prologue
「えっ? わっ? おわっ!!!」
ドテッ……
「な なんだ、ここは?!」
テレビでいつか見た事がある、ジャングルみたいな鬱蒼とした景観。ギャァーッギャァーッと上では鳥?みたいな生き物(遠くて見えない)が空を飛び、地面には毒々しい色合いのキノコや花が咲いていた。
ふと振り返ると、偶然入ってしまったスタンドミラー。その中に顔を突っ込むと、そこは寮の自室がある。
彼が読むライトノベルのジャンルでも、異世界転生や異世界転移はあるのだけれど……。
「……。まっ、いっか! 死んだって訳じゃないし、部屋に戻れてんなら!!」
と、まぁ、楽観的に考え、その場は自室に戻る事にした。
「…に、しても変な鏡だな」
学校が休みの日曜日。たまたま本屋に行った帰り道、公園みたいな広場でフリーマーケットをやってて、たまたま覗いたら、アンティーク調の少しかっこいいスタンドミラーを見つけたら、その方がたまたまいい人で、その鏡を500円で買えた。
本を読んでて、少しウトウトしてて、何気なく鏡を見ていたら、急にテレビみたいに何かが映った。鏡の後ろとか見てもなんともなくて、鏡に手をついた瞬間!!鏡の中?に入ってしまった。
「でも…クックッ……おっもしろくね?! 異世界だぞ、異世界! 死んだ訳でもないし、普通にそっちの世界まで行ける! マジ、おもしろい!!」
そう言った彼の目は、小さな少年のように輝いていた。
その頃、ある所では……。
「そ、それは本当ですかっっ!!」
キラキラとした眩いばかりの室内。
サプリクス王国・ローファ第一皇女は、いまにも飛び出しそうな勢いで、目の前に立っているダンナイ・ラン魔導士を見た。
「はい。大魔導師•アクス様の言う通り、水晶には南西の方角、ルシフェルの森の中で、強い動力の光を感じ取りました」
「ついに…ついに…我が国にも来たのですね。聖者様が!!」
やはり、聖者はいたのだ!
現国王、先代、先々代よりもずっと前……に、聖者がこの世界に来たと言われていた。その頃は、まだ人々は少なく魔物の討伐での召喚だったらしい。
「これで、我が国も救われます」
「はい」
「……。あれ? 昨日は、入れたよな?」
出掛ける準備をして、イザッ!鏡の中の世界へ!!と手を鏡に当てたのだが……。
鏡は、冷たく固いままで、髪の毛一本入る事は無かった。
「夢…だったのか?」と鏡を見たが、自分の顔が見えるだけだった。
次の日もそのまた次の日の日も、彼は鏡に手を当てたが入る事は出来ず、1週間が経った。
「…って俺も諦めわりーーーっ! ってことで!」
鏡に手を当てると?
「っと!!」
入れた…。前に落ちた所とは少し違ってはいたが、景観は同じだった。
「入れる日が、決まってんのかな? 前に来たのは、日曜日だったし、今日も……日曜日」
空には何も飛んではいないが、鳥みたいな小さな声が聞こえてはきてる。
「だいたい、こういう所で、ステータスオープンとか言う…と…」
マジかっ!!
目の前に、RPGでよく見る黒い画面が出てきた。
「あ、名前が俺の名前だ。えっと、Lv2で、HPにMP、魔法も使えるのな」
それぞれは少ないけれど、それなりに初期魔法は使えるのがわかった。
「あとは? なんだよ、全部鍵のマークじゃないかっ!!」
スキルもあったが、探索、薬草栽培、創造があった。
「スキルって、どうなんだろ? まぁ、人に寄って違いがあるんだろうし。取り敢えず、歩いてみるか!」と歩くには歩くのだけれど、ハタと気付いた!
「あっ! 鏡っ!」と思って振り向くと、鏡はあった。かくして、人物は後ろに鏡を付けている?連れている?状態で歩くのだが……。
「疲れた、な。ちょっと休憩するか」と手近にあった岩に腰を下ろし、鞄の中からおにぎりとお茶のペットボトルを取り出し、食べ出した。
「ふぅ、うまっ!!」
食べ慣れた味のツナマヨ、梅、おかかではあるが、歩いていたせいか、かなり美味く感じた。
「やっぱ反応なしか」
ポケットから取り出したスマホは、圏外になってるし、方位磁石に当たっては、クルクル回るばかり…。
ゴトンッと音がし、迅はバランスを崩しそうになった。
「ん? 動いた?」と思ったら、またゴトンッと揺れて…?
その岩から降りてみると…。
「なんだ、これ。亀?」
岩だと思ったソレは、亀の様に短い手足を出し、顔も…。
亀だった。が!!
ギャウッ!
ほんとの亀は、泣かないし、首も振らない?
「亀?」
ギャウッ!
「岩?」
ギャウッ!
「亀でも無ければ、岩でもない。なんなんだよ、お前は」と亀?岩?に話しかけても、
ギャウッ!としか返ってこない。
それでも、楽観的な性格な迅は、その亀?岩?にタートと名付け、背に乗ってみた。
さっきも感じたけど、座りやすいな、あったかいし。
「さぁ、タートル? 俺を人のいる場所に連れてってくれるか?」
ギャウッ!!
まぁ、亀だし?歩くのも遅いと思ったのに、意外と?いや……
「わっ、わぁぁぁぁっ!! ちょ、ちょい、タンマーーーーーーーーーーッ!」
う、馬処じゃない。な、なんだこのスピードッ!!
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
あまりのスピードに迅が吹き飛ばされる事はなかったが……。
ペタッ……ベチョッ……ペタッ……ベチョッ……
タートの背中に手を当てて、剥がすとガムテープみたいな粘着があるのに気付いた。
「っと!! ここに人がいるのか?」
ギャウッ!ギャウッ!
タートは、首を2回振って、頭を迅に擦り付ける。
「いる…のか?」
迅が住む町にも、こんな掘立て小屋みたいなのを見かけるが…
「すみませーん! 誰かいませんかー」と声を掛けても物音すらしない。
「いないじゃん」
タートは、頭を傾げたが、また迅の身体をグイグイと押した。
「こっち?」
ギャウッ!
押されたり、首を向けたりで、その小屋の裏手に回った。
「……。」
人間らしき人はいたが……。
えーっと、この場合どうしたらいいんだ?
大きなタライみたいなのに、入っている彼女は、裸だった。
銀色のウェーブがかった長い髪、しなやかな身体のラインに……
「……。」
ふと、目が合った瞬間!!
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」と叫ばられ……。
斯くして迅は……、床に座り、
「本当に申し訳御座いませんでしたっ!!」と深く深く土下座をしたのである。
それが、エルフのエリアナとの出会いだった。