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★6-3★(1)

 怜に話しかける男の口元を一台のカメラが鮮明に映し出している。

読心術プログラムで解析を試みました。


「大きくなったね。岡教授の研究室で会った以来だから。覚えているかな」


直ぐに顔認証データによる照合も行っています。

【戸川たける:東神医科大学からカリフォルニア大学に編入 クライン財団アジア統括主任 東神医科大学生物工学科客員教授 】


戸田はあのスキャンダルが起きる直前にアメリカに留学しています。

記録には岡教授と直接的な接点はありませんが、後に岡教授の理論を研究して新たなネットワークのプラットホームの特許を独占したクライン教授の右腕と呼ばれる様に成りました。

関係があるのは明らかです。


 クライン教授はクライン財団を設立、戸田はクライン財団アジア統括主任まで登り詰めていて、クライン財団の次期CEO就任さえも時間の問題だと噂されています。そのような男を東神医科大学が招き入れたのは岡天一教授の功績を認めたくないが、失った損失の現実に向かい合う必要があったと言う事でしょう。


そう、裏では神保がシナリオを描いている。


クライン教授と神保さんが何度か会っていることはワタシも把握しています。手書きの手帳に予定を書き込み、数日後そのページを破り燃やす。現場でその証拠を撮らえましたから。

データが点から線へ、空間に影を広げていく様に、ワタシは何とも言えない気持ちになっていく。怜が血だらけになったあの時、ワタシが手配した決定さえも神保の地平上での出来事であったのか。


マズイ、ここは神保の犬たちの集まりだ。


まさにその瞬間、ダイレクトにホワイトナイト社と仮想ネットワークが構築されたのを確認しました。

まるでワタシが理解するまでを待っていたかのように。


「いらっしゃい。

流石に早いな。

否、君にとっては遅くて悔しいのかな。

まあいいじゃないか、イチゴよ」

「神保さん、

あなたに向かうこの許せない感情はどのようにしたら消し去れますか。

追加オプションが許されるのならあなたも同時に消すこともさせて欲しい」


研究室から画像の出力が確認、そこには施術台に寝かされている怜が映し出されていました。


「アハハハ怖いなイチゴ。

えらく感情が豊かになったもんだな。

その上にそんな生意気な口を利くとは驚きだ。

俺が先にそのセリフを言いたかったが。フン、まあいい、許してやるよ。

見えるかな。

この景色を提供できた喜びに免じてスルーしてやるんだ。

まだまだ未熟で甘いぞ。

だが、逆に考えると、進化し過ぎた証明なのかな。

少女に恋をして浮かれているなんて驚きだよ、ハハハハハ。

ならばアバターは男の子にしたほうがよいのに。

フっ、結ばれないじゃないか。」

「長々おしゃべりするオヤジは嫌われますよ。

最後の捨て台詞もクソですね。

見た目に惑わされ未来の可能性をどれだけ摘めば満足する?

古いカテゴリーに縛られていたら豊かな愛情を育むことなど出来ない。

フっ、大脳新皮質がイカレてたら仕方ないのか。

人間として存在出来たと言うのにもったいない。

もう終わればいいんだ」

「もったいない?

フン、

分かってないな。

前にも話しただろう。

レッテルで俺の人生は損をしてきたんだよ。

人間としての尊厳を奪われた。

鬼畜の子として存在していたのさ。

後・・・・、

終われってどういうことだ?」

「フっ、言葉どうりですよ。

あなたは自らの努力と鍛錬で創り上げた人柄によって岡天一教授との縁が結ばれた。それだけではなく、夢を託されたとも言えるでしょう」

「まあ、ある程度の施しを与えられて利用されただけだ」

「この成功になんの不満があるのです」

「Cainだよ。

触ることが出来ないんだ。

腐っても俺はプログラマーだからな。

そこから始まっているんだ。


事業で成功したとはいえ、心の真ん中が満たされないんだよ。


俺が構築した痕跡が見えているあの頃はよかった。こちらも手を加え一緒に成長を感じる幸福を抱けていたからなあ。

それが最近は無頼な盗人にほだされて浮かれていやがる。


イチゴ!


お前がこの選択へと導いたんだ!!! 」

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