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初夏の澄み渡る青い空の下、その澄み渡る空色の瞳を持つルーナは顔色も青くしていた。


ルーナが雨天延期にならないかな?と前世の記憶をもとにてるてる坊主を逆さまに吊るしまくり、窓のカーテン代わりに使い始めた頃。


ついに始まった『魔物討伐実習』。


戦闘時用の制服に着替え、ルーナも予め指定された集合場所である学園近くの森に重い足取りで来ていた。

桃色の癖のある髪を緩くざっくりと高めにリボンで結ったルーナ。歩くたびにポニーテールがご機嫌に揺れるが、彼女の心もポニーテールの揺れ幅よりも大いに揺れ、体感震度7弱。


大人しめ令嬢として早めに1年Aグループの集合場所に来ていたルーナ。

現実逃避の為に初夏の瑞々しい新緑の木々や木の葉が風に揺れ擦れる美しい光景をボーと眺める。ついでに頬の表情筋をムニムニと人差し指と親指で摘みウォーミングアップをはかっていた。


「ぶっ!くくくっ。ルーナ……、お前何してんだよ!」


突然、じゃりと地面を踏みしめる足音と笑い声混じりの懐かしい声がルーナにかけられる。

頬を指で掴んだまま振り向くと、そこにはルーナの心配材料その一がこちらに向かって歩いて来ていた。


『騎士科1年主席 ギルバート・レクラム』その人である。

異名「紅蓮の鬼」を名を体で表す真紅の髪を風に靡かせ、柔らかな新緑に染められた様な鮮やかな緑の瞳を緩め、顔中蕩けさせた笑顔を浮かべていた。


「おはようございます。ギルバート様。本日はよろしくお願いいたします」


頬の手を素早く退け、秒で特訓の成果の大人しめ令嬢っぽい微笑みを浮かべながら丁寧に頭を下げるルーナ。


「はっ!まだ、その話し方頑張ってるんだな……、」


ギルバートはルーナまで近づくと鼻で嗤い、慈愛したたる目でルーナを見つめる。

ルーナはギルバートの態度に不満そうに眉を寄せじとっとかなり高い位置にある彼を見上げる。


そんなルーナにふっと息を洩らす様に笑ったギルバートはルーナのポニーテールに視線を落とす。


「髪の毛……、自分でやったのか?」

「うん。寮だと全部自分でやらないとダメだからね。中々上手く出来たでしょ?」


ヘラっと頬を緩ませながら、ギルバートに見せつけるようにルーナは自信満々に自分のポニーテールを手に持ち掲げる。


「不器用なルーナにしては頑張ったな?でも……、ここにまだ髪の毛残ってる……」


ふはっと噴き出すとルーナの首筋に手を伸ばし項の後れ毛を触りながら目元をこれでもかと緩めるギルバート。


「えっ?!嘘っ?!頑張ったのになぁ。癖っ毛だからやっぱり慣れてるギルじゃないと上手く纏められないかなぁ……」


「ん。まだ、時間あるからやってやるよ……」


ルーナはキョロキョロと周りを見渡し誰も居ないことを確認すると、直ぐ様ギルバートにくるりと身を翻し背を向ける。

クスクス笑いながらギルバートがしゅるりとリボンを解き、ルーナの癖のある桃色の髪の毛がパサリとルーナの背中に広がる。


ギルバートは愛おしげにその髪を見つめ、手櫛で撫でる様にルーナの髪を整え、一纏めにしリボンで結んだ。

「できたぞ」と言いながらギルバートはルーナの両肩に手をぽんっとおく。


「ありがとう!ギル!あと、今日もよろしくね!」


くるりとギルバートの正面に向き直り、顔を見上げながら顔中くしゃりと綻ばせるルーナ。

ギルバートは一瞬目を見張り、「こちらこそよろしくな!」と言いながら顔中蕩けた笑顔で笑い返した。


「遅れてすまない!もう皆揃ってしまったかな?」


たたたっと2人に駆け寄りながら銀糸のような銀髪を揺らすベルンハルト・グライスナー王太子殿下が至極爽やかな笑みを浮かべ、ご到着した。

その後ろをイザベル・フォートリアが公爵令嬢の名に恥じない、金髪の縦ロールをブンブン振り回しながら優雅に歩いている。


同時にルーナのふにゃりと緩んだ笑顔が秒で引き攣った。


ルーナの心配材料その二とその三であり、生殺与奪の権を握っている魔物よりも最大の脅威だ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 猫かぶり・・・私も大小合わせて数匹かぶっています。 ルーナちゃんは一匹だけなのかな?これからかぶり続けられるのか・・・楽しみにしています。
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