episode19〜仲良き〜
本日2回目の投稿です。
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アルネ達は、ルー族、そして共存していると思われる他種族を探しべく、ムナス山脈へと足を踏み入れていた。
そんな中、アルネはある違和感を口にした。
「ねぇ… さっきからずっと思ってたんだけど… 」
「あぁ俺も感じていた」
「私もです… 随分と… 静かですね… 」
「本当静か過ぎない? 何も起こらないじゃない」
(いや、何かは感じるんだけど… )
「… おかしいな… ムナス山脈だよな、ここ」
ルクナが、そう疑うのも無理はない。
一同がその脅威の山脈に足を踏み入れてから、小一時間程が経っていたのだ。
その山に足を踏み入れた者は、すぐにその脅威を目の当たりにする。
そう言われ、恐れられている程の場所だ。
しかしどんなに進んでも、何も起こらないのだ。
「逆に怖くない? 静か過ぎて… 」
(何故だ… 脅威… 噂だけが、ひとり歩きしていただけなのか?)
ルクナは警戒しながら、辺りを見回した。
すると、先程からずっと黙っていたデイルが、ここでやっと口を開いた。
「いるぞ… 」
「へ?」
「デイル? 何か感じるのか?」
ヴィカは、デイルのその言葉に反応する。
「… 確かに何かいるのはわかる。でも、それが何なのかはわからないな」
ヴィカは、デイルからアルネへと視線を移した。
「アルネ様は如何ですか?」
「うーん… 確かに何かは… でも… 精霊… なのかしら? ルクナは何か感じない?」
「いや… 何も」
「おかしいですね。精霊なるものであれば、ルクナ様も感じるはずですが… 」
(何かがいるのは… 俺も感じていた… こちらに鋭い視線を… しかし一体何が… )
ハルザもその気配に、何かしらのモノを感じ取っていた。
しかし、それを言葉にすることはしなかった。
(様子を伺っているだけなのか? それとも… アルネがいるから、手出しが出来ない… とか?)
「とにかく、何があるかわからない、引き続き警戒を怠るな」
「「「御意」」」
ルクナの命により、今一度気を引き締めた従者達。
そして、アルネはネネルトに再度近づいた。
無論、守ってもらう為ではない。
仲良くなる為且つ、手懐ける為である。
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それからも、不気味な程に道中は何も起こらなかった。
そして、アルネはある事に気が付いた。
「あれ?」
「如何されました?」
ヴィカがその様子に声をかけた。
周りの状況を改めて見るアルネ。
「女装家王子、ガチのおかま、ガラの悪い精霊族、喋る狼、大柄な黒子、万年貧血の従者… 」
そうボソリと呟いた。
「まともなのは、わた… 」
「私だけですね」
そう言葉を奪ったのは、ヴィカであった。
「え?」
「一目稜線ではないでしょうか? まさか… 今、自分がまともだと言おうと思ったりは… 」
「その通りだけど?」
「いやいやいや! だってアルネ様は、野生児溢れる大聖女じゃないですか? と言いますか、もはや野じゅ… 」
「いやいやいやいや! ヴィカだって… ヴィカ… だっ… て… グ… グググ… 」
アルネはそれ以上、言葉が出てこなかった。
どうしても、出てこなかったのだ。
何故なら、一国の王子である側近。
頭脳明晰、文武両道、ついでに言うと顔も悪くなかった。
いや、むしろルクナに引けを取らない程の美男子であった。
(目が潰れるっ!)
「あらら? 如何なさいました?」
その余裕のある笑みに、殺意を抑えるのに精一杯だった。
(どこかで粗が出ないか… いや、絶対に見つけてやるっ!)
アルネは、また新たな目標を掲げた。
お門違いの目標を。
そして、更なる事実に気が付いてしまったアルネ。
「はっ! じょ、女子がいない! 女子が… いない… 」
もはや、独り言になっていないその声は、少し離れたルクナにも届いていた。
「ん? 何ださっきから… 女性より美しき者が、ここにいるだろう?」
「そうよ! 潤いなら負けないわよ?」
(シュリさんまで… )
その肌艶の良い、たわわんとした頬を見るアルネ。
(そう言う意味じゃないんだけどな… )
「はぁ… この先、出会えるかしら? 本当の潤いに… 」
「そうね! 色んな種族の衣装も気になるし! 女子達の装束がとても気になるわ!」
その生き生きとした声に、ちょっぴり苦笑いで返すアルネだった。
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そして一行は休憩を取るために、川沿いへと荷を下ろしていた。
アルネはというと、その近くにある岩場に腰をかけて本を読んでいた。
側には、ヴィカが護衛としてついている。
(あれ? ネネちゃんは… )
アルネが周りを見渡す素振りをしようとしたその時、ヴィカがすかさず言葉を飛ばした。
「ネネルトですか?」
「あ… うん」
「彼は今、周辺の探索に出ております。この場所で一晩過ごすにあたって、危険要素がないかどうかを確認する為にです」
「ん? 一晩?」
「左様でございます。本日はここで、一夜を過ごしますので」
「ふふ… そう」
「何だか… 嬉しそうですね」
「そりゃそうよ! 久しぶりの自然の中の宿!」
(宿?)
