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周りを見渡すがナタリーとセイラの姿は見受けられない。と、いうことは……。今私はヴァリタスと2人っきりってこと?
ってなんで私とヴァリタスが二人っきりになっているのよ!
なんでセイラじゃなくて私⁈
はぁ~、と心の中で深いため息が零れる。
どうやら、私の手を掴んでいたのはナタリーではなくヴァリタスだったようだ。直前にナタリーに名前を呼ばれたから、すっかり勘違いをしてしまったわ。
けど、考えてみれば私の手を掴んだ手は女性にしてはごつごつして力も結構強かった。昔から事あるごとに手を掴まれていたのに気づかなかったなんて。
しかしこの人込み、おそらく2人を探し出すのは容易ではないだろう。どうしたもんかと腕を組み考えているが答えは見つからない。
「ここは2人で周りましょうか、エスティ」
「え、ええ。そうですね……」
私が思い付いたものと同じことを口にした彼に同意する。仕方なく、彼女たちを探すのは諦め2人きりで周ることにした。
それにしたって、私と2人きりで気まずくないのかしら。チラリと前方を歩く彼を見やる。
いや、きっと気まずいのよね。だっていつもは2人きりになっても会話を続けてくれるもの。ここ最近は会話らしい会話なんて無かったから、いつの間にかこれが普通になっているけれど。でも2人きりになってもそれは変わらないことがなんだか、少し寂しい。
ふと、彼が急に立ち止まった。考え事をしていた私は背中にぶつかりそうになり慌てて急ブレーキを掛ける。
な、なに?
なにかあった?
困惑している私に、彼はくるりと私の方に向き直ると手を差し出してきた。
「手を」
「手?」
「はぐれたら困りますから」
いつもの彼とはちがう、どこかぎこちのない気遣いだった。しかし、それでも私を思ってくれること気持ちに応えるように自然と手を重ねていた。グイッと先ほどと同じくらいの強さで掴まれた手には汗が滲んでいて、少し安心した。
足を進めるうちに徐々に人込みが減っていく。いつの間にか2人並んで歩けるほど余裕ができていた。もうこれなら手を繋いでいなくとも良いだろうとも思ったが、なぜだか手を離すのをためらわれ繋いだまま歩いている。
人が少なくなったおかげで周りにどんなお店があるのか時折目移りしながら移動する。そこで見覚えのない言葉を見つけ、足を止めた。
「魔法道具屋……?」
なんだそれ?
看板にはそう書かれており、その言葉に惹かれ足を止めた。手を繋いでいるため、ヴァリタスも足を止めると私に近づいた。
「魔力を込めた道具を売っているみたいですね」
「魔力を込めた道具……」
そもそも物にどうやって魔力を込めるのかも謎だが、彼の説明から俄然興味が湧いてくる。
「入ってもよろしいですか?」
「ええ、良いですよ。行きましょう」
暗い店内には棚やテーブルに様々な商品が置かれている。皆、見たこともない奇妙な形をしておりなんだかちょっと不気味だ。
しかしなるほど、こういうものを使って庶民は魔法を使っているのね。先ほどのカフェでの疑問が解消され、その技術の発展に驚いてしまう。でもこれ、本当にすごい。
っと、待てよ、これ魔法が使えない私にとってはすごく便利な代物なんじゃ。これがあれば、もしかして私も皆と同じように魔法が使えるようになるってことよね!
そう思い、そこに置かれた商品をまじまじと見つめていく。商品の前には商品名と簡易的な使用方法が書かれた札が立て掛けられており、どれがどういうものなのかを店員に聞かなくてもわかるようになっていた。
しかしものの十分ほどで私はその商品たちから興味を失っていた。残念なことに、そこに売っているのは庶民の生活を助けるような製品ばかりで私が使えそうなものは置いていなかったのだ。
「なんかこう、簡単に魔法が使えるようになるものでも売っているのかと思ったのに……」
家事やなんかは使用人がやってくれるものだから、私には一切必要ないものだもの。はぁ~と深いため息を漏らしながらお店から出ると、ポツリと本音が漏れた。
「ちょっと疲れましたね。あちらにベンチがありますから、少し休憩しましょうか」
先ほどの人込みに参ったのか、ヴァリタスはまたしても私の手を取りベンチまで案内してくれた。促されて座ると、確かにちょっと疲れていたのかホッとする。
「あっ! エスティ、あそこで飲み物を売っているみたいです。少しここで待っていてください」
「えっ? ち、ちょっとヴァリタス様⁈」
制止する私の声など全く届いていない様子で走って行ってしまった。もうっ、いつもはあんなに慌ただしいな人じゃないのに今日はどうしたのかしら。
もしかしてちょっとはしゃいでたりするの?
いいえ、それはあまり考えられないわね。じゃあやっぱりまだ私と一緒にいるの、気まずいのかしら。
確かにまだ仲直りしたわけでもしね。
そう思うとまた少しだけ落ち込んでしまう。背もたれにもたれかかると、上を向いて現実逃避を計った。そこにはどこまでも青い空が広がっており、その壮観さから何も考えずただぼうっと見つめていた。




