魔女と呼ばれて
異世界ものはずっと書いてみたかったもので、思うがままに打ち込みました。
ギャグ要素も入れているつもりなのですがシリアス気味かも知れません。
一応誤字脱字などの校正は行ったのですが、たくさん残っています。すいません……
主人公はチート級なのですが、無双をするような性格ではないです。一応恋愛方面で、年の差(お相手40歳くらい)が嫌な方はがっかりすると思います。お相手もイケメンではありません。不細工ってほどでもないですがお覚悟を。
―― 視界が真っ赤に染まる。……数秒、音が聞こえなくなり、視界が晴れたときには街を見下ろせる山の上に一人座り込んでいて、そしてクロバハール王国は三つの街それぞれに空につながるほどの炎の竜巻のような柱が立っていて、すべてを燃やし尽くしていた。
『国滅ぼしの魔女』
桜が散っているまだ肌寒い季節。だけどミニスカートと短めのソックスはやめられない女子高生、名前は稲葉美森。
そんな高校生活ももう最後で、大学受験に向けて勉強をしなければならないのだが、息抜きに異世界モノを漁るのが日課になっている。
異世界転生、異世界転移というモノが最近流行っていて、漫画やアニメの題材になることが多くなった。私はその系統の話は小さな頃から好きだったので、あればあるほど好みを探すことができるので増えてくれているのは正直ありがたい。
高校からの帰り道、夜道で今日も好みの小説を探してネットの海をさまよっている。スマホを指ですいーっと画面を滑らして、目で文字を追う。数は多いけど、好みのモノを探すのは結構大変だ。私もわがままになってしまって、条件が厳しくなってしまうから、なかなか好みを見つけられないのだ。
うなりながらトボトボと歩いていたが、足下を見ていなかったためにズルリと階段から足を滑らせて、身体は前へと倒れていく。とっさに手を付こうと右手を伸ばし、そして階段に触れる前に目の前が真っ黒になる。手を付こうとしていた場所は何もなくなり、私の身体は一回転して闇の中……謎の空間にいることに目を見開いて、そして顔面から落下した。落下した高さは転んだ程度くらいの高さなのでけがは無いが、真っ黒の闇だったはずなのに草と土の匂い、そして感触を覚えて身体を起こした。
そこは緑豊かな高原で、燦々と二つの太陽が私を照らしている。さらりと風が頬を撫でて、その頬をぎゅっとつまんだら痛みがあり、夢では無いことは確認できた……と、思う。
これがかの有名な異世界転移というモノなのか、マジか、私がやってしまうか。マジですか。自分がその展開になるとは思いもよらなくて唖然としてしまったけど、来てしまったからには仕方ない。帰る方法を探すか、この世界に適応するかだな。なんたっていくつもの異世界モノを見てきた私も、自分だったらこうしたい! など夢を膨らませていたから、適応は早いと思う。
荷物は見当たらない。遠くに落ちたか、こちらに来ていないか……。私は立ち上がって当たりを見渡し、そして二つの太陽を見上げる。間違いなく地球では無い、異世界なのは間違いは無い。そしてこの世界はファンタジー系なのか自分の世界に近しいモノなのかで話は変わってくる。人間がいたとしても原始人ってのも困るし、異形の異世界人の可能性もある。あとは魔法だ。魔法があるかないか。
私は試しにステータスと言ってみたが反応は無い。じゃあ魔法はどうだろうかと「ファイア!」と言ってみたが何も起こらない。そのほか魔法っぽい言葉を発してみたけど何も起こらなかった。魔法が無いのか、もしくは魔法を使うためには杖などの媒体が無いと行けないとか……あり得る話ではある。そうなれば情報収集だ。
高原からでは人里は確認できないが、アスファルトでは無い道らしきものはある。文明はあるようだ。