「食事! 食料調達なら手伝うわよ!」
「食事… ですか… この辺の植物や水質… その他においても、安全かどうかはまだわからない事が多過ぎます。なので、しばらくは持参したも… ので… 」
「見てっ! 獲れた!」
アルネのその手には、既に活きの良い魚が、逃がせと言わんばかりに暴れていた。
(遅かったか… というか早過ぎだ)
「あの… アルネ様… お気持ちはわかります… しかし命に関わること故、十分に確かめてから… 」
「何言ってるのよ! そんなんじゃ、この先すぐ野垂れ死にするわよ!?」
その声に反応し、声をかけて来たのは、ルクナだった。
「ふふふふふ… 頼もしいな… ヴィカ、アルネの言う通りだ。この先、旅をしていくにつれ、どっちにしろ食料調達は必要になるんだ。今からそれを実践してもいいだろう」
ルクナが近づきそう言うと、少し身を下げたヴィカ。
しかしすぐにその身は、前のめりと戻る事になる。
アルネがヴィカに言い放ったのだ。
「はは〜ん、これだから都会育ちの坊ちゃんは」
「… っんな! 田舎育ちの小娘に、言われたくありませんけどね!」
「ぁん!? 小娘って言ったわね! これでもお年頃の立派な淑女なんだから!」
「どの口が仰っているのですか!? その…… で?」
そう言いながら、ヴィカはアルネの全身を目を細めながら見た。
「ぎゃっ! 今! いやらしい目で見たわね!?」
「果たして、この場にあなた様を、いやらしい目で見るような人間がおられますかね?」
「いるでしょうよ!」
「そう考えられる、大聖女様の頭の中が羨ましいです」
「なっ… ギギ… ギギギギギッ」
歯軋りが止められないアルネ。
その2人の姿に、自然と笑みが溢れるルクナ。
「ふふ… 2人ともその辺にしておけ。仲が良いのは十分に伝わった」
「「仲良くなんかっ… !!」
「ほぉ… そうは見えないがな? ふふふ」
声が重なり、互いに睨み合う2人を見てニヤリと笑みを浮かべながら言うルクナ。
「とりあえず、折角だからアルネの獲ったその魚達を、調理してみる事にしよう」
「ルクナ様!?」
「大丈夫だ… ちゃんと毒味で確認すれば良いんだろ?」
「しかし、後から症状が出るという可能性が… 」
「わかっている… なので今日はそれを確かめ、明日からでも… 」
「美味いな」
「「え?」」
ルクナとヴィカの2人は、その声のする方へと振り向いた。
そう言って、獲れたばかりの新鮮な魚を、そのまま頬張るのはルー族疑いのノギジだった。
その側には、既にアルネもいた。
「え!? ほんと!? どれどれ?」
「いや、お前は流石に焼いてから食え」
「えー仕方ないなぁ」
2人の会話に突っ込む事を諦めたルクナ達。
「「……… 」」
頭を抱えるざるを得なかった。
彼女達の行動だけは、予測不可能なのだ。
「アルネ様… お腹を壊しても知らないですよ?」
「… グモグ… 大丈夫よ。ング… だってこの魚、本に載ってたもの… ほら」
焼き立ての魚を頬張りながら、アルネはそう応える。
そして、持って来ていた中から、ある一冊をルクナ達の目の前に差し出した。
「図鑑… ?」
「うん、1番詳しく載ってるやつね」
その図鑑には、人類がわかっているだけの、ありとあらゆる生き物や植物などの生態が記載されていた。
それを眺めながら、あるページで手が止めるヴィカ。
(この魚か… 確かに食材としては、大丈夫そうだが… )
「いや… 魚自体が大丈夫だったとしてもですね… そこで生息していた川の水質が… 」
「それに私、身体は丈夫な方だし!」
「いや… そういう問題じゃ… 」
「ふふ… ふふふふ」
ルクナは、更に笑いが込み上げていた。
「ルクナ様… ?」
「さすが大聖女様だな! 肝から違う」
その言葉に、アルネも考えを示す。
「まぁルクナは一応、今日はやめておいたら? 大切な身体なんだし」
(それは、アルネにも言える事だと思うが… )
「ふふ、そうだな… それに、従者達の睨む目も怖いしな」
「当たり前です」
ヴィカは側近として、厳しい言葉を放った。
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こうして日が暮れるとともに、夕餉を終えた一行は、寝支度の準備へと取り掛かっていた。
既に見回りを終えたネネルトの姿も、そこにあった。
アルネが近づこうとすると、何故かその身を隠そうとする。
その事に、アルネは不満を抱えていた。
テントは全部で2つ。
1つは言わずもがな、殿下であるルクナリオの場所だった。
それはそれはとても立派なものであった。
そうしてもう1つは、小さいながらもそれなりの物が張られていた。
そのテントは、意図とは別に従者達の雑魚寝の場所となっていた。
本来であれば、ルクナとアルネは別にすべきだった。
その為に用意したはずだった。
例によってこれまで毎日共に床を過ごしてきたので、今回も同じテントで過ごす事となったのである。
就寝中はヴィカ、ハルザ、ネネルトそしてシュリが順番に護衛を担当する事となる。
(はぁ… 旅、楽しい)
しかし、アルネはこの先大きな選択を迫られる事となる。
思いもよらぬ事実を知る事となるのだ。
しかし、それはまだまだ先の話である。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
何かお気づきの点があれば、いつでもメッセージお待ちしております。
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