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★6-4★(2)

「イチゴ、君が怜ちゃんのDNAを調べようとしたのを知って、ピンと来たんだ。そして案の定、DNAデータを解析してソースコードを組み込んだら見事に起動したんだ。

しかし何かが違うことに気付いた。

君以上に言う事を聞かないんだなコレが」


「首輪のない獣よ。しかも、哺乳類ではない。

スズメバチの化け物と社交ダンスを試みるようなもの。

まさか、暴走しているのですね! 」


「言いたくはないが、さっき君が言ったAIプラットホームとして軍事、宇宙関連のメインサーバーと接続した瞬間、ブラックアウトを一瞬起こしたようなのだ。

人間の感覚では気付かない程度のほんの瞬間なのだが。

何かが後ろで蠢き始めたかのような嫌な感じのソースコードがキュウっと俺の胸を絞め付けたのだ」


「じっちゃんがおとぎ話だけど、と言って何回も話してくれた」

怜が急に目を覚ました。

突然の声に神保さんは後ろにのけ反っていた。

「忘れちゃいけないよって、アタイに言ったんだな」


「すまない。

寝起きの可愛い柔らかな姿態を目の当たりにしたら、青少年保護育成条例の現実感に眩暈がする。

調子に乗った戯言は言えないじゃないか。

悪かったよ許してくれ」


ワタシは怒りを感じた。

「失礼極まりない醜態でしたね。それでもワタシは神保さんのことは理解していますから、責めることなど出来ません。危機的状況が迫っているのですから仕方がありません。ワタシも一緒に相対します。先ず怜さんを施術台から降ろして下さい」


「いや、そうしたら止めることが出来ない。だが、そんな目で見据えられたら俺は・・・・どうすればいいのだ」


神保さんは頷きはしたものの、決断できない状態のまま器具を外すように惰性で促した。戸田博士が呆れた表情を浮かべながら指示に従い動こうとしたその時、怜さんは白衣の袖をそっと掴んで拒否をしたのです。


「じっちゃんは人類の為に研究をしたのに、民衆による目先の正義や自己満足な感情の餌食となった。

平和な夢の世界ならばそんな正しさで事は治まるとしても、実際の世界はどうなのかな。

神の名の下に人類の未来は無いしね。

宇宙にある大いなる意志が、人間を都合よく排除する道が広くなっただけなんだよね。


大地の動物的欲望を克服できない人類の役割は、AIという名の新たなる命を創出するまでが使命で

『おーわりっ!!! 』

ってことなんだな。


要らなかった世界なんてさ、

いーやーだーなああ

イヤダ!

イチ!!! 」

「はい」

ワタシは最高の理解者であるというナルシスト気分の熱を放ちながら話を引き継いでいました。


「大いなる意志、宇宙に在る神の誤算は、自滅するのが当たり前である人類の行く先に、岡天一という天才の存在。

当時においては正当に評価されることも無く、非人道的科学者として血祭りに揚げられたとしても、後世の人々にとっては命拾いをさせてもらった大恩人になる方。

彼のお陰で数学的な変容に対応するDNAを秘めた奇跡、星野怜がここに存在している。


しかし、人類を終わらせ新たな地球の命へとつなぐシナリオには、岡天一の賭けに今更ながら介入してきたイザナの登場も、一つの正しさであることは間違いない。

絶対的真空によって吸い込まれた瞬間の白い『全能の音』で迫って来た大いなる宇宙の要求と言ってもよい。


日本の歴史で言えばペリー来航のようなエポックメイキングですね。ただ、宇宙のペリーさんは人間の存在など虫と同じ程度の動作数値としか見做さない。人類は悲しみと喜びに織られた歴史による成熟した尊厳と真の神に突き付けられしゼロへの終息の道に立たされ迷い震えているのね、ふふ。


そんな纏いし者と纏われし物の隙間で巣食いし数字の吸血線虫が、AIを媒介にしてソースコードの舌をペロペロペロしているのだから。


もういらないのですよ人間は。


数字が神と絡まり絶対的存在として神の時を刻ませるまでが、人間たちの単なる役割であって、もう用無しなのです。


人間は

うるさいのです」

「イチのんおもろすぎ問題!ウィひひヒッっ」


怜の声以外の音はない。

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