表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
栗田さんの憂鬱な美少女生活  作者: 黒田如風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

120/130

本音を伏せながら

「おぉっ! 久し振りやな♪ 元気そうで何よりや」


 玄関の扉を開けるなり、陽気な関西弁がお出迎え。


「ベネットさんも、お元気そうで」

「まぁ、ゆっくりしてやぁ~」


 そう言いながらも、家主の米内さんは小走りで机の前へ。


「ネットでは、しょっちゅう話しとるけど。やっぱ顔見ると安心するわ」


 椅子に座り直すや、視線の先を液晶タブレットに向けた。


「もしかして、締め切り間際だった?」

「いんや。それは昨日や。今やってるんは次のネーム」


 カツカツと小刻みに鳴るタッチペンの音。熟練した筆裁き。

 でも見た目は小学生の女の子。自分と同じ元は中年男性の漫画家。


「少し、背が伸びた?」

「伸びたで。今、成長期やからな。胸も腰も順調に育っとる。自撮りしながら、スケッチするの楽しいで」

「プロだねぇ~」


 ネットで画像を検索出来るとはいえ、欲しい構図が見つかるとは限らず。

 自撮り出来るのなら、その方が早かろう。


「お茶でも淹れる?」

「頼むわ」

「高山烏龍茶で良い?」

「今日は東方美人茶の気分やな」


 伸ばした指の先を変更。隣の茶缶へ。

 東方美人茶の抽出温度って、八十度だっけ?

 普段、淹れていないから、自信がなかった。


「今日は、どないしたんや?」

「コッチまで来る用事があったからさ。たまには顔でも出そうかなって」


 嘘は言っていない。

 そう思いながら、薬罐へ水を注いだ。


「ベネットさん。身体の調子はどう?」

「今日は最悪やなぁ」

「何か、問題でも?」


 ドキリとしながら質問を重ねる。


「前にネットで話したと思うけど。年明けくらいから、アレが始まってもうてなぁ。はんま面倒やわぁ。腹も痛うなるし」

「あぁ。そっち……」


 ガスコンロを点火しながら、深呼吸を一つ。


「それ以外は? 足の調子とか、大丈夫?」

「せやなぁ。成長痛やと思うけど、たまに膝が痛うなる」

「走ったりしてる?」

「しとてるで。子供が学校から帰る午後三時くらいから、毎日マラソンしとるよ。この仕事しとると、身体がなまってもうてなぁ~」


 水が沸騰する音、

 液晶画面にペンを走らせる音、

 両方を聞きながら、聞くべき内容を考慮。


「走ってる最中に、足が縛れて動かなくなる事は?」

「そういうのは特にないなぁ。今は体重が軽いし」

「そっか………」


 気付くと大きな溜息を吐き出していた。

 それも深々と。


「どないしたん? 栗田さん元気ないなぁ?」

「ちょっと気になる事があってさ」


 答えながら戸棚から茶海と急須を取り出した。


「何か、あったん?」

「まだハッキリしていないから、結論が出たら話すよ」


 中途半端な憶測で不安を煽るのは避けたかった。


「そうやっ! 冷蔵庫に苺タルトがあるで。お茶が入ったら一緒に食べよや♪」


 少女らしい弾むような声での提案。


「人間、甘い物食べたら幸せな気分になるもんや♪」


 くったくない明るい喋りを背中に聞きながら、ふと思った。

 最近、あまり笑ってないな………と。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