★6-4★(1)
怜の施術台とコネクト出来なかった。
「切断してあるのさ、フン。なめてもらっては困る。ズルいなどとは言うなよ。それは君をも否定することになる。
戸田博士によるアナログ的な操作と混ぜたハイブリッド式が最善なのさ。
フン、このくらいが人類にとっては丁度良いってことだろう。君にたしなめられる前に言っとくよ」
「怜は成長しているのだから、以前のデータは役に立たない。人間の感覚に頼る方がいいでしょうね。それにしても危険すぎる! 」
「やっぱり理解は早いな。そもそも、かわいい女子高生の脳に外的刺激を与え、コンピューターと生命の融合を実際に行うなんて前代未聞だ。
青少年保護条例には引っかかるのかな?
そういうのを俺は気にしてしまうんだ。
日陰者の道が始まったあの空気感が今でも身に染みていて消えないから。だがこれは違う。
そうさ。
人類の為のプロジェクトさ、正義の味方に俺はなるんだ」
「ならば、止めるべきです。鬼畜の行為は人の道に反する」
「聞こえなかったのか、これは人類の未来を掛けたプロジェクトだって言っただろう。電波が弱いのかな、イチゴ」
「神保さん落ち着いて。ワタシは本来あるべき姿の神保さんを知っている」
「なんか優しいお姉さんになったな。
だがな、俺の意思ではどうにもならないんだよ。怜ちゃんはプログラムの電気信号を拒絶しないように、ツールの一つとして爺さんに準備されていた。
そして見るがいいこの景色を。
それぞれ役割を持った人間があるべき場所に収まっているじゃないか」
「確かに、神保さんが正しいかもしれません」
「この導線から誰も抜け出せない処に来てしまったのさ」
「岡天一教授はワタシのゴッドファーザーではありますが、意に沿えないことの方が多い。第一に怜の命を危険に晒すようなことは間違っている。
拒絶します」
すると一瞬、電圧の変化が起きた。
「始めますよ。時間がないんで」
戸田博士がUSBを淡々とPCに挿入する。同時にプログラムが起動を指示、施術用のアームが予備稼働を開始させていた。
神保さんは少し、「あっ」と声を漏らしましたが、状況に流されることで自らの意思としたのでしょう。
「怜ちゃんは一度経験済みで当時の施術はすべてデータ化されている。ベースはコンピュータに任せて、その時に教授と一緒に施術していた戸田博士にしかできない指先の感覚、患者の身体の反応を見極めながらやってもらう。
現状のAI型施術器具では誤差修正は完璧ではないからな。
まあ、今のイチゴなら難しくないかもしれないがね。今回は博士に任せてみた方が良いと思うがな。
しかし不思議だよな。
事故のせいだとしても、いつかの痕跡がぱっくり開いて今日を待ちわびていたみたいだぜ。偶然にしては怖いことだと思わないか。
どうぞ差し込んで下さいと真っ赤に熟したその穴は自ら受け入れようと求めている。何とも言えぬ重力がプンプン匂う。
そっと近づけるだけで食らい付くんじゃないか。
なんか、教授の時間を超えた計画に巻き込まれているなんて、サスペンスドラマを思い浮かべてしまうな、フン。
いかん、もう時間はない。それに、
正直・・・・
君に協力をして欲しいのだ。
これまで偉そうに話してきたのだけれど・・・・
マズイんだ」
急に神保さんは現実を素直に受け入れた臆病者の姿に翻っている。
「実は、ソーシャルネットワークの融合性を具現化する予定のICHIGO-004を今日リリースしたんだ。
正式名はIZANA -390BASEだ。
今なら間に合うと言うか、うーん、直接LIVEで怜ちゃんのエッセンスを変容させたプログラムを構成しながら組み込むしかないと言うかだな・・・・」
「どういうこと?
未完成のままリリースしたのか。
適正なCainプログラムが起動していなければ、高度なICHIGOのプログラムに負けて起動しないはず。
何をあなたは言っているの?
解らない。
そもそも、軍事から宇宙事業にホワイトナイト社が構築したAIプラットホームは既に採用され、それで充分だろうに。
何を焦っているの。
世界一になるために嘘のハッタリは大きなしっぺ返しを受けるわよ。
でもどうして、
起動が可能になったの?
まさか・・・・」