その時、私の後ろの方から「危ない!」と子供の声が聞こえた。驚きながら振り返ればツタが絡みついたオオカミのような生物が、私に襲いかかろうと飛びかかってきていた。あまりにもびっくりしすぎて動くことすらできずにいたが、そのオオカミは「ファイアアロー!」の言葉とともに炎の矢で貫かれ、燃え上がり私の前でバタリと倒れた。身体に巻き付いていたツタが更に火の勢いを強くしているみたいで、まだメラメラと炎は踊っている。
すると少し遠くの方に子供が二人いて、手を振りながら私の方へと走ってきていた。この子供が魔法を放ったのだろうか。
「お姉ちゃん大丈夫? 危なく食べられちゃうとこだったよ!」
ピンク色のワンピースと赤いポンチョをかぶったベレー帽の女の子が駆け寄った。髪が青色、眼が黄緑だなんて本当に異世界だと痛感する。そしてその後ろからはベージュの普通のシャツに茶色い短パンの男の子が現れ、そしてオオカミに手をかざして「ウォーターベール」と言えば、燃えているオオカミは薄い水の膜のようなモノに包まれ、炎は消えた。
「これで山火事も心配ないね」
女の子と同じ髪と目の色を見て、恐らく兄弟なのだろうと思う。
「……ありがとう、助かったよ」
まずはお礼を伝え、情報を得るために彼らに質問することにした。大人じゃない方が安心する。もしこの世界で異世界から来た者が歓迎されないとしたら大変な目に遭うだろうし、子供だったら大丈夫だろう。……いや、魔法使ってたから、何かあれば私危ないかも……
「お姉ちゃん見慣れない服着てるね、旅の人?」
女の子が質問してくれたので、旅して迷子になっちゃってと言ってみた。
「クロバハール王国の中央、ヴァーセルはこっちの山の後ろだよ! 下の道だと遠回りになるからつれてってあげる!」
女の子は私の手を取ろうと手を伸ばしそして触れようとした瞬間、磁石が反発し合うかのように触れることができなかった。私は訳がわからず手を引っ込めたが、女の子は目を輝かせて「も、もしかしてっ?」と今度は抱きついてみようとしたが、謎の見えない層に阻まれて触れられず、女の子はずるりと地面に突っ伏した。
「ご、ごめん! 大丈夫?」
悪いことしてないけど謝ってしまうのが日本人の性……。私は女の子に触れようとするが、こちらも見えない何かが邪魔して触れることができない。磁石で反発しているような感覚にちょっと気持ちが悪い。
女の子は満面の笑みで顔を上げ、そして私を「魔女様!」と呼んだ。
「……魔女?」
魔法使えなかったけど……?
「魔女様に会えるなんてうれしい! 魔女様はどこから来たんですか! どこの魔女様ですか?」
「魔女様って他の魔女様と知り合いだったりするんですかっ? 北の魔女様が一番強いって聞いてますけど!」
女の子だけでなく男の子まで目をらんらんと輝かせているが、こちらは一つもわからない。
「えっと……魔女ってなにかな? 遠くから来て人と暮らしてなかったからわからないんだー」
嘘を混ぜつつ情報を引き出す。すると魔女について説明してくれた。
魔女は見えない鎧を身にまとっている為、傷つけることも触れることはできない。
魔女は天候すら変えるほどの力を持ち、言霊は現実となるという。
……それが本当に私の力であればチートもいいところだよ。
とりあえず本当に魔女なのか確認するために、空を仰いで「雨よ降れ」と言えば、一瞬で青空が曇天に変わり、スコールのような雨が降り始めて、子供達と慌てて木の下に逃げるが意味が無い。なので「空よ晴れろ!」といえば瞬く間に雲が消えていき、二つの太陽が顔を出した。
うん。魔女だわ、私。天候を操れるってのは本当に強い。
「魔女様すごーい! 魔女様がクロバハール王国にきたらみんな喜ぶよ! 来てよ魔女様!」
「本当に天気が変わっちゃったー! すげー!」
びしょびしょで兄弟はぴょんぴょん跳ね上がって喜んでいる。塗れているのもかわいそうなので、「二人とも雨水よ乾け」といって乾かしてあげ、そしてクロバハール王国へと案内してもらうことになった。
「そういえば君たちは何であそこにいたの?」
