episode17〜王宮地下〜
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出発の朝、陽がまだ登っていない刻。
誰かにそっと起こされたアルネ。
「… い… おい… アルネ… 」
「ん… ん? ルクナ? え!? 寝坊しっ… ん? まだ夜? 出発の時間には、随分早いわよね?」
「あぁ、突然すまないが、少しばかりついて来て欲しい所がある」
廊下には、ヴィカとハルザの姿があった。
(ん? 何だろう? 急用?)
寝ぼけ眼のまま、連れ出されるアルネ。
寝巻き姿のその肩には、寒くないように配慮された質のいいブランケットが掛けられていた。
ルクナは首元のある物を確認するように、チラリとアルネの方を見た。
「ねぇ… こんな夜更けに一体何処へ行くの?」
「行けば… わかる」
そして、その足は段々と暗く深い地下へと降りていった。
「ここだ」
「ここ? ん? 地下牢… ではなさそうね… 来てもわからないわ… ちゃんと説明してくれない?」
ヴィカのその手に持つ灯りが、ある物を照らした。
「この扉だ」
「扉? 随分と古そうな扉ね」
「そうだな… 俺もこの存在を知ったのは、つい先程の事だからな」
「え!? ついさっき!? どういう事!? … ん?」
アルネが頭が回らなかったのは、寝起きだったからではない。
この城を長年住んでいたルクナ本人が、そう言ったことに驚いていたのだ。
ルクナはその目を、ハルザの方へと向けた。
「あぁ… ついさっきだ。ハルザから聞いた… 」
「申し訳ございません。念の為でございました… 」
「何の念だ? 何故俺にも黙っていた」
「その ‘鍵‘ が本物だと確信したのが、つい最近だったからです。先程も申し上げましたが、先日、それを確認させて頂きました。その… アルネ様の物も同様です」
ハルザはそう言うと、アルネの胸元にかかっている物を見た。
その視線に、アルネは脳裏にある事が浮かんだ。
「これ… ルクナと形は違うけど… 歪で同じ様な… まさか… 本当に何か繋がりが?」
「左様でございます。アルネ様の鍵と… ルクナ様の鍵… そして… 」
そう言いながら、ハルザは自身の首元から何やら差し出した。
「なっ! ハルザ!? まさか! 貴方も同じ様な物を持っていたの!? どういうこと!? これは一体何に… あ… 」
さすがに勘付いたアルネは、目の前にある扉を見て言葉を止めた。
「そうです。この鍵は3つあったようなのです。そしておそらくこれを合わせる事により、本来の鍵となる。この扉に描かれている模様の欠片が、それぞれの鍵に描かれているのではないかと… そして、それが現れた時、この扉は開かれる。私はそう思いました。まさかその鍵が3つも存在するとは思ってもみませんでしたが… 1つは大聖女が持っている… ということは、考えにございました。
案の定、アルネ様のその胸元にかかっていたのが目に見えた時には、心が躍りました。しかし、それだけではなかった。もう1つをルクナ様が持っていたとは、思いもしませんでしたから… 」
「そうか… して、これをどう1つに綱ぎ合わせるんだ?」
その3つの鍵を見て、アルネはふと言葉を漏らした。
「何だかパズルのようね… 」
(パズル?)
そう言い、おもむろに形を繋げ始めるアルネ。
「…… こうやって… こう… 」
「「?」」
「ん? あれ?」
「「………… 」」
「…… ごめんなさい。私の勘違いだった… みたい… 」
「いや、勘違いなどではない」
そう言って、ルクナは難なく鍵というピースを合わせた。
(バカなのか?)
