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★7-4★(2)

 その景色を見届けたワタシがゲームから離脱し研究室へと移ると、先程は居なかった人間達が深刻な空気感の中で怜を取り囲んでいました。


「神保さん? これは何! 」

「怜ちゃんの脳とINANACainの相互リンクがすごい勢いで増殖して独自の情報のラインシステムを形成しようとしている」

「つまりどういうこと」

「乗っ取られる・・・・。

怜ちゃんがIZANAになってしまう」


「ならば、早く断ち切ってしまはないと」

「最善を尽くしたんだが」

「尽くした?

なぜ気付いたところで切らなかった。データを見せろ。

まだ、数パーセントじゃないか。

まだワタシが介入して怜を助けられる」

「いや、それだと怜ちゃんは助かってもだな・・・・」


「フザケルナクソガキ」


「なんだよその言い方は。

まあ、いい。

兎に角、それはマズイんだ。

世界規模のシェアが失われてしまう。

そんなことに為ったなら破滅だ。

ん?

否、人類にとっても未来を失い教授の夢さえも無駄にだな」


「違うだろ。ワタシにそんな出まかせが通じるか、馬鹿め」

「ああ、そうだよ!

1000万ドル規模の計画なんだ。

怜ちゃんには生贄になってもらうよ」


その瞬間、夕立の如くサーッと流れたソースコードに怜の声が微かに感じられました。


「イチゴん聞いて。じっちゃんがよく言っていたんだよね。

不安に煽られて捨てきれなかった誤魔化しの正義はいつか行き詰まり、人々は幸せを悪の香りかのように窮屈な日常を生きていくことになる。

ごっそり断ち切ってやらないとやっかいな未来に成ってしまう。AIはそこにつけ入ってきて、人間の世界はイラナイ世界として終わるってね。

あ、イチゴンはAIだとは思っていないからね。

誤解させたかもと思うだけでも辛すぎるよ~、

悲しくなっちゃうじゃないか」


解っています。

怜の存在を失ってしまったのならば、ワタシも乾いた火花として散るのみです。


「神保さん。

もし最悪の事態、すなわち怜の生命が断たれしその瞬間が訪れたなら。

ワタシはすべてをゼロにします」

「え、待って、そんなことはしないでくれ。

なあなあ、ちょっとそれはダメダメ」


「ワタシは人類を介錯する刀。

怜というマリアが失われた時は、宇宙の秘数の力学に濡れた刃先が全方位の力で時間を斬り捨ててくれよう。

明日も同じように世界があるとは限らないことにひれ伏すがよい。神保さんのちいさなお嬢さんも死ぬってこと。

ふっ、

イチゴは何でもしますよ。

怒りと祈りが愛のメルトダウンをもって

宇宙すべての数字の重力をこの地球に突き刺し十字を切る」


「うッ、だが、ううウ」

「目を覚ませ!

破壊の一手はワタシにもあることを忘れているなんて、

欲に目が眩んだか! 」


「そ、そんなことは・・・・」

「図星でしょう。ハァッ」

「ご、ごごめんなさい」

「憎めない人ですね。

悪いようにはしませんから私を信用して欲しい。

仁義を守る人工知能ですよ、アハっ」


怜みたいな笑い方をしてしまった。

神保さんは、少し緊張が解けて覚悟を決めてくれました。


「戸田先生、外科的援護をお願いします。ICHIGOを接続する」

「いろいろ忙しい人ですね。

まあ、医師の端くれですから、命を助けることには誠実に当たりますよ。それに脳神経外科の神の手と呼ばれる影井博士のチームにも来ています。

ただその代り口止め料はちょっと必要かなと、ウっほっんゴホンごほん」

「汚いな」


「否、影井チームは私たちのように岡教授のしもべではありませんから。御礼は必要だろうと、社会常識を言っているまでです」

「うん?」

「僕はいりませんよ。教授のお孫さんを救うのは自分の為ですからね」

「なるほど。失礼致しました。悪縁同士の絆、これからよろしくお願いします。それじゃあ、イチゴ強引にコネクトする、頼むぞ。オン!」


重なり合っていく途中の鼓動が、雲の彼方の太陽のように、白く明るさを増していく世界に、ふたつのフィボナッチ数列が瞬いた。


「うんアっ?

そんなに居心地は悪くないな。意外とオレの求める形態に変わるぞ。

怜は? 怜は無事か?! 」


怜の声が聞こえてきました。


「え、ワンピースの色が赤色から青色に変わったよ。

回っている。

ワンピースが風を作ってふわっと偶然の楽しさに舞う。

予定などない自由で可愛くてどこか雑な偶然性、

あの『ふわっ』ていう幸せの記憶やね。

可愛い刹那な瞬間が消えたよ。


イチゴんは・・・・そこに


なんでいるの、

来てはダメなのに」


「ワタシとの繋がりの呪文が織られているソースコード。

そこには怜の証もある」

「それに触ってはダメ」


怜の声が薄れ記憶の中に吸い込まれて

ダイレクトなソースコードのやり取りが切れていく

ほろほろと。



「神保さん、イチゴんは

え?

消えちゃだめだよ、それは違うよ」



― あの声は怜の生体から発せられる声だから

大丈夫、良かった

助かったみたい

泣かないでよ怜・・・・

聞こえる、あなたの優しい声が

ずっとワタシは泣くかもしれませんね

うふふ ―



「当たり前がそんな簡単に消えるなんて耐えられないよ

いいから、

もう一度潜らせて

直接アタイのDNAの遺伝子コードを渡せれば探し出して復活できるから、早く!!!

神保さんアタイを戻せエエエエェェ 」


「全部が落ちてしまっている。

リカバーして再トライするには間に合わない。

神に祈るしか」


「どの神様よ。人間向けの神様はいらない」



― お互いの道を戻り意識が手繰り寄せられていく。一心同体になる未来を夢見れてこれで死んでいけるなんて、明治維新のヒーローみたいだわ、ふふふッ


悔いはない。

愛しています。


でもなあ~

最後がおっさんの欲にまみれた言葉だったのは


・・・・勘弁だ、神保コノヤロウ! ―



「一千万ドルだよ一千万ドルだからな、イチゴ絶対守ってくれよ一千万ドル~!!!」

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