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episode01

 しかも、俺を盗賊扱い……。


「そりゃ、普通に驚きますが?」


 でしょうね……。


「でも、あなた、ジンさんは、なんでここにきたのですか?」


「なんでと、言われても……」


 俺は、自分がいた世界から鏡の中に入って、こっちに来た事を話したが……。


「鏡、ですか? どこにあるのですか?」と聞かれ、ここ!と言ったが、エリアナには見えないらしい。


 ま、タートは見えるらしいけど……。


「え、と、それは……」


「タート! 亀なのか、岩なのか、わからんやつ!」


 ギャウッ?


 タートが、切なさそうな顔で、俺をみた。


「相棒だ!」と言い直すと、頭を擦り付けてくる。


「それ、カメじゃないです。ターシェンです」


「ターシェン? なにそれ」


 エリアナの話だと、俺が亀だと思ってたタートは、亀ではなく、ターシェンという魔物らしい。しかも、伝説級の!!


「でも、カメにも似てるけど……。ほら、ここ見て下さい」とエリアナは、タートの首の付近に手をやって、持ち上げた。


「おじいさんから聞いた話なんですけど、ターシェンには、この首の根元に、ほら……」


 亀の首の裏って、こうなってるのか!と驚いたが、タートの首の根元には、黒い丸が7つ。北斗七星みたいな形で並んでいた。


「亀も大きく成長すれば、ここまで大きくはなりますが、鳴くことは有りません。農作業用の魔物なので、人懐っこいですが……」


 タートもかなり、人懐っこいような気もする。


「ま、どっちでもいっか!」


「よくありませんよ? もし、タートさんが、ターシェンと分かったら……」


「わかったら?」


「殺されて、剥製にされます!」


 これには、俺もビックリで、タートなんてウトウトしてたのに、首を真っ直ぐ伸ばした。


 その首、どっから出た?状態で、また引っ込んだ。


「この国、サプリクスには、幻のレインボードラゴンやフェリッツオーネ、ターシェンを討伐して、剥製にするとその家が代々栄えるとも言われてます。その実話が、サプリクス城にあるレインボードラゴンなんですよ……」


「城、もあんの?」


「はい…」


 確かに、異世界なら城の一つや二つはありそうだけれど。俺が知ってるのは、燕か。軒下に燕が、巣を造る家は、栄える。


「そういや、エリアナさんは、ここで一人で住んでるの?」


「はい。前はおじいさんがいたんですけど、亡くなりました」


「あ、ごめん。聞いちゃ悪かった」


「いえ。あっ!!!」


 エリアナさんが、いきなり声をあげたから、俺は椅子から落ちそうになった。それくらい、椅子が……。


「私ったら、ジンさんにお茶を出すのを忘れてました!」とバタバタしながら、お茶の準備を……。


「それ、魔法?」


「じゃないです。魔法も、使えるには使えるんですけどね。魔石です」


「魔石?」


 エリアナさんが、指先1つで、水の入ったポットに触れると、それはお湯に変わった。


「これが、その魔石です」


 コロンとそのポットから取り出したのは、小さくて赤いキラキラした石。


「ごめんなさいね。お茶以外何もなくて……」


 部屋自体も、俺が住んでる部屋とは違って、質素で地味な部屋だった。


 そういや、俺……


「あ、俺お菓子持ってる!」


 今朝、コンビニでおにぎりとかを買う時に……


 ガサゴソと鞄の中を漁って……


「これは、なんですか?」


「この赤い袋がポテトチップ、この四角い箱のが、チョコレート」


「ポテト…チップ? チョコ…エート?」


 発音は、ともかくとして、その二つを開けると、


「いい匂いー!」とエリアナさんが、鼻をスンスン鳴らした。


 タートは、眠くなったのか手足を中に入れて、眠っていた。頭もしまうらしい。亀だから?


 パリンッとポテトチップは、軽い音を立て、エリアナさんの口の中に!


「美味しいーっ! これ、初めてです。この薄さと塩加減! 最高ですね!」


 チョコレートを食べた時なんて、涙を流してたよ。


 チョコレート、良かったな、お前……。


「じゃ、これは?」と空いたコップにコーラを注ぐと……。


「ジンさん! あなた、錬金術師なんですか?!」と身を乗り出してきたが、俺は、ただの高校生!


「いや、ただの高校生!」


「ココセー? でも、これっ!!」


「コーラだけど?」


 エリアナさんは、子犬のように、そのコーラの入ったコップと俺を交互に見た。


 口が疲れるまで、二人で俺が向こうから持ってきた物を見せては、喋り尽くした。



「え? もう帰るんですか?!」


「うん。俺も宿題あるからね」


 しかも、明日からテスト……クウッ!!


「あの、また、ジンさん来てくれますか?」


「1週間したら、かな」


 もしあの鏡に入れるのが、週に一度の日曜日なら、また来れる。


「あ、そだ。これ、残ってるやつだけど」と未開封のコンソメ味のポテトチップを……。


「開け方わかるよね?」


「うん……」


 なんだろう? この、夕暮れを見ている時の様な淋しさは!!


「また、くるから……」


「うん……」


 タートに服を引っ張られ、俺は、エリアナさんの家を後にした。


「お前、普通に歩けんのかよ」


「はい」


「……。」


 ノッソノッソとタートと歩く。


「お前、喋れんのかっ!?」


「んー、本来我々魔物は、喋れませんよ?」


「じゃ、なんで?」


「それは、私にもわかりませんが…。もしかしたら、波長があったのでしょうか。ジン様が持ってきた異世界のモノとエリアナさんが出した魔石の力が……」


「じゃ、鏡は? お前には、見えるの?」


「いいえ。恐らくそれは、魔魂が入ったものだと思います。だから、ジン様には見えても、我々には見えない。作られた方が、かなり魔力のある方だったんでしょう。そろそろ、帰られますか?」


「うん。そういや、お前はなんでも食えるのか?」


「はい」


「じゃ……」


 鏡に手を当てると、吸い込まれるように引っ張られる感じがあって、俺は、また元の世界、自分の部屋に戻ってきた。


「あれ? まだ昼?」


 ベッドサイドに置かれた目覚まし時計は、2021/12/1AM11:00を表示していた。


 それから、週に一度の日曜日には、こっちで買い物をしてから向こうへ行き、エリアナさんと楽しい時間を過ごしていた。



 ダンッ!!


「遅いッ!! まだ見つからないのっ?!」


「すみません。水晶に反応は出てるのですが……」


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