そう聞けば、二人は魔法の訓練をしに高原にいたらしい。確かに街の中で魔法を無闇矢鱈に使ったら危険だろうから、そういう練習するんだなあって思った。モンスターがいても、子供が倒せるくらいだろうから恐らく弱いのだろう。
「ミテラとボッセはもう少しで十三歳だから、お祭りで得意な魔法を使って力のアピールをしないといけないの! 選ばれたら街の防衛団に入れるんだ!」
ミテラとボッセ、彼らの名前だろう。防衛団って言うのは街を守る為の小さな組織で、魔物が街に入ったときに騎士団と一緒に戦える権利を持てるという。そして、うまくいけば騎士見習いに昇格というのもあるとか。
「二人とも騎士になりたいんだ」
「うん! 街を守る騎士様はかっこいいんだよ!」
そしてボッセはアクアランスを唱えて、正面に佇む大樹に向かい魔法を放つ。水の槍はズドンといい音を響かせて刺さり、そしてしばらくして水は形を失い地面へと落ちていった。
穴はどれくらいなのか確認してみれば、拳くらいの穴が開いていて、人がこれに刺さればひとたまりもないな、なんて考え、こういう山とかで訓練するのは正しいなあって頷いた。
「大人の人はもっと大きいのを放つの?」
「んー。確かに大きいのを飛ばせる人もいるけど、一気に百本千本投げるってのが魔法騎士団長だよ! 魔法騎士団長はめちゃくちゃつえーんだぜ! こんな樹よりももっとおっきなマウンテンロックベアーってのが出たとき、アイスランス千本投げて穴だらけにしちゃったんだぜ!」
マウンテンって名前が付いているしホントに山みたいに大きいのかもしれない。そして今この子が投げたくらいの槍を千本投げるってのも半端ない。騎士団長というだけあって能力が化け物級だわ。
脳内でイメージしていると、ミテラも魔法騎士団長もだけどさ! と、他の人もその戦いに大いに貢献した話をしてくれた。
「魔法騎士団長の他に、銀の騎士団長って言う人もいるの! 身体強化の魔法使いだから、剣を使って戦うんだけど、そのマウンテンロックベアーの両足を切り落として動けなくしたのがすごいのよ! 大きな剣で大きな足を一瞬でスパッと切り落として! そんなの魔法騎士団長だってできないわ!」
歩きながら子供達と話して、この世界のことを少しずつ知ることができた。遠い遠い遙か古代、とある錬金術師が魔法を見つけ、世界にばら撒き人々は魔法の恩恵を得た。だがその錬金術師は魔物も生み出していて、それが世界をはびこることになったらしい。神話に近い語り継がれている話だそうだが、モンスターを見る限り事実なのかもしれない。
そして魔法の能力だが、一人一属性が普通らしい。希に水と炎、氷と雷などいるとか。ちなみに魔法騎士団長は五属性だとか。
「私はねー、火属性なんだ!」
「オレは水!」
兄弟でタッグ組んで戦うと強いなぁと思いながらウンウン頷いていたら、ボッセが街が見えたと指をさした。
「オレたちが住んでるクロバハール王国だよ! この山からぜーんぶ見下ろせるんだ」
まるでヨーロッパの街並みのような都市が三つ横に並んでいる。真ん中には豪華な大きな城、そして街の周りには高い高い城壁があって街を円く囲んでいる。街の中には居住区や市場以外にも緑豊かな林業農業エリア、大きな湖などもあり、この街だけで経済がすべて回ると言っても過言では無い感じがした。左の街は小さな家々と大きな岩山があるから、鉄などはそこから取っているのだろう。右の街は家の一つ一つが豪華で、大きな広場や闘技場のような場所もあるので、街ごとに特色があるのだろう。いやはや、とても大きな国だ。
「西にあるのがパールディ、東がヴィヴィ。そして真ん中がオレ達の住むヴァーセルだ!」
ふふんと自慢げに説明し、そして早く行こうと急かされて走る子供の後を追ったのだった。
すでに全部書き終えてからの投稿なのですが、何分初めてなのもで全然勝手が分かりません。
とりあえず一気に書いたものを分割してます。