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悪逆皇帝は来世で幸せになります!  作者: 詩貴 和紗
第3章
97/338

3-51

私の差し出したものをまじまじと見つめながら、恐る恐るといった風に手を伸ばし受け取る。私の手を離れ、彼の手に渡ったことを確認するとベンチから腰を浮かし彼の目の前に立った。


勢いよく頭を下げると、先日の謝罪を述べた。


「先日は申し訳ありませんでした。私が行ったことはヴァリタス様を貶すような行為です。これで許していただけるとは思っていませんが、どうか気持ちだけでも……」


先ほどから彼の気遣いのおかげでなあなあになりそうな雰囲気だったが、こういうことはキチンと謝らないと。そう思い、少し大げさではあるやもしれないと思いながらも、精いっぱいの謝罪の言葉を口にした。


しかし言っていて、改めて自分のしたことの大きさとお詫びの品のちっぽけさ加減を今更ながら思い知る。こんな安物渡すくらいなら、やっぱりなにも無かった方がましだったかも。


なんて、この期に及んで反省していると。


「開けても良いですか?」

「えっ? はい、構いませんが……」


今の謝罪、聞いてた?

まるで私には目もくれず、渡したお詫びの品を見つめながら確認を求めるヴァリタス。


チラリともこちらを見ることもなく、私が了承すると丁寧に包装を解き中身を手に取った。


中に入っていたネックレスを見た途端、少し目を見開き驚いた様子だ。空に翳す様にネックレスを手に取ると、まじまじと見つめている。空を切り取ったような結晶が、キラキラと輝きながら揺れている。


これ、ど、どういう反応なのかな。やっぱりこんな安物じゃ、がっかりしたのかしら。


「ありがとうございます。とても、とてもうれしいです」


小さな宝石を見つめながら、目を細めしみじみといった様子でお礼の言葉を口にした。どこか泣きそうな表情なのが気になったが、とても喜んでくれていることだけはわかった。それがすごくうれしかった。


そうして彼はネックレスを見つめたまま柔らかな笑顔でしばらくのまま固まっていた。しかし、ふと何かを思い出したように表情を変えると制服のポケットに手を入れなにかごそごそしている。


と、ポケットの中から何かを取り出した。

それは小さな白い箱だった。


「僕もエスティに渡すものがあったんです」

「なんですか?」


手渡された箱を開けると――――。

そこには深い青色の結晶が嵌められた指輪が入っていた。まるで深海を切り取ったような深い、深い青色。


「お守りです。エスティに何かあったときのために、僕の魔力が込められています」


聞いたことがある。

自身の魔力を結晶化させてお守りにするという物だ。持ち主に何か危険なことが起こると、その結晶が守ってくれるらしい。しかし、その結晶を作るのには相当の力と鍛錬が必要だと聞いたのだが。


彼がその結晶を作れるのも驚きだが、まさかそんなものを私にくれるなんて。きっとこれを作るのには相当苦労しただろうに。


「ありがとう、ございます。とってもうれしいです」


涙が零れそうになるのを必死に我慢した。

私を守ってくれようとしている。

こんなにも想ってくれる。


それがすごくうれしかった。


大事にしよう。

きっとこれがあれば、今日のことも彼がいま私に抱いてくれる気持ちも、この指輪を見れば思い出せるから。


決してなくさないよう、強く強く指輪を握りしめた。


「良かった。少し不安だったのですが、喜んでいただけてホッとしました」


彼の嬉しそうな声色が耳に入る。


いやいや、それはこっちのセリフだし。でも、私はお詫びの品として渡したけれど彼はなんで私にプレゼントなんか用意したんだろう。


まさか、自分が悪いなんて思っているんじゃ……。

はぁ、まったく。

この王子さまはどうしてそう私に優しく接するのか理解できない。


もしかして、これも病的なまでの執着心からきているものなのかしら。


そう思いつつなんとか涙を引っ込め、彼の隣に座り直すとジュースを飲んで心を落ち着かせた。


「でもこのネックレス、まるでエスティの瞳みたいですね」


ブフッ。

にこにこと嬉しそうに言う彼の言葉に、思わず飲んでいたジュースを噴き出してしまいそうになった。何とかこらえ、令嬢としての威厳は守られたけど。


何てこというのよ!

そんなわけないじゃない。

と、彼の持っているネックレスを見てみると。


確かに、ちょっと似てるかも。

いや、かなり似ている。


ああ、なんで気づかなかったんだろう。まさかプレゼントしたものが、自分の一部と似ているものだったなんて。これじゃあ暗に「いつでも私のことを想ってね~」なんて言っているようなものじゃないか。


私はそんなこと思ったりしないし、口に出せないツンデレとかでもなく、正真正銘彼に嫌われたいの願っているのに。


というか、待てよ。私は前に何を血迷ったのか、ヴァリタスと同じ瞳の色のネックレスを買ってしまっている。そして今渡した私の瞳と同じ色のネックレス。


これ、傍から見たらラブラブバカカップルじゃない!


嗚呼、私のバカバカバカバカ。


絶対、絶対にあのネックレスは身に着けないにしよう。

といか、誰にも見つからないようジュエリーボックスの奥の方に封印しなければ!

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