアルネ。
(え? 今の声ってまさか… )
その意識が、違う方へと飛んでしまったアルネの腕を掴むハルザ。
そして何かが、こちらへと来るのを感じながら、その場にいた全員の緊張が更に張る。
意識を戻したアルネは、その何かについて考えを巡らせた。
(何だろ… この違和感… 最初から感じていたこれは… 同じもの? ’何か‘ が居るっていうのは、わかってはいるんだけど… 足音も… 気配もしない… 一体何が… )
次の瞬間、その方向からある物が放り投げられた。
そして、一瞬にして辺りが真っ白と化したのだ。
「ゴホッゴホッホッ… なっ… ゴホッ… 」
(何!?)
その場にいた全員が、噎せ返る。
そして、すぐに誰かに布で口を抑えられ、その場から身体を移動させられたアルネ。
(誰!? 息が… 目、目も… )
しかし、すぐにその口から息を吸うのを許された。
「アルネ様、ゴホッ… 大丈夫ですか!?」
「ハル… ザッ!? ゴホッゴホッ… 何とか… 」
ハルザは咄嗟にアルネの口を覆って、安全な場所まで移動させてくれていたのだ。
「… ゴホッ… 一体何があったの?」
「わかりません… ゴホ… 何者かが… 」
「… はっ! ルクナッ! ルクナは!? それに他の皆… コホ… 」
その時、煙る方ではない、違う方から声がした。
「アルネッ! アルネ! 無事か!?」
その姿に、少しほっとするアルネ。
「ルクナ! 良かった! 大丈夫よ! ケホ… 」
すぐに駆けつけたのは、ルクナとヴィカ、そしてデイルにシュリの4名だった。
「あれ… ノギジは? それに、ネネちゃんもいない!? まさかっ、まだあの中にいるんじゃ!?」
アルネが煙が立つ方へと身体を向けた瞬間、ヴィカがその足を止める。
「アルネ様、コホッ… 煙が引くまでは、あちら側へは行かない方がよろしいかと… 一瞬ですが、ノギジがネネルトに抱えられている姿を目撃しました。おそらく一緒にいるかと… 」
「そう… なら、向こう側にいるのかしら… 」
「とりあえず、警戒は怠るな。煙が無くなり次第、向こう側へと行く」
アルネは、その声に逸る気持ちを押し殺し、その場で待機した。
しかし、煙が引き始め、辺りが薄く見えるようになった時には、ノギジとネネルトの姿はそこには無かった。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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