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国滅ぼしの魔女  作者: 29はるまき
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襲撃

やっぱりパーティ組んで正解だった。これからもよろしくな、ミモ」

 大きな角を一本だけ持ち帰り、報酬をもらう。今回はちゃんと半分にして銀貨五枚だ。

「ミノタウロスを倒したのはミモだからもっと受け取ってくれれば良いのに」

 彼はそう言うが、ミノタウロスまでの敵は全部彼が倒したんだから、やっぱり半分にするべきだ。私は首を振り、銀貨五枚を大事にしまった。

「それじゃあ、今日はオレのおごりで飲みに行こう」

「お酒飲めないので……」

「ならジュースでいいな、オレは飲むけどな!」

 おごってもらい、そして野宿のために森に行こうとしたが、今日は宿を取れと言われる。

「私、宿に使うお金は無いですし、それ以上おごられるのは困ります……」

「だめだ、たまには贅沢するべきだ。頑張ったご褒美だとおもって、さ。まあ、安い宿くらいならいいだろ?」

 こっちこっちと案内されたのは、街の入り口にある古いレンガの宿屋だ。二階建てだが、趣がある感じだ。

「ここなら銀貨一枚で泊めてくれるってよ」

 彼はそう言って銀貨を投げて、今回はお言葉に甘えることにした。

「オレはこっちの銀貨五枚の宿に居るから、なんかあったら呼んでくれ」

 私の泊まる宿よりグレードの高い宿(といっても一般的な価格)に入っていき、私もレンガの宿に入った。部屋は一階のみが空いていて、窓も無く四畳くらいの広さにベッドしか無いけど、久しぶりのベッドに身体が溶けるように眠ってしまった。少しくさいしマットも薄っぺらいのに、地面で寝ているより断然良い。家に帰りたい……

 ――突然、何かの衝撃と轟音が私を襲った。辺りは真っ暗で何かが私にぶつかっているような感覚はあるけど痛みは無い。人の叫び声と魔物の雄叫びが響いていて、私は起き上がろうとしたけど、何か真っ黒なモノに覆われていることに気がついた。触れてみれば、レンガのような質感……私はレンガに潰されている?

 更にその上に何かが通った振動を感じる。でも、振動だけだ。バリアのようなモノで私は守られているようだった。

 逃げないと、と思ったが、起き上がろうにも上のモノが邪魔をして動くことが出来ない。呼吸は苦しくない。でも、このままはまずい。

「えっと、私を街の上空一キロのところへ移動させて」

 その瞬間、私は瞬間移動したようで、街の上空へと移った。そして落下し始めたので身体を浮かせてから私のいた宿を見たら、巨大なミミズのような魔物が横たわっていた。暗くてよく見えないけど、動いていないからもしかして討伐されたのかもしれない。

 ゆっくり降下しながら様子をうかがえば、私を呼ぶ声が聞こえた。

「ミモ! ミモ! いるか! ミモ!」

 ヘンリーさんだ。音を聞いて駆けつけてくれたんだろう。私は街の入り口の陰に降りて、外の散歩から帰ったかのようにおーいと手を振った。

「中に居なかったのか」

「あ、えっと、落ち着かなくて散歩してて。危なく潰されるとこだったなー!」

「裸足で散歩か、楽しかったか?」

 ギクッとしたが、寝ぼけて忘れたと言えばそれ以上は聞かなかった。

「そうか、無事で何よりだ」

「そ、それよりけが人とか……! 宿に居た人……!」

 私が宿に駆け寄ったが、受付のおばさんが、怪我はしてるけどみんな無事だと言った。

「あんたも無事で良かったわ、部屋からいつ出たの?」

「え? あ、私受付の前通りましたよ?」

 ぎくりとした。窓も無いのに外に出た形跡が無いとおばさんに言われているのだから、怪しまれるのは困る。

「あらあ? うたた寝してたのかもねえ」

「そうですよ! じゃあ私は野宿するんで!」

 ダッシュで街の外に走って行くが、ヘンリーさんに荷物は! と呼び止められた。

 魔物に潰されて瓦礫の下敷きになってしまい、荷物は全部そこにある。しまった、お金もそこだ。うなだれながら戻ってきて、瓦礫をどかそうにも私の腕力ではキツい。荷物出てこいとか今更言えないし。

「瓦礫の中から探すのは明るくなってからにして、今日はオレの部屋を貸してやるから」

 ヘンリーさんはため息交じりでそう言うが、私は慌てて首を振る。

「や! それは!」

「なにもしないさ! 野宿の時だって触れたことすら無かったろ! そんなにオレが信用無いのか」

 そんなこと言われると申し訳ないじゃないか……

「お言葉に、甘えさせてもらいます……」

 そして宿に入り、ソファーとベッドがある。ヘンリーさんはソファーに座り、私はベッドで寝ろと言った。

「せっかく宿を奢った手前、椅子で寝かせられないだろう。おとなしく寝てくれ」

 さっきからずっと怒ってるような雰囲気で彼はそう言い、座ったまま目を閉じる。申し訳なさ過ぎて、ごめんなさいと小さくつぶやいてから、ありがたくベッドに横になった。

 さっき居た宿よりふかふかのベッドなのに、なんだか居心地が悪かった。




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