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国滅ぼしの魔女  作者: 29はるまき
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魔法騎士団長

 それから数日、街の中を好きなように移動しているから地理もわかってきた。この世界の情報も段々手に入ってきて、大分なじんできたと思う。最近は魔物の発生率が高いみたいでよく討伐で呼ばれるけど、冒険者ギルドのシステムも存在しているようで、腕に自信を持っている冒険者も加勢に加わっていたが、私が現れたことによってその仕事は回ってこなくなったという。その代わりにダンジョン攻略というのに集中できるから、冒険者の方から苦情は来ていなかった。

 この世界のモンスターや魔法、希少な資源やモンスターの巣窟となっているダンジョンというものも、遙か古代の錬金術師が創ったものだという。一人の錬金術師で世界の常識が一気に変えられてしまうだなんて、その錬金術師が何者だったのかは不明。魔女だったのかもしれないとも言われているし、魔女を生み出しているのも彼だなんてささやかれている。結局謎のままだ。

 そして魔法は人々に受け入れられ、日常には欠かせない存在となっている。

 火を扱う者は火の魔法が得意だし、加工は風の魔法で切っていたり、水の魔法で街を清掃していたり、様々だ。

 空を飛んでいた兵士も風魔法で飛んでいたと言うから、自分に合った職に就いているんだなと街を眺めていた。

 だけど、すべての人間が魔法を使えるわけでは無い。三割ほどは無属性、魔法無しだという。でもそういう人は得にのけ者にされることはないので、魔法使えてうらやましいな程度らしい。そのかわり身体能力は魔法を使える者よりも優れているようで、足がやたらに速いとか、一人で一トンの岩を持ち上げるなどという特色があるそうだ。その人達が主に騎士団に入っているのかもしれない。

「魔女様! 西に魔物です、すぐ来てください!」

 空から飛行兵が叫んで私を呼んでいる。私は人に紛れてしまってるので探すことができないから、笛と大声で私に伝える。

「私よ、飛べるようになれ」

 そうつぶやけば、思った通りに空を飛ぶことができる。ふわりと身体が浮いて飛行兵へと飛んでいく。

「わあ! 魔女様いらしていたのか!」

「魔女様いってらっしゃーい!」

 下の方で私を応援する声が聞こえて手を振り、飛行兵と一緒に現場へ向かう。駐屯地からも離れた岩山だが、そこに着いた頃には白い二つ首の大トカゲが氷柱で貫かれて地面に這いつくばっている。多分死んでるわ。

 その現場には金髪のポニーテールに、胸には黄色い星に国の紋章が刻まれている団長の証を付けたベルディ団長が一人居たのだった。

「やあ遅かったね魔女ちゃん」

「ベルディ団長が討伐してくれたんですね、良かったです」

 私にフランクに話しかけてくるのって子供かこの人くらいしかいないわ。

「魔女ちゃんのお仕事奪っちまったし、埋め合わせに今からデートしない?」

 この人魔女が怖くないのか手込めにしようとしているのかただの女好きなのかわからんのが怖いところです。

「食事は……間に合ってます」

「それじゃあ、ワインかシャンパンでも」

「お酒は飲めないので」

「あれー? もしかしてオレ避けられてる?」

 そういうこと口に出すんじゃ無いよ。

「あの、あんまり男性と接していたことはないので……」

 なんて言ったら跪いて、手を取ろうとしたんだけどペンッてはじかれてしまう。

「……魔女には触れられられないって本当なんだな。こんなかわいこちゃんに触れられないなんてついてないぜ」

 あーあ、とため息交じりで立ち上がり肩を落としていた。

「魔女ちゃんちょっとこの魔物の観察でもしてみる? この魔物のうろこって結構良い材料になるんだよ」

 そう言ってベルディ団長は小さなナイフのような氷柱を作り出して、倒れている魔物のうろこを剥がす。白くつややかなうろこは車のボディのように光を反射していた。

「これを粉にして溶かしてかたどると、オレ達が着てるような甲冑ができあがるのさ」

「え? 鉄とかじゃ無いんですか?」

「鉄とか金属は重いからな。魔物のうろこは何でか知らんが、砕いて再度固めると強度が五倍になるんだ。世界って訳わからねぇよな」

 それはマジで訳わからないな。異世界マジックですね。

「白いのは塗装しやすいから人気が出るんだ。ま、オレが身体の殆どをぶっ潰しちまってるから使えるとこは少ねぇけど」

 よく素材屋に怒られると言うからふふっと笑ってしまった。

「笑った顔なんて更にかわいいなぁ。そういえば魔女ちゃん、名前なんて言うの?」

 手に持ってた氷柱とうろこをぽいっと捨てつつ名前を聞いてきたが、私はそこでハッと気がついてしまったのだ。

「私、王様にもにも自己紹介してない!」

 魔女様で通ってたから名乗ってなかった! 名乗るタイミング無かったって言うか。

 そしたらベルディ団長はぽかんとしてから大笑いし始めて、魔女ちゃん抜けてる! なんて言われたから恥ずかしくて顔が熱くなった。うっかりしてただけだもん!

「あーはっは! 魔女じゃ無かったら今頃悪い男に食べられちゃってるよ!」

「ベルディ団長みたいな?」

「やだなあ、オレが遊び人みたいな言い方しないでくれよ、一人一人大事にしているだけさ」

「団長そう言って昨日ヴィヴィの大きな飲み屋で女にぶったたかれてたじゃないですか」

「飛行兵お前見てたのかー!」

「その女はオレの姉貴ですー」

「お前の姉貴お前に似ずに美人だなー!」

「よく言われます」

 そこで三人で笑って、さて帰りますかときびすを返した。この魔物の処理も飛行兵さんが報告しないといけないしね。

「待って魔女ちゃん、名前を聞いてないよ」

 するっと前に現れて私の歩みを止める。うん、この人遊び人だろうな、こうやって女引き留めて一夜の夜を楽しんでいるんでしょうよ。でも悪い人では無いのはわかる。

「稲葉美森って言います。美森が名前です」

「ミモリ、不思議な響きだな。魔女にぴったりだ。じゃあ今夜どこの店に行く?」

「こちらに倒れている魔物さんとデートしてください。もしくはコレマン団長とでも」

「コレマンとは大体ほぼ毎回飲みに行ってるから増やさなくても……女の子と居るだけでオレは癒やされるのさ」

「……魔法騎士団長ってモテると思うんですけど」

「モテるモテる! この国の女の子千人とは熱い夜を過ごしたよ! でもね、カワイイ女の子はいっぱいいるほど良いのさ! 多くて悪いことなんて無い!」

「団長そう言うから女の子逃げちゃうんですよー」

「私もこういう人はいやです」

「そして残ったのは百数名の女子のみ……」

「「多いよ!」」

 しばし沈黙が場を支配したが、ベルディ団長が吹き出してつられて私達も笑ってしまうのだった。


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