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悪逆皇帝は来世で幸せになります!  作者: 詩貴 和紗
第1章
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1-17

「それにしても珍しいですね。黒龍様がこんなところにいらっしゃるなんて」

「そうなのですか?いつもはどちらへ?」

「いつもは黒龍様の住まいである、龍宮と言うここや宮殿からだいぶ離れた場所にいらっしゃるんです。めったに外にはでないお方なのですが」

「へ、へぇ~……」


 いつもでないのに今日は出てきて、しかも私の前に出てくるとかどんな偶然よ。いよいよ私の前世に気づいて仕留めにきた説が濃厚になってきたわね。


でも良い事を聞いた。彼の住んでいるところはここからずいぶんと離れていて、しかもめったに外出しない引きこもり。ということはここにきても、そちらに近づかなければ会うことはないということだろう。


「その黒龍様が住んでいらっしゃるお屋敷はどちらにあるのですか?」

「そうですね、あちらの宮殿を超えたもっと先です。ここから歩いたら20分以上かかるのではないでしょうか」


龍宮の方向を指を指しながら説明してくれる。それほど距離があるのならば万が一迷ったとしても大丈夫だろう。


「そんな遠くに普段いる方に会えるなんて、とっても素敵ですね」


とりあえず建前は阿保さ満載に偶然を喜ぶ令嬢を演じる。


彼はそんな私の様子を微笑んで応えた。もしかしたらいまちょっとだけ莫迦さ加減に呆れて好感度下がってはないかしら。

……あんまり楽観的になっても後から落ち込むだけだからやめておこう。


「もうそろそろ戻りますか。おそらく話し合いは終わっている時間でしょう」


 王子は懐中時計を取り出し、時間を確認した。いつの間にか日が傾きはじめている。


こちらに着いたのが確か14時ほどの時間だから……。

見積もって2時間は経っているかもしれない。


「そうですね。宮殿に戻りましょうか」


そんなに遠くへは行っていないはずだけど、もしかしたら心配をかけているかもしれない。そう思うと早く父に会いたくなった。もしかしたら、私がポロリと失言しているのではと、父が内心焦っているかもしれないし。これは早々に戻って父を安心させねば。


もう一度、まるで当然のように彼から手を握られる。またやれやれと少し呆れた瞬間。


何かが体にグサリと刺さったような感覚を感じた。ビクリと体が少しだけ跳ねる。


(これは……)


おそらく殺気。


王子に手を引かれて歩きながら、顔だけ振り向いてもう一度黒龍の方を見る。相変わらず遠すぎて表情までは見えないが、きっとすごい形相でこちらを睨んでいるに違いない。


まるで警告だ。王族を傷つけたらただじゃおかないと。今度こそ容赦しないと、そう私に訴えているような。


(やっぱり私の前世、気づかれているのでしょうね)


ならば尚更黒龍には近づかないようにしなければ。きっとなにか些細なことをしでかしただけで首が飛ぶだろう。


また厄介な条件が増えてしまった。どうして生まれ変わっても人生ハードモードなのだろうか。



***


主様(ぬしさま)……」


 久しぶりに会えた。

ずっとこの時を待っていた。


遠く、遠く離れたあの人に思いをはせる。

龍の目は人と違いずっと遠くを見渡せるから、これだけ距離があってもあの人の顔がはっきり見える。


いくら姿形が違っても、どんなに変わってもあなたを思う気持ちは少しも変わらない。

それに生まれ変わってもあなたはあの時の美しいままだ。


「今度は、必ず守ってみせる」


誰にも、もうあなたを触らせない。

もう二度とあなたを離さない。


ただただ、生きて笑っていてほしい。


そのためなら、今度はどんなことだってしてみせる。

たとえあなたが止めても。


隣の奴が何か手を出したりしないかと、久しぶりに外に出て様子を見てみたがどうやら大丈夫そうだ。

宮殿に向かって去っていく背中を見送りながら、先ほどまで遠くで楽しそうに笑っていたあの人の笑顔を思い出す。


「またね、主様」


また、もうすぐ会えるから。

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