つちのこうやのラブコメ (それぞれ別々にお読みいただけます)
クラスの美少女が「わ」から始まるこのクラスの人が好きと言ったらしいけど、「わ」から始まる人はイケメンと陰キャな僕しかいないので、それは告白みたいなもんで草
クラスの美少女が、クラスに好きな人がいると言ったらしい。
しかも、「わ」から始まる人だよ、とも言ったらしい。
そしてそれはもう、告白のようなもんである。
なぜなら「わ」から始まる人はクラスに二人しかいない。
僕と、イケメンである。
そう、だからクラスの美少女が好きな人はおそらくイケメンだろうな。
……こんなふうな思考回路を辿ってほしかったんだよクラスのみんなには。
え、僕かイケメンかわからないと思われてるなら、それは僕も結構モテるのではないかって?
いや違う。
僕がイケメンかどっちかが注目されてるのではなく、「わ」から始まる人って、イケメンしかいなくね? ってなっているのである。
まあつまり、忘れ去られてるんだね僕は。
悲しい。とばっちりで存在感がないことを晒される僕。
せ、せめて幼馴染の七奈くらいは僕のこと思い出してくれ……!
いやもしかして、下の名前で呼び合ってるせいで、僕の苗字渡辺だって忘れてる説あるぞ。
いやこれはほんとにあるわ。
……。ま、いっか。
存在感が薄いことくらい知ってたしね。
そんなふうに、立ち直るための心への話しかけを行い、僕は机で寝ていた。
☆ ○ ☆
えええええええ。
「わ」から始まる人だって!
そ、それ、渡辺太智のことだったらどうすんの?
か、勝てないよ絶対。
だってあの子可愛いし、優しいし、胸も大きいし、完璧な髪質だし、話してると楽しいし。
「ねえねえ七奈」
「あ、うんどうした?」
「めぐちゃんがさ、クラスの『わ』から始まる人とか言ってるけどさ、それってもう若葉くんしかいないよね、そもそも」
「え?」
あっそっか、「わ」から始まる人、太智以外にも若葉くんいたわ。
若葉くんはかっこいい系でモテそうな雰囲気を詰めた感じ。
あ、なるほど若葉くんかな。
ならめっちゃいいんだけど! いやでもほらさ、もしかしたらね、太智かもしれないというか、割とあると思うんだよね。
だって、わ、私が好きになったんだし?
「若葉にいつ告白すんのかな?」
「今日にでもするよ、でなきゃあんなバレバレのこと言わないよ」
あれ? みんな若葉くんな前提なのはなんで?
え、みんな太智の可能性考えないの? ていうか忘れてるのかな太智のこと……。
そうだ、太智はどうなの太智は。
太智の方を私は見てみた。
そしたら……寝てる!
え、この騒動に興味ないの?
ないんだね。まじか。てことはクラスの美少女から告白されるかもしれなくても気にしてないってことか。それは朗報。
私は一安心した。
そしてその後、めぐちゃんが見事に若葉くんに告白してそして付き合うことになったりしたので、更にほっとしたのであった。
☆ ○ ☆
放課後、存在感がない僕が静かに一人で帰ろうとしていると、七奈が隣にきた。
「おつかれー太智」
「おつかれ」
「なんか元気ないというか眠そう?」
「眠いのもそうだけどね、まあ……存在感のうすさについて悩んでてね」
「あー、『わ』から始まる人の話?」
「そう」
「めっちゃ忘れ去られてたもんねみんなに」
「うん。ちなみに七奈は覚えてた?」
「いや、流石に。渡辺太智だもん」
「そうか。よかった」
「まあでもね、たしかに若葉くんだと思いそうだよねーとはなるね。わ、私も若葉くんかなーって最初思ったし」
「やっぱりそうか」
「う、うん。ま、でもほら、太智ことが好きで、どこかで太智が告白されなくてほっとしてる人とかいるかもしれないから元気だしなよ」
「そんな人いる可能性あるか?」
「か、かのうせいあると思うよ」
「そっか。励ましてくれてありがとう」
「ま、励ますのはやっぱり幼馴染って事で」
「うん」
七奈となぜかこの時目があって、そして、七奈は可愛いな、と、唐突に思った。
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