その心の声に、アルネは思いっきりヴィカを睨んだ。
「え? な、何です?」
動揺したヴィカがそう言うと、アルネは更に目を細めて言う。
「今、バカって聞こえたっ!」
(… 鋭い… )
ヴィカは、思いっきり首を横に振った。
その3つが合わさった鍵を、手に持ちルクナは言う。
「開けるぞ?」
その場にいた全員が、同時に重く頷いた。
すると、思った通り、その鍵で扉が開いたのだ。
「開いたっ!?」
アルネが嬉しそうな声でそう言う。
そして、ハルザが扉をゆっくりと開けた。
その瞬間、身体中の肌がざわりとするのがわかった。
目の前の光景は、真っ暗な壁一面に、無数の星があると錯覚するほどであったのだ。
「何だ… ? これは… 」
ルクナが息を潜めて、ソレを凝視する。
その星の様なツブテ達は、一斉に通路の先の方へと流れるように捌けて行ったのだ。
そう、まるで意思があるかのように。
そして通路は、瞬く間に本当の真っ暗闇へとなった。
「え? 今のって… 何かの生き物… ?」
「あぁ… そう見えたよな? 一体何だったんだ? 無造作に動いていたように見えたが… 」
アルネは頷いた。
しかしその中でも、これらの光景に思い当たる節があるかのように、黙り込んでいた者が1人。
(あれはもしかして… いや、しかし確信が持てない… )
そう思うハルザは、その考えを一度飲み込んだ。
「とりあえず今追いかけても、あの素早さじゃ捕まえて確認するのは困難だろう」
ルクナの言葉に、同意を示す一同。
「ねぇ… この通路は… どこに続いているのかしら? どうするの? 確かめる? 進む? 行って大丈夫なの?」
「いや、今からだと出発の時間には間に合いそうもないな… うーむ、どうするか… 他の者に調査を進めさせるのが1番だが…… そうか… 奴に頼もう! 最適な者の心当たりがある」
「ルクナ様… もしかして彼を… サルーンディアを呼ぶつもりですか?」
「あぁ… そのつもりだが… まぁヴィカの言いたいこともわかるぞ。しかし、発掘に関しては… 」
「いや… お言葉ですが、これは発掘とは少し異なるかと… 」
「… ねぇ。サルーンディアって誰?」
アルネは初登場のその名の人物が、誰なのか気になり尋ねた。
「あぁ… 彼は庭師だ」
「庭師? 庭師が発掘なんてできるの? いや、発掘じゃないけど… 」
「そうだな… んー… 何というか、サルーンはそういう道の達人だ」
「そういう道? よくわからないけど… でもそれなら最… 」
「達人を通り越して変態なんだ。夢中になり過ぎて、その道具を手に持つだけで人格まで変わってしまうくらいだ。だから普段は、庭いじりをさせている。その欲望を抑えさせてる。庭師としてな」
(たまに、庭の発掘をしそうになって、土が掘り起こされそうになっているがな)
「そう… なんだ。よくわからないけど… でもその人の事は、信頼しているんでしょ?」
「あぁそれはもちろんだ。身内だからな」
そう言いながら、ルクナは何故かヴィカの方をチラリと見た。
「身内? ん? 王族って事? 」
「いや、俺の身内ではなく… 」
「私の弟です」
その言葉は、ヴィカの口から発せられたものだった。
「え? ヴィカの弟なの?」
こくりと頷く一同。
「なら、安心して任せられるわね」
「だが変態だぞ」
「変態代表です」
「一級の変態庭師です」
(どんだけ変態なのよ… なんか、会うの怖くなってきた)
「しかし、恐れながらも確かにサルーンディアが最適であるのは、私も… 賛成ではあります… 少し… いや、だいぶ不安ですが… 」
(最適なのに… 何がそんなに不安なんだろう?)
「とりあえず、手配を頼んだ。急ぎであるが、数名のチーム編成を頼めるか? あとはサルーンに頼んでも問題… ないだろう… 多分」
(… 何でそんなに煮え切らない言い方なのよ?)
「御意」
「鍵は、どうするの?」
「そうだな、サルーンに預けても問題ないだろう。ここを調査する時以外は、施錠しておいた方がいいからな」
「わかっ… たわ… くれぐれも… 」
「あぁ大丈夫だ… 変態だが、信頼はできる奴だからな… 変態だが… 」
ギュッと握りしめる、その鍵を名残惜しそうに見つめるアルネ。
そんなアルネの頭を優しく覆う大きな手に、安心して頷いた。
(とりあえず、部屋に戻ってもう少し寝るか… )
こうしてアルネは数時間後、後悔する事となる。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
またまた突っ走って書きたいように書いてしまっているので、文章が乱れていることもあるかと思います。
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